6-8 まさかのタメ口
「・・どう思われますか?レベッカ様。」
ミラージュは未だに鳥肌が収まらないのか、両肩を震わせながら尋ねてきた。
「どう思うも何も・・またよくない癖が出て来たみたいね?」
「レベッカ様!あれで本当に宜しいのですか?!見ましたよね?!レベッカ様と彼女に対する扱いの違いをっ!」
ミラージュはアレックス皇子たちが去って行った方向を指さしながら言う。
「ええ・・確かに見たけど・・でも逆に普段からああいう態度を私たちにとって来たら?」
「私なら気を失いますね。」
ミラージュは真剣な顔で言う。
「うん、そう。私もきっと気を失うかもね・・・。だって今だに鳥肌が立っているもの。でも・・きっとまたすぐに飽きるんじゃないかなぁ~・・今までだって女性と長続きしたことがなかったんだしね。」
私の言葉にミラージュも頷く。
「ええ、そうですね。」
「それにさ、私は別にアレックス皇子には興味が無いから・・・浮気もどうぞご自由にして下さいって思ってるし。ほら、以前までの私だったら役立たずと思われていたからアレックス皇子の気分1つで離婚されてしまうんじゃないかと思ったけどね?あ、これは別にアレックス皇子の事が好きだから別れたくないってわけじゃ絶対ないからね?」
「ええ、勿論です。そんな事分かり切っていますよ。」
「一応私は父の命令でこの国に嫁いできているから、離婚されるわけにはいかなかったんだもの。もし国に送り返されたら以前よりも辛い生活を強いられた気がしたから・・。『この役立たずめっ!』って感じでね?でも今なら国の偉い方たちは全員私の味方だから、仮にアレックス皇子に離婚を申し付けられて国へ帰れって言われてもきっと全力で反対してくれると思うんだよね?」
「ええ、当然ですわね。」
「だから暫く様子を見ていましょう?あの専属メイドが仕事が出来る人だったら私はそれで充分だし、どうせ・・今までのメイドのように遊びじゃないかしら?私はもうこの国にこのまま今の生活をミラージュとおくれたらそれで充分だしね~。」
「レベッカ様・・何てありがたいお言葉なのでしょう・・・!」
ミラージュは感動の涙を浮かべて私を見た。
「さて、それじゃそろそろお腹が空いてきたから・・お部屋に戻っておやつでも食べましょうよ。」
「ええ、そうですね。レベッカ様。」
そして私とミラージュは2人で一緒に部屋へと向かった―。
****
翌朝―
コンコンコンコン・・!
う~ん・・うるさいなぁ・・。もぞもぞとベッドの上から起き上がり、私は部屋の壁掛け時計を見て驚いた。
「え・・?嘘!まだ6時じゃないの?!一体誰がこんな朝早くから私を起こしに・・?」
すると・・。
ガチャリ
いきなりドアが開けられて、入ってきたのは昨日私専属のメイドになったリーゼロッテだった。え?返事もしないで勝手に入って来ちゃうの?
「おはよう、レベッカ、もう朝よ。あら・・もう起きていたのね?」
ええっ?!ま、まさかの・・・ため口を・・・。驚きで一瞬で目が覚めた私は思わずリーゼロッテをまじまじと見た。今朝の彼女はこのお城で働くメイド達と同じ。黒のお仕着せのワンピースに真っ白なフリルのエプロンをつけている。
すると私の視線に気づいたのか、リーゼロッテがクルリと一回転すると言った。
「どう?レベッカ。このメイド服・・・中々私に似合っていると思わない?」
そしてニッコリと笑みを浮かべる。いや、どうって言われても・・・。
「え、ええ・・・とても似合っていると思うわ・・・。」
一応当たり障りのない返事をした。するとリーゼロッテはさらに嬉しそうに言った。
「ああ、良かった。私がメイドとして使える人が貴女で・・・。貴女には何も遠慮する事無く仕えれば良いってアレックス様に言われていたのよ。」
え?そんな事言ってたの?私に何も断りも無く?思わず呆れてポカンと口を開けていると、リーゼロッテが言った。
「あ、ほらほら。早く起きて。今のうちにレベッカのシーツと枕カバーを交換したいから。今洗濯場にどさくさに紛れて持って行けば他の誰かが洗ってくれるらしいのよ。」
言いながらリーゼロッテに無理やり手を引っ張られてベッドから降ろされてしまった。
「え・・?つまり私を起こしたのって・・?」
「ええ、私の分の貴女のシーツと枕カバーをお洗濯をしてもらう為なの。」
言いながら、リーゼロッテは勝手に私のベッドのシーツと枕カバーを剥がして部屋から出て行ってしまった。
「え・・?嘘でしょう・・・?」
あまりの事に私は呆然と部屋に立ち尽くしてしまった。
そして・・事件は起こった―。
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