第6節「報酬とこれから」3

「武器っていってもみんなどういうの買おうとか決めてる?」


「私は後衛するなら杖かな。魔法の威力をできるだけ高めた方がいいでしょ。」


「私も同じく杖ですかね。ただ私の場合多少は敵に近づくので、杖で身を守ることもできるように丈夫なものにしようかと思っています。」


「俺は悩んでいるけど、第一候補はやっぱり剣だな。」


 各々大体のものは決めているらしい。


「だよなー。俺も剣にしようかとは思ってるんだけど、なんかうまく使いこなせる気がしなくてさ。」


「でも戦うときフィスィからもらった短剣使ってたよな?結構感覚合ってそうだったけど。」


「それは自分でもちょっと思ってた。でも長剣ってなるとどうなんだろうって思っちゃって。だからって短剣だけ持つのは違う気がするし。色々見て考えるか。」






_______________________






「いらっしゃいませー。ごゆっくりどうぞー。」


 とりあえず入ったのは色々な種類の武器を取り扱っている大きめの武器量販店。一番最初は大きいところで見るべきだろう。


「うわーいろんな武器があるわねー。」


「買うつもりもなくても武器量販店って来てしまいますよね。」


「わかるー!ウィンドウショッピングってやつ?これを買ったらこうしようとか妄想するの楽しいわ。」


「だよな。俺はあまりくることはないけど、来たら来たでやっぱりテンション上がる。」


 その感覚、俺にはわからないんですが…。会話に参加できずちょっと疎外感を感じちゃうぜ。


「ほらほらフィスィちゃん、この杖とかいいんじゃないですか?」


「どれどれ?うん、見た目も結構いいし性能なんてめちゃめちゃいいじゃないの!これいくら?」


「100万です!」


「たっかぁぁあ!何勧めてくれちゃってるのよ!」


「ぱっと見この店で一番高いやつですから!」


「ほんとに何を勧めてるのよ!」


「いやいや、まずは一番高いやつを見て、こういうの買ってみたいなー。買ったらこんな感じで使えるんだろうなーって想像するのが楽しいんですよわかりますよね?」


「…ちょっとわかるのが悔しいわ。」


「でしょ!」


「実はこの武器手が届かないことがないって話する?」


「アダマス、どういうことですか?」


「だってパーティーで200万ゲットしたんだぞ?一人あたり50万。量販店って多少値下げ交渉とかできるかもしれないから、予算オーバーはするだろうけど完全に夢物語というわけではないんだよな。」


「確かに、冷静に考えるとすごい大金を貰ったのね。」


「どうしてもほしいなら俺の50万分も使っていいよ。俺は俺でなんとかできるでしょ。」


 フィスィがほしいと言うなら何でもあげちゃうよ。…この感情が貢ぎたいというやつなのか!?


「ありがと、でも大丈夫よ。私、人の施しは受けないので。」


 流石に断られてしまった。


「にしても色々あって面白いですね。剣とか槍とか弓矢とかもあります。」


「この剣とかいいよな。持ってみたら結構しっくり来る。」


「おお、いいじゃん。結構似合ってるんじゃない?」


「ありがと、サロスも探しなよ。」


「もちろん。」



「そちらお似合いですね。剣をお探しですか?」


 店員に話しかけられた。どうでもいいんだけど店員って話しかけた方がいいのかな。店員がいると気が散るから自分たちだけで選びたいって人もいるだろうが、色々聞きたいけど自分からは話しかけづらいって人もいるだろう。難しい問題だな。


 今回は、自分は話とかも聞いてみたかったから良かったかも。他の三人が内心どう思ってるか知らないけど。


「そうなんですよ。冒険者でちょっとばかし臨時収入があったので、自分たちにあった武器を買おうと思って。」


「なるほど、私からも武器の提案をしてもよろしいでしょうか。」


「いいですよ。」


「私も聞いてみたーい!」


「ありがとうございます。かしこまりました。」


 この感じだと多分店員のことを悪く思ってなさそう。君、俺たちに話しかけて正解だったな。(上から目線)


「まずはこちらなんてどうでしょう。初めて剣を買われる方がよく買われるもので、お値段を抑えつつ基本的な性能はしっかりとあります。」


「うーん、実を言うとある程度の予算はかけられるんですよね。具体的には20万くらいはあってもいいかなと。その分ある程度長く使っていけるものがほしいです。」


「なるほど。それなら…こちらはいかがでしょう。長剣の中でも大きめで、重さはありますがその分一撃の威力は高くなると思います。さらに、この剣には属性をもたせることができます。魔法を使う要領で、例えばこの剣に火魔法を込めると、剣から火が出て攻撃することができます。」


「それはいいですね!自分は赤魔法が得意なので火を使いやすいんですよ。でも…こんな性能があるなんて、お高いんでしょう?」


「そうですね…。予算を少しオーバーしまして25万ケルマになります。でも、それが!今ならなんと!」


「い、今なら?」


「なんと20万ケルマでのご提供になります!」


「おお!20%オフじゃないですか!」


「さらに!」


「さらに!?」


「さらにこちらの鞘までお付けします!もちろん無料で!」


「すごーい!」


 通販番組かな?アダマスはなんで即興で合わせてるんだよ一種の才能か?


「どうです?買いますか?」


「そうですね!他の所も見て見ようと思います。」


 買わへんのかい!いっけないびっくりしてエセ方言が。あの流れは買うと思ったんだけどちゃんと冷静に考えているらしい。対照的に店員さんがちょっとショックそうな顔をした。すぐに営業スマイルに切り替えたけど、あの感じは買ってくれると思ったよな。同情する。


「次、杖でおすすめを聞いてもいいですか?」


「私も杖のこと聞きたーい!」


 あ、店員さん笑顔になった。いやもともと笑顔だったんだけど作った笑顔が本心からの笑顔に切り替わった。それもそうだろうアダマスが買わなかっただけで、フィスィとディプラは買ってくれるかもしれない。しかもアダマスには自分から言いにいったけどこの二人は聞いてきたのだ。買ってくれる期待が持てる。


 まあお察しの通り、結局二人とも何も買わなかったのだけれど。オススメとか細かい性能とかどれくらい値引きが可能なのかとか、聞けるだけ聞いてそれだけで終わった。あの店員さん営業スマイルは最後まで崩さなかったのすごいよ。プロだなぁ。


 可哀想なので消耗品くらいはここで買ってあげようかなと思った。あの人にもノルマとかあるだろうし少しでも足しにしてあげたいと思える。でも次来たときまで覚えてるかな?俺、他人のこと覚えるの苦手なんだよな。フィスィのことなら一瞬で覚えられるのに、困ったものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る