6-6 新たな専属メイドとの出会い

「あ、お帰りなさい!アレックス様。いつお戻りになられたのですか?」


ガバッと立ち上がり、アレックス皇子に駆け寄るとエプロンドレスに着いた汚れをパッパッと手で払いながら私は挨拶した。


「ぶわっ!人の傍で汚れを払うなっ!ほんっとうに相変わらずガサツな女だなっ?!お前はっ!」


肘で口元を覆うようにアレックス皇子が言った。すると・・・。


「な・・・なんですって!またしてもアレックス皇子はレベッカ様に失礼な事を・・っ!」


怒りに燃えて立ち上がったミラージュを見てアレックス皇子は大げさに驚いた。


「うああああっ?!な、何だよっ!お前もいたのかっ?!」


「当然ですっ!私とレベッカ様は一心同体!レベッカ様のいる場所こそが私の居場所なのですっ!」


「ミラージュ・・・・。」


思わずミラージュの言葉に感動しているとアレックス皇子が喚いた。


「あーっ!鬱陶しい奴らだっ!俺はお前たち2人の陳腐なやり取りを見に来たんじゃないっ!お前に用があるから帰国後、すぐに人づてに居場所を聞いて温室にいるからと言われてやってきたのだっ!」


「え?そ、それでは・・わざわざ私に会いたくてここまで足を延ばしてくれたのですね?!」


感動だ・・・。ようやくアレックス皇子は私の事を大切に思うようになってくれたんだ・・。


思わずじ~んとした目で見つめていると、アレックス皇子は心底嫌そう目つきで私を見た。


「何だ・・何なんだ?お前のその視線は・・・?そんな目で俺を見るな。気色悪い。」


気色悪いと言われてしまった。流石にちょっとへこむかも。


「ま・・まあっ!レベッカ様程の美少女に気色悪いなどど・・っ!」


「うわあっ!お、お前・・・まだいたのかっ?!」


びくつくアレックス皇子にミラージュに言った。


「当然ですっ!先ほどからずっといました!」


すると、ついに我慢できなくなったのかアレックス皇子は上着を脱ぐと言った。


「あー!もうっ!ここは暑くてたまらん!外で話をするぞっ!ついて来いっ!」


全身汗まみれになりながらアレックス皇子は何と私たちに顎でしゃくって命令してきた。しかし、暑さでイラついているのだろう。ここは多めに見てあげよう。何しろこの温室の中は気温が25度もあるのだから。ここで上着など着ていれば汗だくになっても無理はない。


「確かにアレックス様の服装では暑いかもしれません。ほら、私とミラージュの服装を見てください。半そでのワンピースにエプロンドレス。アレックス様も今度温室に足を運ぶ際は私たちのような服装で来ることをお勧めますよ?」


「この馬鹿!男がワンピースなんか着れるはずないだろうっ?!」


すると、アレックス皇子は温室を出た直後に私を振り向くと怒鳴りつけた。


「あ!またレベッカ様を馬鹿呼ばわりしましたねっ?!」


途端にミラージュが睨みを利かせ、アレックス皇子はビクリとする。


「え・・?いやですねぇ~・・アレックス様にワンピースを勧めるはずないですよ~ただ、半そでを着てきた方が良いですよ?って言いたかっただけですから。」


笑って言うと、アレックス皇子は歩きながら言った。


「だったら紛らわしい言い方をするな。勘違いしてしまうだろう?全く・・。」


「あの・・・ところでどちらへ行かれるのですか?」


何だか中庭へ向かっている気がする。


「中庭だ。」


「何故、中庭へ連れてゆくのですか?」


ミラージュが棘のある言い方で尋ねた。


「そ、それは・・会わせたい人がいるからだ。」


何故か口ごもるアレックス皇子。


「会わせたい人・・・?」


口の悪いアレックス皇子にしては、妙に丁寧?な言い方をする。


「どなたですか?会わせたい人・・とは。」


「お前の為に選んで連れて来た専属メイドだ。」


え・・?


そしてアレックス皇子は足を止めた。


すると前方にどこかで見覚えのあるパラソルをさし、長いドレスを着た女性がガゼボの前で風に吹かれながら立っていた―。









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