第208話 VS リアクティブスネーク その3

 さて、これで準備は完了だ。樹を伐採すること150本以上。やっとこの作業も終わりを迎えた。場所が空けてからはリアクティブスネークも樹から降り地を這うように行動していたが近くに樹があるとそれに巻き付いてしまうので結局は広範囲の樹を伐採するはめになった。

 おかげでヤツも樹に巻き付くということはなく地面におりて蜷局を巻いている。地面に降りてからは樹から樹に飛び移るときに鱗を落とす攻撃を行わなくなった。だが、ヤツとの距離を保っていると相変わらず尻尾を振り、鱗を飛ばす攻撃は続いている。


「待たせて悪かったな。今からは思う存分相手してやるぞ」


 かれこれ樹の伐採に数十分は掛かっている。その間はヤツも直接攻撃を仕掛けてくることはほとんどなかったのでここからが本番だ。私が硬魔を持って構えるとヤツは舌を出し威嚇を始めた。


「まずは小手調べといこう」


 最初に行うことはヤツの攻撃パターンを解析することだ。なので、ヤツに向かって駆けだす。すると、尻尾による薙ぎ払い攻撃が来るがそれを空中に跳ぶことで回避しさらにヤツとの距離を詰めていく。ヤツとの距離を詰めたところで先ほど避けた尻尾がもう一度攻撃を仕掛けてくる。それも先ほどまでの薙ぎ払いではなく叩きつけだ。


 今まで見せてこなかった攻撃だったのでは私は大きく横に回避することでヤツとの距離を取る。そして、その判断は正しかった。叩きつけられた尻尾からは鱗が剥がれ周辺に飛び散りそれから地面に触れると爆発を起こした。また、面倒くさい攻撃を持っていることが判明してしまった。距離を取れば爆発する鱗での攻撃、近づけば尻尾による攻撃とついでと言わんばかりに鱗をまき散らす。例え、それらを掻い潜り近づけたとしてもヤツに攻撃すればリアクティブアーマーにより相殺される。


「......私が攻撃をするには反撃の一撃を決めるのが最善手か」


 他にもやりようがあるかもしれないが早期に戦いを終えるならばヤツの攻撃を逆手に取る必要がある。そのためにはさらにヤツの攻撃パターンを知らなければならない。ヤツはまだ鱗による攻撃と尻尾による攻撃しか見せていないのだ。他にも攻撃の方法はあってしかるべきだろう。


 今までの感覚からして魔導を使ってくる気配はないがそれこそがヤツの切り札かもしれない。逆に魔導など使わずにただひたすらに己の肉体を使って戦うのかもしれない。戦いにおいて先に相手を理解した方が勝利を掴む。もちろん自身のことは十全に理解していることが前提条件だがそこは当たり前のことなので今は考えなくてよいだろう。

 今私ができることはそれだけだ。ただひたすらにヤツに攻撃を仕掛けその反応を見る。そこからヤツが取れる行動を推測し私の勝利に繋げる。だが、ヤツの能力を暴いても決して私のできることはバレてはならない。


 私がヤツに届く一撃を持っていることが知られればヤツは私に警戒心を抱き、様子を窺うようになって攻撃回数も減ってしまう可能性があるからだ。なので、今はヤツが優位であるかのように見せ、見かけ上はヤツの盤面で戦う。




「これだ。この隙を狙うのが最大限の威力を発揮する」


 リアクティブスネークに多様な攻撃を仕掛けることでその反応を見て勝利へのカギを探していたのだがついに見つけることができた。ヤツの攻撃を上空に逃げ、ヤツに対してデバフを掛けた時に何が原因か分からないが体全体をバネのようにして私に噛みついてきたのだ。今まではヤツとの距離を取っていれば鱗を飛ばすくらいしか攻撃方法がなかったのにも関わらずここでヤツ自ら行動に出てきたのは何か条件があったのだろう。


 攻撃は〈白黒〉によって超強化されているため簡単に回避することができたがその時、私に噛みつこうと跳んだヤツの腹が無防備になっていた。ヤツの腹は装甲がないため攻撃してもリアクティブアーマーとしての役割を果たしていない。この情報は一刀が寄こした情報にも記載されていたがどうにも腹を見せる行動をしてこなかったのでてっきり弱点を晒すことなどしないのだと思っていたがそんなことはなかったようだ。


 勝利への道筋が決まったのなら後は簡単。なぜ今の行動を取ったのかを調べもう一度今の攻撃をさせる。今までの自分の行動から何がトリガーだったのかを考える。先ほどはバルネラブルを行使してレジストされてから噛みつき攻撃に移行された。だが、バルネラブルなど幾度となく行使しているし、その全てがレジストされている。なので、デバフの行使が関係している可能性は低い。


 そうなるとデバフは関係していないことになる。ならば、リアクティブスネークとの距離だろうか、はたまた戦闘時間だろうか。いくつも可能性が生じるが考えていても仕方がないので全て試してみることにする。




 ......結果から言おう。条件は全く分からなかった。いや、調べようと思えばいくらでも条件を探ることはできる。だが、それを全て調べていてはいくら時間が掛かるか分かったものではない。それにヤツに触れることすらできないためMPの回収もできない今、これ以上時間を掛けるのは負けに等しい。


 今も小出しに魔術を使って〈白黒〉の効果を延命させているがMP切れも近づいてきている。だが、何故かは分からないがヤツはあれからも2度噛みつき攻撃をしてきた。その時は感覚が掴めていなかったので隙を突いて攻撃することは叶わなかったが今ならいける。なので、私が噛みつき攻撃を誘発するのではなくヤツ自らが攻撃してきた隙を突く方針を変えることにした。


 ならばと、私は膝を落とし導魔に手を添えながら意識を深く集中させるのだった。

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