第210話 大地の塔 その25

〈戦闘が終了しました〉


 腹以外の鱗を断ち切ったおかげで爆風に仰がれることになったが瞬時に展開したシールドで防ぎダメージを負うことはなかった。ただ、空中でバランスを崩し危うく地面に頭から衝突しそうになったがどうにか体勢を整え無事に着地することができた。

 これでリアクティブスネークとの戦闘は一見落着だ。結果的にはヤツの首を切断することで即死判定を与えて倒したが想像以上の時間が取られてしまった。


 今の時刻は16時30なのでこの戦闘が始まって大体30分経ったところだ。40階層のフロアボスであるアーマーボア戦と比べてもリアクティブスネークとの戦闘は想像以上に時間がかかっている。戦闘を振り返ってみるとやはり攻撃手段が不足していたことが主な原因だろう。〈白黒〉のおかげもあり火力は問題なかったからな。それに守備の面でも術理を使えば対等以上に戦えていた。


 光魔術にも闇魔術にも攻撃系のアーツがないのが悔やまれる。こうなれば次回のオリジナルスキルの作成の際には遠距離攻撃手段を確保することを優先した方が良いかもしれない。前までは探知系のスキルを創ろうかと考えていたのだがこちらの方が優先度は高そうだ。


「次のオリジナルスキルも大分先の話だろうけどな」


 自分のレベルを思い出し種族レベルが100になるのは最低でも後20レベル必要だとため息を吐く。このダンジョンでもレベルは大分上がっているがリアクティブスネーク戦を終えた身としては、雑魚共は良いとしてもフロアボスは一筋縄ではいかないことが良く分かった。まあ、レベル上げをするなら雑魚を狩るのが一番速いのでフロアボスと戦うことは少ないだろうが。


 それはそうとドロップアイテムの確認だが今回は外れだった。いつも通りの乱数で逆に安心するがフロアボスのドロップアイテムくらいはレア枠を排出してくれてもいいのだがな。ヤツのドロップアイテムは〈リアクティブスネークの鱗〉と言うアイテムで魔力を込めると衝撃によって破裂する鱗が1枚だけだ。あれだけ巨大な魔物から鱗1枚とはなめているとしか言いようがないがそれでも1万バースは確実に超えていた気がするのでよしとする。


 この階層に上がって来るプレイヤーはまだ少ないはずなので生産職のプレイヤーに売れば冒険者ギルドよりは高く買い取ってもらえるだろう。私としてはコイツのドロップアイテムを使って装備を作るのもありだと思うが集めるのも大変だし、鎧や甲冑と言った動きづらい恰好は苦手なので私が使うことはないだろう。


 さて、やることは終えたので早速次の階層に進むことにする。次からは51階層だ。49階層よりも魔物は格段に強くなるだろうから気を引き締めないといけないな。魔法陣の上に乗り毎度の如く閃光浴びれば直ぐに転移が完了して森の中に跳ばされる。周囲を見た感じ、樹の太さや大きさが一回りほど大きくなっている。それとホーンラビットが普通にアクティブな魔物になっているのでここで棒立ちしているわけにはいかなさそうだ。


 迷宮の羅針盤を取り出し起動すれば針が一方向を指したのでその方角に向かって歩み始める。今回は50階層代に入って初めてのモブ狩りとなるのでどれ程の強さになっているか確認する意味も込めてトレインはしないで歩いて探索を開始した。

 

 まずはホーンラビットからだ。腰から硬魔を抜き取り中段で構える。導魔はリアクティブスネークとの戦闘で鱗を切断した代償に爆発に巻き込まれて目に見える範囲で耐久値を削られてしまったためしばしは封印することにした。

 硬魔を構えたまま腰を落とし、一拍置いたのちに縮地を使い加速。一瞬でホーンラビットとの距離を詰めれば突きの構えに持ち替えて死突を使いホーンラビットの脳天目掛け突き出す。しかし、ヤツは横に跳ぶことでそれを回避する。


 バフは掛かっているが〈白黒〉を発動させていない状態なら私のAGIも大したものではないので俊敏性が勝るホーンラビットに後れを取るのは納得だ。だから、私は横に回避したホーンラビットを追撃するために待機させていたパラライズを行使する。

 私の左手に黒色の魔術陣が現れ紫電が走る。それは狙いたがわずホーンラビットに命中し麻痺の状態異常の付与に成功する。


「バフはまだ入る相手か。油断をするつもりはないがこの階層でもトレインは通用しそうだな」


 この階雄でもトレインで金策ができると分かり多少安堵をするが今は戦闘中なので痙攣しているホーンラビットの眉間目掛けて今度こそ死突を放つ。硬魔に僅かな抵抗を感じた後にホーンラビットの頭を砕き脳内に侵入し、脳を蹂躙する。

 本当に頭の中に脳みそがあるのか調べたいとは思わないがほとんど即死判定になっているので魔物にとっては重要な部位であることは間違いないだろう。死突を喰らったホーンラビットはビクッビクッと数回ほど体を揺らしHPバーが砕けた。


〈戦闘が終了しました〉


 〈白黒〉を使わなくてもホーンラビットやラッシュボアと言った生物系の魔物は弱点を突くことで一撃で倒せるようになったのは成長だな。混戦において一体の相手に手間取っていると横やりを入れられることも少なくないので今後も確殺の技術を高めていきたいものだ。

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