第2節「別れと出会い」2

 高い山を超え(電車でトンネルを通っただけ)、深い谷を超え(大きめの川にかかる橋を電車で通っただけ)、苦労を重ね(長時間座り続けるのがちょっときつかった)ようやくここまでやってきた。


「ここが噂の冒険者ギルドか!なんかかっこいいね、サロス!」


「確かに、なんだか自分が小さな存在のように思えてしまうな。でも大丈夫、全てはここから始まるのだから。我々の冒険には多くの苦難が待ち構えているだろう。簡単にはいかない。それでも私たちには仲間がいる。ときに笑いあい、ときに涙を流して、そうやって成長していく俺たちの冒険が今始まるのだ!」


「急に打ち切りが決定した漫画かな?いや、これはどちらかというとプロローグのほうか。というか仲間って私たち二人しかいないよ?パーティー組むなら探さなきゃだね。さっ馬鹿なこと言ってないで早く入るよ。」


「ちょっと待って、そんな急に入っていって悪目立ちしたらどうするのさ。『おうおう嬢ちゃん坊ちゃん見かけない顔だねぇ、ここはガキが来るようなところじゃねぇぞ。』って怖い顔のおっちゃんに言われちゃうかもしれないし。」


「いや、そんなこと普通ないでしょ。」


「いやいや、それがあるんだよな。ギルドに入っていきなりガラの悪い人に絡まれる俺。そして喧嘩に発展してバトルをすることになるんだ。


『おいおいあいつ絶対死んだわ』とか話されるなかそいつをボコボコにして、『なんだあいつは』ってなっちゃって。


突然現れたルーキーにみんな驚いてそんでちやほやされちゃったりなんかして!そんな感じでこの物語は始まりの時を迎えるってわけだ!」


「話終わった?どうでもいいからさっさと中に入ろ?」


「待って!というかせめてツッコんで!長いボケをスルーされると結構つらいから…やばい涙出てきたかも。」


「んー、出てないから大丈夫!じゃあ入ろう!」


「そんなにすぐ入りたい!?正直緊張してるんだよ察してくれ。魔導検査では緊張して早起きしたくせにこれはなんで緊張しないんだよ。」


「さて、なんででしょう!」


「テンションたっか」



「あ、あの、違ったら申し訳ないんですけど、お二人はスコレー校出身ではないですか?」


 ギルドの前でフィスィと押し問答をしていると後ろから声をかけられた。振り返ると同い年くらいの二人がいた。自分たちに話しかけた方は水色髪の女子で、もう一人は赤髪の男子だ。


「…そうですけどそれがどうかしましたか?私たち急がしいんですけど。」


 フィスィさんや、初対面(?)の人相手にちょっと語気が強くありゃしませんかね。目つきが急に怖い。猫が人見知りしているかのような警戒ぶりだ。今にもシャーっと威嚇しそうだ。というかもう猫では?そうだよ猫に違いない。おーそう思うと幻覚で猫耳が見えてきた。あ、思った以上にかわいい。今耳がぴくっと動かなかったか?っと危ない、よくわからない妄想している場合じゃなかったわ。


「まあまあ落ち着いて。はい、どうしました?正直お二人のことを存じ上げないんですけど。」


「いえ、すみません。実は私達も同じ学校出身なんですよ。あなた達が話しているのを見て学校で見た気がするということで声をかけさせていただきました。」


「そうなんですか。」


 同じ学校出身?全く記憶にないがそもそも同じ学校の人なんて誰も覚えていないので仕方がない。


「で、どうしました?」


「その、お二人は今からギルドに冒険者登録をされようとしているとお見受けしましたがあってますか?」


「はい、そのつもりですよ。」


「ですよね!あ、失礼しました。私達も今から冒険者登録をしようと思っていたのですが、ギルドに入るのが少し緊張してしまって。よろしければ私達とあなた達とで一緒に入りませんか?」


 その緊張する気持ちはすごく共感できる。


「だってさフィスィ。どうする?」


「んーと…別にいいんじゃない?」


「フィスィがそう言うなら。ええ、いいですよ。」


「ありがとうございます!申し遅れましたが私、ディプラと申します。」


「ありがとう。アダマスです。」


 ということでディプラとアダマスが仲間に加わった!まあ仲間とはいえない気もするが。ところでこのアダマス君、今始めて喋ったな。まあ会話に入るタイミングがなかったんだろう。


「はーい、よろしくね!私はフィスィ!」


「どうも、サロスです。」


 うちの彼女さん距離の詰め方やばいな…。さっきまで猫被ってたのに次は犬か?ともかく俺たちは四人でギルドに入ることになった。


「それじゃさっさと行こう?」


 …流石にこの状況でもさっきみたいにフィスィの言葉を止めたりはしないよ?






「あれ?人少なくね?」


 ギルドの中にはあまり人がおらず閑散としていた。イメージでは人でごった返してる感じなんだけどな。


「それはそうでしょ、今昼過ぎだよ?ギルドは依頼が張り出される朝に一番混雑して、達成結果を報告する夕方にも混雑するけど、昼なんて誰もいないよ。早々に依頼失敗した人とか、ギルドに対しての書類提出する人くらいしかいないと思う。」


「じゃ、じゃあ、入って突然の腕試しイベントは?」


「もちろんあるわけない。」


 そ、そんなぁ。まっ、本当に喧嘩とかふっかけられても困るんだけどね。俺にそいつを倒せるような実力なんてまったくないわけだし。頑張らなくちゃな。


「受付は…あっ、あっちにありますね。」


「ほんとだ。それじゃ行こうか。」


 アダマスの言葉にうなずく。もちろん受付にも他に人がおらず、受付嬢が暇そうにしていた。


「すいません。冒険者登録したいんですけど。」


「はい、冒険者登録ですね、かしこまりました。四人全員ということでよろしいですか。」


「「「「はい」」」」


「それではこちらの用紙にお名前をお書きください。」


 用紙を渡されたので書く。ん?この紙名前しか書くところないけどあってる?


「書き終わりましたかね?回収いたします。それでは少々お待ち下さい。」






「お待たせ致しました。こちらみなさまのFランク冒険者カードになります。」


 はっや。まだ二、三分しか経ってないんですけど。早すぎるとむしろ不安なんですけど。


「それではギルドの仕様について軽く説明しますね。


今回皆様が登録したのはFランクという特殊なランクになります。簡単に言うと仮申し込みのような形です。この状態では薬草採取や害虫駆除といったごくごく簡単な常設の依頼しか受けられません。


魔獣討伐などの依頼を受け、本格的に冒険者として働いていくという方はギルドで月一回行われている試験に合格していただく必要があります。細かいルールなどはそちらの試験の出題範囲ですのでお勉強ください。


試験に合格なされましたらDランク冒険者となって活動を始めていただけます。ランクを上げるには受けた依頼の難易度と成功率であったり、こちらで用意した昇格試験に合格していただいたりなどが必要です。細かい説明は省きますが実力がなければ昇格できないような仕組みになっております。


先ほどお渡ししたギルドカードは簡単なものにすぎないで、試験に合格されたらしっかりとしたギルドカードをお渡しできます。Dランクの依頼を受けないとしても、ギルドカードは本人証明にもなりますので受験されることをこちらではおススメしております。それでは説明は以上になります。」


「「「「ありがとうございます。」」」」


 現在俺たちはFランクだ。そして試験に合格したらDランクになるらしい。いやEランクってどこいってーん!まっ、Fランクは特殊なランクって言ってたしなんかそういう感じなんだろ。知らんけど。


「なんか思ったより早く終わったな。」


「そうね。」


「サロス君とフィスィさんはこれから何か予定とかある?」


「うーん。特に決めてないけど、ここに来たのが今日だから宿を決めなくちゃいけないな。それからは…うん、今日くらいはゆっくりしようかな。フィスィはそれでよさそう?」


「うん。いいよー。」


「そうか。…あのさ、明日何かしらの依頼を一緒に受けないか?臨時パーティーみたいな感じで。」


「臨時パーティー?」


「そうそう。せっかくの機会だし。Fランクの時点で受けられる依頼なんてパーティーを作るまでもない気もするけどさ。今後の練習というか、そう言う感じで。どうかな?」


「フィスィ、どうする?任せるよ。」


「サロスがいいならやりましょう。私は結構乗り気。」


 へぇ、乗り気なんだ。なんか意外。彼女がそう言うのならそれで決定だな。


「やった!嬉しいです!一緒に頑張りましょうね!ほらほらアダマスも感謝しなさいな!」


「言われなくてもするよ…。二人とも提案に乗ってくれてありがとう。明日もよろしくな!ええと、それじゃあ明日の依頼が張り出される時間にここで落ち合おう。じゃあ今日はこれで解散にしようか。」


「了解。それではまた明日。」


「バイバーイ!」


「また明日よろしくです!」










===============

あとがき


 お読みいただきありがとうございます。作者です。

 今回サブヒーロー君とサブヒロインちゃんが登場しましたが、ここでとっても重要な設定についての補足です。簡潔に言うと胸の話です。とっても重要だよな?


 みなさんは巨乳派でしょうか?貧乳派でしょうか?どちらにも良さがあるでしょう。しかし、今作のヒロインであるフィスィとサブヒロインのディプラの胸は"ちょうどいい"大きさです。具体的な言及は避けておきますが、巨でも貧でもないです。(ここ重要)


 いいですか?ちょうどいいが一番いいんですよそうに決まってます。基本的に登場人物の設定は髪色くらいしか言及してないですしこれからするつもりもないですが、胸だけは勝手な想像をされては嫌なのでここで説明の場を取らせていただきました。


 それでは勝手に胸を盛ったり減らしたりすることなく、続きもどうかよろしくお願いします。

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