第2節「別れと出会い」5

「依頼完了です。ではこちらが報酬になります。」


「ありがとうございます。」


 ギルドに帰ってきて薬草と金を交換した。正直稼げていない。ただでさえ稼げないような依頼なのに途中から薬草採取と関係ないことしてたから当然ではある。時給換算すると最低賃金割ってるな。はやく試験に合格してまともな依頼を受けれるようにならないと。


「そういえば、その試験って次はいつに行われるんですか?」


「次回の試験は二週間後になります。試験三日前までの申込みが必要ですのでご注意ください。」


「それって今もう申し込んでおいてもいいですか?」


「はい、構いません。」


「そうなんだ。じゃあ私も!」

「私もお願いします!」

「俺もお願いします。」


「計四名ですね。ではそれぞれこちらの書類に記入してください。」


 書類へ自分の情報を記入していく。ギルドへの初登録とは違ってこの書類はちゃんとしているみたい。なるほど、Fランクは特殊と言っていたが意味がわかった。Fランクはもうほとんど冒険者扱いではないのだ。誰でも自由に登録しておける程度のものなのだろう。そういえば宿でもDランク以上かどうか確認されたな。




「はい、こちらお預かりいたします。試験の日、忘れないようにお越しください。」


 試験の日程も決まった。絶対に一発で受からないといけない。


「二人はギルドの免許の勉強は進めてる?」


 ふとアダマスに聞かれた。


「一応やってるよ。」


「私も同じく。」


「じゃあ過去問は解いたことはある?」


「いや、まだ勉強段階だから解いてない。9割以上合格のマルバツ問題って認識だけど合ってる?」


「合ってる。」


「なら正直簡単じゃない?」


「うんうんそう思うよな。まあ悪いことは言わない。とりあえず一度解いてみた方がいいよ。」


「ん?なんか歯切れが悪い言い方だな。そんなに難しいの?マルバツ問題なのに?」


 アダマスの目がなんというか、同情の目?ちょっと不安になる。


「解いてみたらわかるよ。それと、明日もこの時間に集合しない?」


「今日みたいに一緒に依頼を受けるってことか。いいよ。」


「私もいいよ!」


「よかった。それじゃまた明日!」


「また明日です!」 






_______________________






「フィスィ…」


「サロスどうしたの?ちょっと元気ない?」


「元気がないというかこの世の理不尽さを目の当たりにしているみたいな。」


「なにそれ意味わかんない。」


「アダマスが言ってたギルド試験の過去問、フィスィも解いてないよな。」


「ないよ?」


「それじゃあ一つ問題を出してあげよう。でーでん、問題。

『夜は視界が悪くなり危険なので、冒険を続ける際は周りに注意しなければならない。』

これはマルかバツどっちでしょう!」


「…マルに決まってるよね?そんなことを聞くなんて不安になるんだけど。」


「ははは。察しのとおり正解はバツだ。」


「は?なんで?…ほんとにナンデ?」


 心底不思議そうにフィスィが言う。そうだろうそうだろう俺だって意味がわからない。


「理由は、昼でも危険なので注意するのは夜に限らないからだって。」


「いやいや今昼のことは聞いてなくない?質問はあくまで夜に気を付けるかどうかでしょ。」


「俺に言われてもわっかりませーん。」


「なるほど、この世の理不尽ってこういうことか。理解できちゃった。」


 理解してもらえて何よりだ。ただし、これで終わるわけはない。


「さーてまだまだいくよ次の問題。

『Dランク冒険者はBランク以上の依頼を受けることができない。』

これは?」


「…どうせバツなんだよね?」


「正解!おめでとう!Cランクの依頼も受けてはいけないからだって。」


「もうどこからツッコめばいいやら…。Cランク以上がだめってことはBランク以上もだめじゃん。マルかバツならマルでしかない。」


「おっとそんなことを言ってもいいのかな?不合格になっちゃうよ?」


「あんたはなんでこの問題の味方をしてるの。」


 フィスィが笑いながら言う。


「まあ、まともに考えたらこの問題頭おかしいと思う。」


「だよね。なんでこんな問題が出題されるわけ?」


「わかんないけどわかんないなりに納得できる理由を探してみたんだよね。」


「とりあえず聞かせてちょーだい?」


「ギルドの免許を取ると難易度の高い、そして危険も伴う依頼も受けられるようになるじゃん。だからたぶん簡単に合格させるわけにはいかないんだよ。ひっかけ問題みたいな形の問題を作って注意深く観察する能力があるかどうかを図りたいのかもしれない、って感じ。」


「なるほどね…納得できないわ。」


「うん、俺も納得できない。」


 説明しながら自分でも意味わからないなと思ってたよ。


「もっと他にないわけ?」


「ない。」


「じゃあ結局クソ問題なわけか。」


「こら!女の子がクソなんて汚い言葉を使っちゃいけません!」


「あんたは私の誰なのよ。」


「祖母とか?」


「これまた絶妙なところをチョイスしたわね。」


「ちなみに問題はまだあるよ。」


「まだあるの!?」


「『依頼を達成できないと定められた罰則が与えられる。』これは?」


「…マルだと思うからバツ。」


 フィスィはこの問題の解き方をわかってきたらしい。それでいいのか試験問題よ。


「正解。非常時はその限りではないからだって。」


「ふふっ、なんか一周回って楽しくなってきた。非常時ってほんとに何よ。」


「非常時なら仕方がないよ。だって非常時なんだから。」


「まさか二週間後こんなの受けなきゃいけないわけ?」


「そのまさかなのだ。どうしようもないから勉強しようか。」


「全く納得できないけど…文句言っても仕方がないし、確かにやるしかないみたいね。」


「うん。問題がこんな感じだって今のうちに知れてよかったってことにしよう。」


 俺はこの理不尽な世界を変えてみせる!みたいな情熱は生憎持ち合わせていないのでこれを勉強しなければならない。合格率は悪くないようなので、ちゃんとやれば問題はないはず、そう信じたいなぁ。(願望)

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