第2節「別れと出会い」4
「お二人さん、おはよう。」
「おはようございますです!」
「「おはよう。」」
ギルドに向かうとディプラとアダマスが先についていた。昨日とは違って一応戦えるような服装だ。もちろん自分たちもだが。というかおはようございますです?敬語どうなってんだ。わからないけど気にしないことにしよう。
「何の依頼を受けるとか決まってる?」
「えーと、二人が来るまでに一通り見ておいたんだよな。で、この薬草採取とかどうよ。」
「どれどれ?低級回復ポーションに使われるセラピア草か。途中でスライムが出現する可能性があると。うん、いいんじゃない?」
「私もいいと思う。」
「ならこれにしようか。さっそく出発するけど準備はできてる?」
アダマスの問いかけに三人でうなずく。
「あれ、なんか受付に受注しに行くとかはないの?」
「常設依頼だから薬草とって受付に行けばそれでいいんだってさ。」
「なるほど。」
フィスィが小さい声で聞いてきた質問に答える。納得できたらしい。
「それでは目的地へ向かおう。」
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「この辺かな?」
大体の目的地に着いたと思うので確認する。
「うん、多分そう。」
「街中からそこまで離れていないのに、こんなに緑が広がっているんですね!」
「うんうん、なんか落ち着くね!」
女性陣は元気そうでなにより。
「それじゃ、私が探すね!【サーチ】
…えーと、あの辺にあるって。」
「まって、まってください!その魔法何なんですか?」
「うん?あー、私緑魔法得意だから植物とか結構操れるんだよね。だからセラピア草がどこにあるか探してもらったってわけ。植物が生えてるところなら大体なんでも探せるよ。」
「え、すっご。」
「へー、そんなことできるんですね。緑魔法使える知り合いもいましたがそんなことできる人いなかったと思うんですけど、もしかして結構得意だったりします?」
「まあ、
「マジか!」
「わーお!それなら納得です。」
フィスィの魔法にディプラとアダマスが驚く。おいおいこんなことで驚いてちゃ疲れるぞ?彼女が俺TUEEEしているのをよそ目にセラピア草を摘みに行く。
「採れたよー。フィスィ、次はどこにある?」
「えー、あっあそこにあるよ。」
「オッケー。次は?」
「あっち!」
「まってまって。…えーとね、フィスィさん?ちょっとその魔法禁止しません?」
「私もそれがいいと思います…」
「え、なんでよ。」
調子よく薬草採取に励んでいたら止められたんだが。奴ら敵か?まあ冗談は置いといて彼らの言いたいことも何となく分かる。
「だってさ、正直金にならないこの依頼を受けてる理由って冒険者としての経験を積むためだよね?その魔法使ったら何の苦労もなくて暇。」
でっすよねー。俺も正直思ってたもん、これ何のためにやってるのかなって。多分もっと効率上げられるけどそういうことじゃないだろう。
「うー…分かった。」
彼女が渋々納得したところで再開。次はちゃんと(?)探し始める。
「あ、スライムだ。【ウィンド】あっちにも。【ウィンド】なんか急に来たね。」
あっ(察し)。二人が何かもの言いたげな様子になっちゃった。二連続では言いづらいだろうし代わりに言ってあげようではないか。
「フィスィ、その魔法も禁止で。」
「な゛っなんで!私なんかやっちゃった?」
無自覚無双系主人公ここに爆誕。
「だから経験にならないんだって。スライムとか安全に、そして一応戦いの練習ができるちょうどいい相手なのに瞬殺しちゃ意味ないんよ。」
「さっきの魔法ほんとにウィンドですか?威力高すぎません?」
「まあ強すぎるわな。すまんが禁止でお願いしたい。」
「わかったわよ…」
残当。でも不貞腐れちゃったからフォローしとかないと。
「それだけフィスィの魔法を評価してるってことだから。有事の際に備えて準備しておいて。頼りにしてるよ。」
「…っ!うん!」
やれやれ(やれやれ系主人公)、チョロくて助かるぜ(クズ)。有事なんてやってくるわけないのにね(フラグ)。まっさかこんな所に巨大モンスターとか魔王の幹部とかがやってくるわけないのにね(特大フラグ)。
―なおその後フラグが回収されることはなかった。
「気を取り直して、ゆっくり探そう。」
「次スライムが出たら俺が倒してもいいか?俺も魔法使いたい。」
「じゃあその次は私が!」
「それなら俺は最後で。」
というわけでアダマス、ディプラ、俺の順番で出てきたスライムを倒してい行くことに決まった。
「みつけた!ではでは、【フレイムタワー】!」
炎の柱が生み出され、スライムが一瞬で蒸発した。高火力すぎるだろ。明らかにスライム一匹に放っていい魔法じゃない。
「いやいや、あれだけの威力絶対いりませんよ。」
ディプラも同じことを思ったらしい。
「でもスライムなんて魔石を落とすような強い魔物でないどころか討伐証明部位すら存在しないじゃん。討伐しても何ももらえないしそれなら魔法をぶっ放す的にした方が有意義だろ。」
確かに彼の言うことにも一理あるかもしれない。スライムは弱すぎるうえそもそも討伐したことを証明できない。それならばと考えるのも理解できる。できるが、さすがにやりすぎだとも思う。
「それは確かにそうですね。っと、別のスライムが。今度は私ですね!【ウォーターカッター】」
水の刃がスライムに飛んでいき真っ二つになった。
「おお、良い威力。」
「すごーい。」
「もっと強力な魔法使っちゃえよ。」
「あなたと私は違うんです。そんな無駄すぎることはしません。」
もしかしたらアダマスは火力バカなのかもしれない。さっきの言い訳も後付けみたいなもんだったし。
「じゃあ次は俺なんだけど…。スライムまだ近くにいるかな?」
「どうだろう。あっ、さっきのサーチの魔法で探してもらえばいいのでは?」
「確かに。フィスィお願いしてもいい?」
「仕方がないわね!【サーチ】ちょっと遠いけどあっちの方にいた!」
「ありがとう!じゃあ行ってくる!【身体強化】」
せっかく昨日練習していたことが試せる機会なのだ。やれるだけやってみよう。指さされた方向へと駆けていく。
【ファイア】【ウィンド】
炎と風を同時に生み出し合わせて放つ。炎が激しさを増してスライムに直撃、蒸発した。
「えっ!今三種類の魔法を同時に使ってませんでしたか?」
「俺にもそう見えたけど、マジ?」
「まあ、一応そうだよ。まだまだ練習中だけど。今のはたまたま。」
「いやいや、その年齢で二種の魔法を同時使用できるだけでもすごいのに、三種類とか衝撃ですよ!」
「本当に、どれだけ練習したんだ…?」
「そりゃあもちろんちょっとは練習したけど、そんなにすごいことではないよ。」
「ないないない。ちょっとやそっとでできるような芸当じゃないですよ。」
「あんまり謙遜しすぎないほうがいいよ。」
そこまで謙遜しているつもりはないんだけどな…。やらなくちゃいけないから頑張っただけだから。でも褒められるのは悪い気はしない。
「そう、かな。ありがとう。」
「まっ!サロスが三魔法同時使用ができるなんて私も知らなかったからね!二人が驚くのも無理ないよ!」
「フィスィはなんでちょっと上から目線なんだよ。」
「そんなことより次はあっちへ行こ?あっちにもスライムがいるから。みんなばっかりズルいし私も戦いたい!」
そして俺たちは(お金にならない)スライム狩りに励んだ。…あれ?セラピア草探しどこ行った?初日はこんなもんってことにしておいてください。
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