第6節「報酬とこれから」1
「サロス様ですね。パーティーメンバーは全員来られておりますでしょうか。」
「はい。」
「全員呼んできていただけますか?応接室にて対応致します。」
あれから二日経ったので、ギルドにやってきた。どうなるのだろうと思っていたが全員で中へと案内されるようだ。
「初めまして、ここでギルド長をしている者です。」
案内された場所へ行くとギルド長を名乗る男性が現れた。何やら
「これから先日の件について、何が起こっていたのか説明いたします。ですがその前に、皆様が被害にあわれる前に受付に相談していたにも関わらず何も対応しなかったことを深く謝罪いたします。」
そのギルド長が頭を下げる。ちょっと目の下にクマもできている。この件の対応に追われていたんだろうな可哀想に。役職持ちはこれだから大変なのだ。だからといって大目に見るつもりは微塵もないが。
「少々察しておられるかもしれませんが、今回の異変は皆様が倒され魔石を手に入れた魔物に由来するものです。その魔物の額に一本の角がありましたよね。」
「ありましたありました。」
「でしたら間違いありません。その魔物の名前はラットレギオンマスターです。」
大層な名前の魔物だな。
「そのラットレギオンマスター?とかいうののせいでラットスウォームが多かったんですか?」
フィスィが尋ねる。
「はい、この魔物には他のラットスウォームを操る能力があります。操るといっても人間のように知能が高くないので高度な連携をさせられるわけではないですが、それでも数が多いと強力です。
この魔物が出現したときには、ラットスウォームに変化があります。通常時は十匹程度で群れをなしていますが、ラットレギオンマスターが意思を統一させられるので、三十匹から多い時で百匹の群れをなし始めるのです。」
「待ってください。普通は十匹の群れなんですか?初めて依頼を受けたときから三十匹の群れでしたよ?」
ディプラが疑問を呈する。一匹いたら十匹はいると思えというのは正しかったのか。自分たちが当たり前と思っていた方がおかしかったというわけか。
「はい。そのことについても謝罪しなければなりません。免許を取得したてのDランクパーティーが通常より多い討伐数を達成していること、受付をした誰かしらは疑問に思うべきでした。」
「それは、私がサーチの魔法を使えるのでその影響で多いと思われたのかもしれませんし…。」
フィスィが庇いに入る。優しいな。
「いえ、あなた方に非は一切ございません。完全にこちら側のミスです。
実はラットレギオンマスターの討伐依頼を受けるのに必要なランクはBなんです。魔物自体も強く、並大抵の攻撃では倒せないことと一匹一匹は弱いとはいえラットスウォームを大量に操れることを鑑みての評価になります。どんな過程があろうと新人にそのような魔物との戦闘を行わせてしまったという事実は変わりません。」
「「Bランク!?」」
俺とアダマスが驚きのあまり声がでる。声には出していないもののフィスィとディプラも目を見開いている。
「はい、皆様を危険な目にあわせてしまったこと、深く謝罪致します。申し訳ございませんでした。」
そういってギルド長が再び頭を下げる。こちらは驚きのあまり怒りすら消え呆然としている。
「これからの対応について話させていただきます。まず報酬について。ラットレギオンマスターの討伐と魔石の買い取り、あわせて70万ケルマとなっております。」
たっか!いや、でも強さを考えると妥当なのか…?
「そちらの方にラットスウォームを大量に討伐なされたこと、その他諸々を合わせまして、合計で200万ケルマが今回の報酬になります。」
さらにたっか!!!70万とか言ってたのに上がりすぎだろ。…そういうことか、諸々と言った中には慰謝料みたいなものも含まれているのだろう。うん、冷静に考えると一人あたり50万。命がけで戦ったにしては安いともとれるかもしれない。
とはいえ、通常の討伐報酬の3倍近く。ラットスウォームをいくら倒したところで30万も行っていないだろうし、2倍以上ではあるはずだ。これは最大限の誠意と言っても問題ないだろう。誠意は言葉ではなく金額だってかの有名な人も言ってたし。
「次に皆様のランクについてです。今回Bランクの魔物を討伐されましたが、それを理由にそのままBランクに上げるというわけにはいきません。それを認めてしまうと無理に上位ランクの魔物を討伐しようとする人が出てくるかもしれませんので、規則で禁止しています。
ですが、今回はCランクに上げるための要件をすべて満たしたという扱いにさせていただきます。もしランクアップを望まれるのでしたら受付までお声掛けくださいませ。ランクアップには実力試験も必要ですが、そちらは他の皆様と同様に受けていただくことにはなってしまいます。ご了承ください。」
金だけでなくオプションもつけてもらえるらしい。内容は妥当だろう。ギルドとしてはこちらがどのように魔物を倒したかわからない以上、実力試験はスルーさせるさせることはできないだろうし、それ以外は免除というのは落とし所として悪くないと思う。
ちゃんと深刻に考えてもらえたようだ。それならこれ以上の文句はない。クレーマーになりたいわけじゃないから。
「みんな、何か言いたいこととか聞きたいこととかある?」
「特にないかな。」
「ないわ。」
「ないです。」
「とのことなので、こちらとしてはその対応で問題ないです。ギルドにはこれからもお世話になると思うので。」
「ありがとうございます。二度とこのようなことがないように改善していきますので、これからもどうぞよろしくお願いします。」
そういってギルド長は深く深く頭を下げた。完全に怒りが収まった身としてはなんだか可哀想に思えてきた。この後も報告とか色々しないといけないんだろうな…。
こうして今回のラットスウォーム大量発生事件(命名:俺)は幕を閉じた。
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