第211話 大地の塔 その26

 ホーンラビットとの戦闘をした後は森の中を進みファングウルフやラッシュボアとも戦闘を行った。

 ホーンラビットとは違い群れで行動しているので全て倒すのに時間がかかったが、問題なく処理をすることができた。

 今の感じなら他の魔物と戦っても不覚を取ることはないと思うのでそろそろトレインで魔物を集める方が良いかもしれない。

 ただし、トレントンやハイドスネークと言った魔物とはまだ遭遇していないのでヤツらがどれ程か先に確かめておかないといけないが。


 今は走りながら攻略しているわけではないので周囲をくまなく探索しているが途中宝箱を見つけることができた。

 ダンジョンの攻略を開始してから5回目程だが未だに当たりと言えるアイテムには遭遇していないので期待はしていなかったのだが、今回は運よくMP回復ポーションの詰め合わせを入手することができた。

 もちろん等級もレア度もリアさんが作成するポーションと比べるまでもなく低いが、これまでの戦闘でMP回復ポーションを大分消費してしまっていたのでポーション代が浮いたと思えば十分だ。

 それに今までがゴブリン由来のアイテムだったことを考えれば十分に当たりであると言える。


 それとこの階層の攻略が終われば一度街に戻ることにした。

 どうやらミサキさんたち生産職一行がこの街に到着したようなのだ。いい大人が平日の午後からゲームか、と脳裏をよぎるがそれを私が言うと特大ブーメランなのでやめておく。

 まあ、私は無駄に使わなければ問題ない程度には稼いだのでもう十分だ。

 残りの人生は私がやりたいようにやると決めたのだし、何を成そうがそれは個人の問題であり、私がとやかく言うことではない。

 そんなどうでもいいことよりもアイテムの買取をミサキさんたちにしてもらえるように連絡を入れておかなければ。


 あの集団を纏めているのはミサキさんだがアイテムによって買取をする生産職が異なるので、そこら辺の問題を解決しといてもらいたい。

 何度も生産職のプレイヤーをたらい回しにされるのは勘弁してほしいからな。

 ついでにアルがログインしているようなので導魔の修繕の話も頼んでおこう。

 今日の夜は大丈夫だとしても明日の攻略では私も動きたい気分になるかもしれないので、武器は万全な状態にしておきたい。


 街での行動を考えながら進んでいたせいで植物区域に入っていたのに気が付かなかった。

 ここからはトレントンなどの植物系の魔物が出現するので警戒を強めた方が良いだろう。


 辺り一面に生えている向日葵やチューリップの姿をしたカラープラントと呼ばれる魔物は気配を絶つことができる魔物ではないが、トレントンは擬態が得意なので気をつけて進まないといけない。


 ここいらの魔物は40階層台よりも一段と強力になっていることは間違いない。だが、その心配は一部杞憂だったようだ。

 スキルの強度を上げていけば近くにいたトレントンでさえ徐々に擬態の看破に成功して樹の幹に顔のような皺が染み出してくる。


 スキルを使えば奇襲については問題なくなったがその戦闘能力はどれ程だろうか。

 もしもの時の対策としてシールドを展開してからアイビートレントンに向かって駆けだす。


 アイビートレントンは通常のトレントと違って蔦を鞭のように扱い攻撃してくるので打撃系統の硬魔では不利だ。

 だが、攻撃を迎撃するのではなく、躱すと言う選択肢を取れば問題なく敵の懐に入ることができる。

 縦横無尽に振るわれる鞭の隙を駆け抜け、真上からの叩きつけは半身をズラすことで躱し、横からの攻撃はシールドを傾けながら構えることで攻撃の軌道をずらして対処していく。


 そして、完全に敵の懐に入り込んでしまえばコイツに関しては勝利が確定する。

 硬魔にエンチャント・カースでダメージ量が増えるようにしたら後は、たまに振るわれる蔦を回避しながらヤツのHPを削るだけだ。

 この時に書術のアーツを使ってレベルを上げることも忘れない。

 今戦っている感覚としては導魔に魔力を纏わせれば簡単に両断できそうな気がするが、今は使えないので硬魔でひたすらにアイビートレントンを叩きつけていく。


 導魔とは違い敵と打ち合うことを想定して作られた硬魔なら耐久値の減少を大して気にすることもないので長期戦にはもってこいだ。

 おかげでコイツを使っている限りは書術のレベル上げが捗る。


〈戦闘が終了しました〉


 袈裟斬りで枝を数本まとめて折ったのを最後にアイビートレントンは黒い靄となって消えていった。

 これでこの階層のトレントン系への心配は杞憂に終わった。ただ、トレントン自体のVITが高いようで硬魔を使って戦うと時間がかかるため基本はスルーしていく方針が良いだろう。

 それにトレントンの素材なら森林の街で供給が足りており、大して金にならないので積極的に狩る必要もない。

 だったら、ポーションの材料となるカラープラントを狩った方が金になるのだが、やつらを狩るには広範囲魔術が必要になり、結局私では割に合わない狩りになってしまう。

 なので金策をするなら動物や虫型の魔物の方が効率が良い。特にシルクスパイダーの糸などは装備の材料としてもそれなりの値段で買取が行われている。

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