第15話 ベイビー、魂の座
我が幼馴染みの妹君が、おまわりさんにドナドナされてから1日経った火曜日の早朝。
何となしに自室で目が覚めた俺は、お外で雀がチュンチュン鳴いている声を聞きながら、むくりと起き上がった。
「……なんか変な臭いがする」
なんだろう、この臭い?
玄関開けたら2秒で便所だった山田くん家みたいな、むしろ便所が玄関だった山田くん家の臭いが居間の方からプンプンするんですが?
「親父ぃ~? 帰って来てんのかぁ?」
まず考えられる結論として、仕事から帰って来ていたパパンが脱衣所で育毛剤を頭皮にスプラッシュしている臭いだ。
が、残念ながら返事はない。どうやら屍のようだ。
おぉ親父、死んでしまうとは情けない。
「居ないのかぁ~? 親父ぃ~? 父上ぇ~? パパ~ン? アンパ●マ~ン? 頭だけア●パンマ~ン?」
多種多様な呼び方で我がパパ上を呼んでみるが……やはり返事はない。
俺は「しょうがねぇなぁ……」とため息を溢しながら寝床から身を起こし、スタスタと臭いの発生源を追うように顔をしかめながら居間へと向かった。
スタスタと臭いが強烈な方へと歩みを進め、キッチンの方へと移動し……俺は1人納得した。
「あぁ~、コレか」
俺は臭いの発生源である涼子ちゃんが作ってくれたカレーライスの残りを見つめながら、軽く天を仰いだ。
いやぁ、そう言えば昨日、涼子ちゃんが俺のためにカレーライスを作ってくれたんだっけ?
女の子に料理を作ってもらうのって久しぶりだったから、すっごい嬉しかったのを覚えている。
ほんとあまりにも嬉しかったから、つい……お外でたむろしていた誇り高きブラックバード(カラス)たちにおすそ分けしちゃったくらいだ。
涼子ちゃんの
「それにしても、どうすっかなぁ……コレ?」
涼子ちゃんが作ってくれたバイオテロご飯が入っているお鍋をガムテープでグルグル巻きに密閉しながら、処分――違う、活用方法について頭を巡らせた。
流石にこのミスター味●子も裸足で逃げ出すほどの料理を下水に流すワケにはいかないし……よし。
「とりあえず、
俺は必殺残飯処理係、もとい我が偉大なる従兄弟、大神金次狼の
うん、大丈夫。並みの男なら一口食べた瞬間にワケの分からない事を
なんせ中3のとき、30歳を待たずして簡単な魔法なら使えるんじゃないか? と愛すべきクラスメイト達の間でまことしやかに
きっとケミカルをマジカルでレジストしてくれるに違いない。ヤベェ、なんて完璧なロジカルでマッスル!(まっする♪)
よぉし、そうと決まればこうしちゃいられない!
俺はニュータイプもビックリの論理的思考を展開しつつ、さっさと自室に戻り、ジーパンに適当なTシャツを合わせて、再びキッチンへと戻ってくる。
そのまま流れるように密閉されたバイオテロご飯を紙袋に入れて準備完了。
ふふっ、久しぶりに従兄弟の顔が苦悶の表情に歪むのかと思うと……胸のトキメキを抑えきれないぜ!
「忘れ物なし、と。それじゃ行ってきまぁ~す」
誰に言うでもなく、独りでにそう呟きながら玄関のドアを開ける。
誰も居なくなった部屋に俺の声音だけが寂しく反響する中、ゆっくりと我が家の玄関が閉まっていく。
……このときの俺は予想だにしていなかったのだ。
――まさか大神家から帰って来たとき、我が家が『あんなこと』になっていようとは……。
もちろんそんなコトなんぞ知らない俺は、従兄弟の苦悶の表情を思い浮かべながら、鼻歌混じりに1階へと続くアパートの階段を下りて行くのであった。
◇◇
我がチャリンコ『デリヘル号』で夏の湿った風を突っ切ること40分ちょい。
俺はお目当ての一軒家へと到着するなり、意気揚々と『大神』と書かれた表札のすぐ真下にあるインターホンへと指先を伸ばした。
「乳頭プッシュ」
の掛け声と共にピンポーン♪ と聞き慣れた呼び鈴の音がかすかに耳に届く。
……のだが、何故か誰の返事もない。
「あれ? 誰も居ないのか?」
おかしいなぁ、夏のこの時間帯ならあの
俺は小首を傾げながら、もう1度呼び鈴を押すが……やはり返事はない。
試しに高橋名人もビックリの呼び鈴16連射を試みてみるが……やはり誰の返事もない。
「家族全員でどっか出かけたのか? ――って、あれれ?」
軽く玄関の扉を引っ張ると、鍵はかかっておらず、簡単にドアは開いた。
「不用心だなぁ。泥棒とか入ってきたらどうすんだ? ……まぁこの一家にそんな命知らずなマネをする
なんせセコムもビックリの最強のホームセキュリティであるオッサンが1人居るのだ。
この家に盗みに入るなんぞ、全裸で地雷原の上をブレイクダンスするようなモノだ。
「おはようございまぁ~す。金次狼、居るかぁ~?」
玄関を開け、家の中に入ると、居間の方から「おぉ~、ちょうどいい所に来たなぁ~」と例のアホの間の抜けた声が大気を震わせた。
なんだよ、家に居るんじゃねぇか。なら返事くらいしろよな。
と心の中で文句を言いつつ、「コッチ、コッチぃ~」と俺を呼ぶ従兄弟の声に導かれるように居間へと足を延ばす。
居間の扉を開けると……何か議論でもしていたのか、ガタイの良い2人の男が机を挟んで対面に座っていた。
「おぉっ! 久しぶりだな、我が大いなる甥っ子――ロミオ・アンドウよ!」
そう言って子どものように無邪気な笑みを向けてくるやたら筋肉質のオッサン。
黒のリーゼントに『綾波レイ☆ワ』と書かれた謎のTシャツを着こなしているこのオッサンこそ、我がママンの最大の被害者にして、俺の残念な叔父、大神士狼さんだ。
「おはようございます、士狼さん。相変わらずTシャツのセンスが死んでますね?」
「ハッハッハッ! 褒めるな、褒めるな♪」
「気づけ親父、バカにされてるぞ? ロケットエンジンが如きスゲェ勢いでバカにされてるぞ?」
「なんだとゴルァッ!?」
チンピラ同然のように怒声をあげる我が叔父を華麗にスルーして、対面に座るもう1人の細マッチョは「おうっ」と俺に向かって片手を上げた。
「久しぶりロミオ、半年ぶりくらいか? 相変わらずアホ面全開で安心したぜ」
そう言ってニカッ! と笑う黒髪オールバックの男はもちろん、言うまでもないが言うまでもない男――我が偉大なる従兄弟、大神金次狼その人である。
今日も今日とて真っ赤なTシャツに白文字で『キムチ』と書かれたどこに需要なあるのか全く分からない謎のTシャツを華麗に着こなしていた。
う~ん、流石は親子と言ったところか。Tシャツのセンスが行方不明じゃ~ん。
能ある鷹は爪を隠すと言うが、上手に隠し過ぎたのか、もはや自分たちでさえ見つけられない良識と才能を持つ大神親子に、俺は何とも言えない気持ちを抱きながら、とりあえず朝の挨拶を交わしておいた。
「う~す、久しぶりだな金次狼。おまえのTシャツも相変わらず、親父さんと同じく良いセンスしてるな」
「おいおい……褒めたってお金しか出ないぞ?」
「気づけ我が息子よ。おまえは今、バカにされているぞ? しかも物凄い勢いで」
「なんだとゴルァッ!?」
「すげぇデジャビュを感じる……」
ほんと日に日に似てくるな、この親子は……。クローンか何かなのかな?
「って、あれ? 芽衣さんと玉藻ちゃんは?」
「オフクロなら朝から青子とあーちゃんと3人で出かけて行ったぞ」
「何か3人とも妙に神妙そうな表情だったよなぁマイサン?」
「おう。例えるならデリヘル呼んだら教え子が来た教師の表情だったな。な親父?」
「いやいや、どちらかと言えば初デートに挑む男子中学生の決戦前夜の顔だろ? なぁロミオ?」
「心底どうでもいいうえ、例えのチョイスが下手くそ過ぎる……」
ほんと相変わらずのTシャツのセンスといい、クソどうでもいい比喩のセンスといい、マジで残念を通り越しても殺意すら抱きそうだよ。
しかも本人たちは『上手いコト言ってやったせ!』みたいなドヤ顔がさらにムカつく。もうどれくらいムカつくって……もうほんとムカつく。あとムカつく。
全然上手くねぇんだよ。ちょっ、おまえら? その顔やめろ? はっ倒すぞ?
「じゃあ玉藻ちゃんはどこへ行ったのさ?」
「あぁそうだっ! そのことで我が偉大なる甥っ子に聞きたいことがあったんだ!」
「俺に聞きたいことですか? まぁ答えられる範囲のことであれば……」
「ロミオは『山』と『川』どっちがいいと思う?」
「『山』と『川』? 急にどうしたよ? この夏は家族旅行にでも行くってのか?」
てっきりこの家族のことだから夏は『海』一択だとばかり思っていたのだが……いや、それは無理か。
そういえば中学のとき1度だけこの家族と一緒に海に行ったことがあるけど、そのときは玉藻ちゃんの水着姿を見た野郎共の瞳にレーザーポインターを照射しようとしている
だからまぁ、家族旅行として『山』か『川』に行くのは妥当な判断なのだろう。
なんて1人納得していると「違う違う」と金次狼が首を横に振った。
「死体を
「どっちも良くないと思う……」
俺の従兄弟がテロリストな件について。
「パパはね、『山』がいいと思ってるんだけどさ……」
「俺は絶対に『川』がいいと思うんだよ。ロミオはどっちがいいと思う?」
「やめて! ナチュラルに俺を犯罪の片棒を
俺が棺桶に片足突っ込んでいるオッサンと、豚箱に片足突っ込んでいるバカに力の限り抗議の声をあげると、バカ共がシュンッ、と両肩を落とした。
そのまま、お通夜でも始めそうな雰囲気のまま、酷く落ち切った声音で、
「実はさ、ロミオ。ここだけの話なんだが――」
「我がプリティマイプリンセス、玉藻たんに……彼氏が出来たかもしれん」
と言った。
「へぇ~、あの腐女子に彼氏が出来たんだ。おめでとう」
「めでたくねぇんだよ、チクショウ……」
「神は死んだ……」
金次狼と士狼さんが2人そろって大きなため息を溢す。
コイツら、どんだけ玉藻ちゃんが好きなんだよ? 気持ちワリィよ。
「その調子なら、玉藻ちゃんが家に彼氏を連れて来たらあんたら殺しちゃうんじゃねぇの? とく士狼さん」
「いや……玉藻たんが本気で好きになった男なら、パパはもうとやかく言わないさ」
フルフルと首を横に振る我が残念な叔父上。
おっ、意外な反応。
てっきり恥も外聞も関係なく、『嫌だぁぁぁぁぁぁっっ!?』とデパートのオモチャ売り場でギャン泣きしているクソガキッズのようになるかと思ったのに……流石は一家の大黒柱。
その瞳は冷静に、落ち着いて、来たるべき未来を見据えていた。
「パパが彼氏に言うべき言葉は1つでも充分さ。――素手でかかってこい。もちろんパパは銃器、鈍器、火器、何でも使うがな」
「殺す気マンマンじゃ~ん。魂まで八つ裂きにする気マンマンじゃ~ん」
「
「マジかよ、かたじけねぇ」
「待て待て落ち着け。アンタら親子がタッグを組んだらマジで死人が出来るぞ?」
2人の瞳は冷静に、落ち着いて……彼氏をぶっ殺す未来を見据えていた。
う~ん、『悪・即・斬』のもとカレピをぶっ殺す気マンマンですねぇ。
そもそも、本当にあの大神家が誇る腐り姫に彼氏が出来たのだろうが?
確かに見た目だけなら絶世の美少女だよ?
でも中身は喜々として実の兄貴に実の親父を掘らせようと思考錯誤しているヤベェモンスターなんだよ?
正直、彼氏が出来るイメージが1ミクロンも湧かないんですけど?
絶対にこの2人の思い込みだろ……。
とシスコンモンスターズを見つめていると、ガチャリッ! と居間の扉が開いた。
「ただいまぁ~。――って、あれ? ロミオくん?」
「あっ、お邪魔してます。芽衣さん」
「わぁ~、久しぶりねぇ! いらっしゃい、元気してた?」
「おかげ様で、元気一杯ですよ」
そう言って濡れた紅玉のような瞳で優しく俺を捉えるのは、ここ大神動物園の園長にして、我が偉大なる従兄弟である金次狼の母君、大神芽衣さんその人だった。
芽衣さんは今日も今日とて夜の
う~ん、相変わらず美人だ。お肌なんてもはや20代のソレで……もう絶対に波紋の呼吸法を習得しているとしか思えない。
大人の魅力をまき散らす従兄弟のママンに若干ドキドキしていると、芽衣さんの背後から「えっ? ロミオ殿?」「ん? ロミ公が来てんのか?」と声が続いた。
あぁ~、久しぶりに声を聞くなぁ。なんて思いながら、俺は芽衣さんの背後に控えていた愛しの幼馴染み―ズに片手をあげて挨拶をしていた。
「おいっす~。久しぶりあ~ちゃん、青子ちゃん。みんなのアイドル、ロミオ・アンドウただいま帰りましたよぉ」
「その言動……おぉっ! 間違いなくロミオ殿でおじゃる! 半年ぶりでおじゃるなぁ!」
「ロミ公、おまえ……今までどこに行ってたんだよ? 心配し過ぎて自殺する所だったぞ、ウチの妹が」
「涼子ちゃんには昨日会ったよ。今頃は留置所の中じゃないかな?」
俺はグルグルメガネにオタファッションのあーちゃんと、黒く染めた髪をポニーテールに纏めながらデニムミニのスカートにおへそ丸出しのタンクトップという俺の性癖をダイレクトアタックしてくる司馬青子ちゃんにヒラヒラと手を振った。
「いやぁ、久しぶりにロミオ殿に会えて小生すごく嬉し――うぅっ!?」
「俺も会えて嬉し――ぅえっ? えっ!?」
「ど、どうしたあーちゃんっ!?」
ニコニコしていたあーちゃんが突然口元を抑えてえずき出し、慌てたようにキッチンの方へと駆けて行った。
そんな初めて見るセカンド幼馴染みの姿を前に、俺と金次狼はド肝抜かれたように同時に声を上げてしまう。
数秒後、「うげぇぇぇ……」とあーちゃんの苦しそうな声がリビングへと木霊した。
何が起こっているのか分からず固まる男衆を無視して、芽衣さんと青子ちゃんはあーちゃんの後を追いかけて行き、えずき続ける彼女の背中を優しくさすっていた。
えっ? えっ? 何が起きてるの?
状況が飲みこめず、呆然とする俺と金次狼。
そのすぐ近くで士狼さんは「HA☆HA☆HA☆HA」と外国の通販番組のようにうぜぇ笑い方をしながら、
「おいおいあーちゃん? つわりか? パパがイケメン過ぎて妊娠しちゃったのかぁ?」
う~ん、流石は金次狼のパパ上ですねぇ。ノーデリカシーの名を欲しいままにしていますねぇ。
このタイミングで下ネタをぶっこむのその丹力……嫌いじゃないぜ?
でも、空気は読もうね? ほらっ、アナタの息子さんのこめかみがピクピクしていますよ?
『テメェクソじじぃ!? 息子の彼女にセクハラしてんじゃねぇよ!』って目ぇしてますからね?
今にも金次狼が士狼さんの胸元を掴みがからんとしたタイミングで、芽衣さんが「あら?」と驚いたような声をあげた。
「パパにしては察しが良いわね。今日検査してきたばっかりなのに。もしかして、気づいてた?」
「「「……はい?」」」
空気が、固まった。
ん? 察しが良い? 気づいていた? どういうことだ?
ちょっと考えれば答えが出そうなその問いに、何故か俺の頭が考えるのを放棄してしまう。
それは大神親子も同じようで、気がつくと俺たち3人は頭の上に「???」を浮かべて、小首を傾げていた。
そんな野郎共をゴミカスでも見るような冷めた眼つきで青子ちゃんは一瞥しながら、ゆっくりとその淡い唇を動かした。
「妊娠したぞ」
「誰が?」
「あーちゃんが」
「誰の? パパの?」
「違う」
混乱のあまり、ワケの分からないことを口走る士狼さん。気持ちは分からないでもない。
ぶっちゃけ俺も、驚きすぎてもはや声すら出ない始末だ。
えっ? 妊娠? あーちゃん妊娠したの? 士狼さんがじゃなくて?(混乱)
グルグルメガネの下で恥ずかしそうに目を伏せるあーちゃん。そして彼女の言葉を代弁するようにまっすぐ『ある人物』を見据える青子ちゃん。
その視線の先を追うと……何故か青い顔を浮かべてガクガクブルブルしている金次狼の姿があった。
「き、金ちゃん殿? その……小生、妊娠しちゃったでおじゃる……」
「……マジで?」
「おめっとさん、金の字。今日からおまえがこの子のパパだ」
「……マジで!?」
幼馴染みたちに祝福されながら、金次狼は「えっ!? い、いつのヤツ!?」と激しく
心当たりがあり過ぎるのか、必死に指を折り数える我が残念な従兄弟。
そんな従兄弟のすぐ近くで……俺は人知れずコッソリと大人のオモチャよろしくガタガタ震えていた。
ん? あれ? ちょっと待って?
あーちゃんが妊娠したのは分かった。そのパパがどうやらあの
ということはだ……。
……あの
瞬間、俺は金次狼の胸ぐらを反射的に掴んでいた。
「金次狼テメェ!? 誰に許可を得てサラッと『脱☆童貞』してんだ!?」
「いや何でいちいちお前に許可をとらにゃならんのだ? 意味分からんわ。お前は俺のオフクロか?」
「ハァッ!? 中学のとき約束しただろうが! 『大人になるときは一緒になろうね?』って。よもや忘れたとは言わせねぇぞ!?」
「うん、ごめん。今わりとシリアスな状況だから、一旦黙って貰っていいかな?」
俺は「チッ!」と舌打ちをかましながら、乱暴に金次狼の胸元を掴んでいた手を離すと、そのまま玄関へと移動するべく踵を返した。
「こんなヤリチン☆ハウスに居られるか! 俺は帰るぞ! あとあーちゃん、妊娠おめでとう! 金次狼と幸せにな! 生まれたら盛大にお祝いしようぜ!」
「ロミ公おまえ、どういう感情の振れ幅をしてるんだ……?」
「あ、ありがとうロミオ殿! えへへ……」
「ま、待てロミオ! ふざけんな! 俺を置いて行かないで! 独りにしないで! ずっと傍に居て!? 優しく愛を
「おまえもおまえでどういう感情の振れ幅をしてるんだ金の字……」
呆れた声と嬉しそうな声と泣きそうな声を出す幼馴染みたちを尻目に、俺は玄関へと駆け出した。
「まったく、我が息子ながら
「あっ、ちなみママも妊娠したから」
「「えっ!?」」
大神親子の声音が鼓膜を揺らしたその瞬間。
気がつくと俺の両足に2人のカス野郎の身体がガッチリとしがみついていた。
「帰らないでロミオ!? 俺たちを2人にしないで!」
「お願ぁ~い! 100円あげるから一緒に居てぇ!?」
「う、うぜぇ……」
結局俺はこの日、金次狼が責任を取るべくあーちゃんのお家に強制連行されるまで、無理やり野郎共に拘束されることになったのであった。
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