第4節「戦闘と不穏」3
「【ファイア】っと、ごめんまたちょっと残ってる!」
「了解!【エレキ】」
ここ最近はラットスウォーム討伐に励んでいた。フィスィの仕事量が多かったので残党狩りは俺が引き受けることになった。それまではライトの魔法を維持することしかしてなかったから当然ちゃあ当然。維持しながら他の魔法を使うというのは練習になって結構いいのだ。
自分はせっかく色々な種類の魔法が使えるので全部試してみた。緑魔法の風や青魔法の水、黄魔法の電気が主流。火はアダマスが使っているが、消火などの作業が必要な以上大規模で倒す以外ならば使いにくい。結果、黄魔法で電気を発生させて倒すのが一番安定していると感じた。
「【ウィンド】アダマスー、ちょっと取り逃し多くない?」
「仕方ないだろ。頑張ってるんだけどなんせ数が多いんだって。」
当然のように換気用の風を発動させながらフィスィがアダマスに文句を言う。
「【ウォーター】そうですね。数が多いですよね。…あの、これちょっとおかしかったりしないですか?いや普通の状態を知らないので何とも言えないんですけど。」
「わかる。日に日にラットスウォームが増えてる。はじめは三十匹くらいの群れだったのに気づいたら今は最低五十匹はいる。今のとか七十匹くらいはいたぞ。」
同じく当然のように消火を行っているディプラの発言に賛同する。群れをなすのが特徴の魔物とはいえここまで多いものなのだろうか。所詮Dランクの依頼と侮ることなく情報を仕入れておくべきだったと軽く後悔する。
「ギルドに一度相談してみない?この依頼を受け始めたときは探してやっと見つかって倒すって感じだったのに、今倒した場所からサーチしたら他の群れがたぶん三つあることがわかるの。倒しても倒しても減らないわ。」
「ちょっと前までは稼ぎが増えて嬉しいくらいにしか思ってなかったがだんだん不安になってきた。昨日から連戦続き。というか何日ここへ来てるんだよ一日休み挟んだとはいえ計十日だぞ。稼ぎ時とか言ってられないよ。」
「うん。そういうものというならそれでいいし、とりあえず相談してみると言うのは賛成。ある程度は倒したから今日は一回戻ることにしよう。」
俺の言葉に他三人がうなずく。別に聞いてみて損はないはず。
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「お疲れ様でした。こちら今回の報酬になります。」
「ありがとうございます。それと、相談してもいいですか?」
「相談ですか、お伺いいたします。どうなされましたか?」
「ラットスウォームがどんどん増えている気がするんですけど、これって正常なんですかね?ここ数日結構な量を倒していると思うんですが、全然減る気配がなくて。」
「なるほど。少々確認致しますね。
…確かに通常よりは多い数を討伐されているようですが、どのように探されていますか?」
「パーティーに一人、少し探知魔法を扱える人がいるのでその人に探してもらっています。」
もちろんフィスィのことだ。たまに何もいないところに案内されるがそれはご愛嬌。なんやかんやで重宝している。
「それでしたらこの数になってもそこまでおかしいことではないと思います。」
「そうなんですか?数はおかしくなくても、だんだんと増えているようなのはどうなんでしょうか?」
「ええ、順に説明しますね。まず、何回かこの依頼を続けられているようなので慣れてきたからということは挙げられると思います。それと、ラットスウォーム討伐の依頼は受ける人が少ないんです。場所が場所ですし、数だけが多い魔物なので。
一度は受けてくれても次を受けてくれない方も多くて、こちらとしても困っているんです。そのような背景とラットスウォームの増えやすさが合わさって、現在地下下水道には大量に溢れていると思われます。
ある程度討伐されますとそのあたりに空きが生まれるため、そこに別の場所で増えすぎたラットスウォームが流れてきます。このような流れが今起こっていると考えられます。
ですのでとりあえず今のところ問題ないでしょう。それでも多くなりすぎていると感じられるようならもう一度言ってください。無理やりにでも人員を増やすように上に掛け合ってみます。」
「なるほど。わかりました。ありがとうございます。」
みんなの元へ戻り、今聞いた説明を伝える。
「こういう理由だってさ。とりあえず問題ないという言葉は貰ったよ。」
「それならひと安心だね。」
「言われてみれば洞窟内で他の冒険者とかと会わなかったな。」
「うんうん。そういう自分たちもこれで安定して倒せるっていう固定パターンができていなかったら面倒くさくて何回も受けていなかっただろうから。」
「安心、なんですかね?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だって。そのために確認したんだから。」
ディプラは心配なようだが、アダマスがなだめている。それでもおかしかったらまた相談すればいい。それだけだ。
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