1-6 「お前に永遠の愛は誓わない」と皇子は言った
「あの・・・おっしゃっている意味が良く分からないのですが・・・?」
あまりにも突然投げつけられた言葉に思考が追い付かず、アレックス皇子に尋ねてみた。
「何?あれほどの事をされておいて・・まだ分からないのか?」
呆れたようにアレックス皇子が言う。
「ええ・・・。何の事だかさっぱり・・。」
「はぁ~・・・それほどまでに頭が悪い女だったとは・・。いいか?普通なら一国の皇女が嫁いでくる場合は嫁ぎ先の国の者たちが大勢で迎えに行くのが常識なのだ。」
「そうなのですか?」
知らなかった・・・。
「もしくはどうしても国まで迎えに行けない場合は、必ず花嫁の国の家臣たちが嫁ぎ先迄無事に送り届ける。だが、お前たちはどうだ?侍女とお前の2人だけでこの国へやってきただろう?」
「ええ、そうですね。父からは私とミラージュの2人だけでこの国へ来るように言われましたので。」
そう、父からは今から1週間前に突然結婚の話を切り出され、私とミラージュだけで行くように命じられたのだっけ・・・。あの時はさすがに驚いたわ・・・。
「それはな・・・俺が禁じたからだ。だが・・俺もそこまで人でなしじゃない。そこで侍女1人までなら一緒について来ることを許してやったのだ。」
「そうですか。それはどうも有難うございました。」
何だ・・口では何だかんだ言いながらも・・・いいところがあるのね。しかし・・。
「は?お前・・・今、俺に礼を言ったのか?それとも俺の聞き間違いか?」
アレックス皇子は驚愕の表情を浮かべて私に尋ねた。
「いえ・・?お礼を確かに言いましたけど・・?」
「何故だっ?!何故、そこで礼を言う?!普通の姫ならここでショックを受けて泣き崩れるはずだろう?大体お前の父親もどうかしている。自分の大切な娘がそのような扱いを受けるのを黙って見過ごすはずがないのに・・平然と俺の提案を受け入れたのだからな。そこで気付いたのだ。お前が・・・自国でどのような扱いを受けてきたのか・・。」
「・・・。」
私は黙ってアレックス皇子の話を聞いていた。
「お前・・恐らく自国でもどうでもよい扱いを受けてきたのだろう・・?大体式にも参加させてやらないと伝えても、どうぞご自由にとお前の父から言われたしな?つまり・・・。」
アレックス皇子の目が怪しく光る。図星なので私は何も言えなかった。
「全く・・俺はとんだ貧乏クジを引かされたと言うわけだ!」
芝居がかったような手つきでアレックス皇子は髪をかきあげた。
「そうだろう?お前は自国でないがしろにされて生きてきたんだろう?それでこの国へ来れば・・・大切にして貰えると思って嫁いできたのだろうが・・・甘いなっ!俺は・・俺は、お前を何としてでも国へ追い返したかったんだよ!だから迎えに行かせたのも爺や1人で、ボロ馬車を用意した。お前を客人扱いする気も無かったから使用人用の出入り口を使わせた。なのに・・何故、今・・お前は平気な顔をして俺の前に立っていられるんだ?!」
アレックス皇子は興奮のあまり?身体を震わせている。何故、平気な顔をして立っていられるかですって?そんな事は分かり切ってるはずなのに・・・。仕方がない。答えてあげよう。
「ええ・・それは私がアレックス様の結婚相手だからですけど・・?この結婚の詳しい経緯の話は分かりませんが、これは国同士の結婚なんですよね?今更この結婚をやめる事はさすがにアレックス皇子でも無理だと思いますけど・・?それに、今着てらっしゃるお召し物・・・どう見ても全身白づくしですよね?てっきり一目見た時から、今回の結婚に乗り気だとばかり思っておりましたが・・?」
首を傾げながら言うと、アレックス皇子は顔を赤くし、怒気を含む声で言った。
「は?何を言ってるのだ?お前は・・・本当に噂にたがわぬ図々しい女だ。いいか、よく聞け。お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。今の言葉を胸に刻み込んでおけっ!」
アレックス皇子はまるで汚らしいものでも見るかのような目つきで私を指さした―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます