7-6 浮気ですか?どうぞご自由にして下さい
「それにしても・・・あなた方はよくやりますねえ・・・。まるで盛りのついた猫みたいに・・。」
腕組みをしながら、思い切り軽蔑の目を向けてやる。
「う、うるさいわねっ!当然でしょうっ?!私たちは愛し合っているのだからっ!」
「ああ、そうだ!俺が愛しているのはリーゼロッテただ1人だっ!」
そしておもむろにアレックス皇子はベッドの上にいるリーゼロッテに近付く。
そしてガシッと抱き合う恋人たち。何と呆れた2人だろう。お互いに愛人がいるくせに?さんざんいろんな異性と床を共にしてきたくせに?
聞いているだけで鳥肌が立ってくる。
「でも・・アレックス様。結局・・それって浮気ですよね?」
「ええ、そうですっ!アレックス皇子の妻はレベッカ様なのですからっ!」
ミラージュも言う。
「う・・・うるさいっ!浮気が何だっ?!文句でもあるかっ!何と言われようと・・・俺はお前を妻と認める気は無いからなっ!」
うわ・・。あれだけ『畏怖の念』をアレックス皇子に植え付けておいたのに・・いまだにそのようなセリフを口にするとは・・やはりアレックス皇子は愚か者確定だ。
「別に・・いいですよ。アレックス皇子・・そんなに不本意な結婚だったのなら・・私達、離婚しましょう。いえ、するべきでしょう。」
2人を一瞥すると言った。
「「へ?」」
ベッドの上の2人が同時にハモる。
「浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので。」
私は肩をすくめた。だってお父様が行方不明になったのなら、私がここにいる意味はもうないのだから。
「え・・?本当に・・?本当に離婚でいいのだな?ここを去るというのだな?」
アレックス皇子は念を押してきた。
「当り前じゃないですか~・・私だってもうこれ以上アレックス皇子と一緒になんかいられませんよ。大っ嫌いですから。」
「え?」
そこで何故かアレックス皇子の顔に焦りが見えた。
「ちょ、ちょっと待て・・・お前、俺の事・・大っ嫌いだったのか?」
「は?当然じゃないですか。それともただの『嫌い』だと思ったのですか?」
ミラージュも訳が分からないと言った様子でアレックス皇子を見ている。
するとアレックス皇子はリーゼロッテから身体を離すと私に言った。
「お前・・・俺の事好きだったんじゃないのか?」
・・は?この皇子・・今・・何と言った?
「え?アレックス様?何を言い出すのですか?」
戸惑った声でリーゼロッテが尋ねる。うん、私も全くの同意見だ。
「だって・・・お前・・今まで俺の言う事は何でも・・どんな無茶ぶりだって聞いてきただろう?おまけにガーランド王国に行った時は、俺のベッドに潜り込もうとしたじゃないか?それらの行動は俺の事が好きだったからなのだろう?」
うわっ!いきなりこの皇子は何を気持ちの悪い事を言い出すのだろう?折角収まった鳥肌がお陰で復活してしまったではないか。
「な・・・何ですって?!レベッカッ!あ・・貴女・・アレックス皇子のベッドに入り込んだのっ?!」
「レベッカ様!嘘ですよねっ?!」
ああ!ミラージュ迄本気にしているっ!
「いい加減にして下さい!アレックス皇子!誤解を招く発言は・・・しないで頂けますかっ?!」
ついに怒りを抑える我慢の限界に私は達してしまった。感情が高ぶり・・そして次の瞬間身体からまぶしい閃光が走り、アレックス皇子とリーゼロッテの足元に雷として落っこちた。
ドーンッ!!
「「ヒイイッ!!」」
2人は情けないを上げて互いに抱き合う。
ベッドには大穴が空き、真っ黒に焦げたシーツからはブスブスと黒い煙が立ち上っていた―。
また、あの2人ごときに余計な力を使ってしまった。
しかし・・今の私にはもうこの怒りの感情を止めるのは・・手遅れだった―。
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