第326話 ラトリム村防衛戦 その4
「地破斬!」
ジェシカさんが放った攻撃が大地を割った。それにより攻撃の範囲内にいたオークやオーガが計7体光の粒子となって消える。
「まだまだ行くよ、空破斬!」
大剣を構え直しジェシカさんが横凪に剣を振るう。すると斬撃は衝撃波を伴って前方に進む。私が使う三日月とは圧倒的な攻撃力の違いを持つジェシカさんの空破斬は同時に四体の魔物を倒す。
「エンチャント・マナスティール...この調子で行きましょう!」
「支援助かるよ。それにしても訪問者は凄いもんだねぇ。十概の殆どを使えるのかい」
「それが私たちの強みなのでしょう。その代わり技としては未熟なのがデメリットだと思いますよ」
私たちが使うアーツは簡単に習得できる分効力が下がっている可能性が高いのはなんとなくだが察することは出来る。
分類するなら物理系のアーツに分けることが出来そうなジェシカさんの技が魔物を即死させることが出来る時点でプレイヤーが使うアーツとは性能が天と地ほどの差がある。
「それにしても全然数が減らないわね。このままじゃ抜けられてしまうわ」
「援軍を呼ぶことは出来ないのですか?」
「難しいわね。王都にいる銀翼のメンバーは王都の防衛に参加しているだろうし、そもそも王都から抜け出して援護に来れるのは実力者だけだよ。そんな実力者を王都から出すわけにいかないでしょ」
「そうなりますよね。なら砦の騎士はどうでしょうか?」
「それならもう村の者が伝令を出したと思うけどね。この村にこれだけ魔物が来ているなら砦はもっと激戦でしょうから援軍を寄こす暇もないと思うわ」
「やはりこの戦いを切り抜けるには私たちがやるしかないと言うことですか」
切れかかっていたバフを更新しながら魔物の足止めをしていく。戦場を縦横無尽に駆けながら攻撃をしないと対処が出来ないのでかなり疲労が溜まって来た。もっと局地での戦闘ならこれ程体力を使わないで済むのだがオーガたちは賢いのか、それともただ愚直なのか門を攻めるのではなくただ前進し、柵だろうが防壁だろうがお構いなしに破壊して進むためそれは叶わない。
ただ、そのおかげもあって未だに村への被害が無いのだから一概に悪いと決めつけることも出来ない。防壁を殴っている間は本当にただの的なので村人も私も攻撃を当てやすいのだ。
「ジェシカ! サイクロプスだ! 絶対に村に近づけるな」
魔物に攻撃を仕掛けているとデヴィッドさんの声が戦場に響いた。彼の持つユニークスキルは索敵に特化しているので後方から戦況把握を担っている。
「サイクロプスかい。少しめんどいねぇ」
「サイクロプスと言えば単眼の巨人ですか?」
「そうさ。アタシも戦うのは久しぶりだけど魔の森中層でも強力な部類の魔物だね」
「ハイオーガよりもですか?」
「当り前さ。サイクロプスは準Aランク級の魔物なんだからハイオーガとなんて比べもんになんないよ」
またもファンタジー定番の魔物だ。しかし、ジェシカさんがこれだけ気を張っているのだからそれ相応の力があると言うことか。
「まだ余力がありますし、私が出ましょうか?」
「いや、あれはアタシがやるよ。あんたはやつらの足止めに集中しな」
それだけ言うとジェシカさんが走り出す。まだサイクロプスとの距離はあったはずだが気づけば目視でその巨躯を認識できるほど近くまで近づいていた。
「邪魔だよ!!」
ジェシカさんが放った攻撃が進行方向の魔物を切り裂き、衝撃波がサイクロプス目掛けて駆け抜ける。どれだけ進もうと威力の減衰が見られない斬撃はサイクロプスの胴体に直撃した。しかしサイクロプスはたじろく気配すら見せない。
「グォォォォ!!」
今度はサイクロプスが攻勢に出る。手に持った巨大な棍棒を掲げ振り下ろした。たったそれだけではあるが地面が割れ、さらには大地を捲りながらジェシカさんに向かって進む。道中魔物が居ようと関係なく進む地割れはジェシカさんに回避されるが勢い途切れぬままに村まで直進した、
「これで準Aランク? ハーピークイーンの変異種より強くないか」
地割れは村から100メートル離れたところで勢いを失い停止したがサイクロプスの距離がもう少し近ければ村の門は余裕で倒壊していただろう。
ギリギリ届くだろうと鑑定を掛けるがこれは予想通りレジストされる。魔の森でコイツに出会わなかったのは幸運以外の何者でもなかったのだろう。下手をすれば白黒を成長させる前に殺されかねない。
「しかしオーガたちが厄介なのには変わりはないか」
偏見だがサイクロプスは単独で行動している印象を受けるためジェシカさんがいれば問題は無さそうだがオーガやオークは群れを伴って行動している。そのため何と言っても手が足りない。
今は白黒の効果があるためどうにかなっているが数体は抜けてしまい村に向かって行く。数えられる程度の魔物ならデヴィッドさんが処理してくれているが早くユーリウスさんたちが戻って来て欲しい頃合いだ。
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