第70話 護衛依頼 その1
「分かってんじゃねえか! これでオレたちも採掘ができるってわけだ。ツルハシ振らなきゃ今日は始まんねえってな!! ガハハハッハ」
うん。分かった。この人たちもかなり頭のネジが飛んでいるのかも。これは採掘をするのが人生の生きがいになっているのだな。まあ、私も人のことは言えない立場なので何も言わないが。
「おっと、すまねえ。今日もツルハシ振れると思うとうれしくてつい、な。」
「それは良かったですね。私もミスリルがもらえるなら護衛に励まさせてもらいますよ。ああ、申し遅れました。私の名前はゼロといいます。今日はよろしくお願いしますね」
「おう、よろしくな。ゼロ。ちなみに俺の名前はガロンってんだ。鉱夫組合の組合長をやってるんだぜ。鉱石が欲しくなったら是非鉱夫組合によってくれよな。一回くらいは安くしてやるぞ」
待て。また重要人物か? 主要キャラとしか会ってない気がするんだが気のせいか。それはいいとして、なんで組合長がここにいるんだよ。組織の長というものは普通現場に来ないだろ。だが、こういうところにも来るから部下にも慕われているのだろうか。
「早速だが中に入ろうぜ。オレたちが採掘をするのはこの鉱山の中層だ。ここは下層に行けば行くほど希少金属であるミスリルなんかが大量にとれるが今は下層にスケルトンの変異種である魔物が生まれてしまったみたいでな、最高位神官に討伐依頼を出してるからそれが終わるまでは中層までしか行けないんだぜ。
それにここでとれるミスリル以上の希少金属はほとんどを王都に納品しなきゃならねえから、〈パール〉にはミスリルはほとんど出回らねえんだ」
そうだったのか。それならこの護衛を成功させればもらえるミスリルは現状では最高の素材になる。これでまた装備が更新できるが、私は防具にミスリルを使うことは少ないだろうからとりあえずミスリルを使ってゴルジアナさんにアクセサリーを作ってもらうとしよう。それでミスリルが余れば残りはロードにやるのもいいな。
「ところでガロンさん、この鉱山は潜りモグラとスケルトンだけしか魔物は出現しないのですか?」
「ああ、そうだ。この鉱山には潜りモグラとスケルトン種しかいねえ。それに、さっきも言ったが下層に行けば行くほど出現する魔物の強さは急激に上がる。だが、安心しろよ、ゼロ。オレたちが今から行く中層はたまにスケルトンの上位種が出るが所詮はランクEだ。
オレたちの攻撃じゃああいつらを完全に破壊するまでには至らないが逆にあいつらの攻撃でもオレたちには対してダメージは与えられねえ。その間にゼロが襲い掛かってくる魔物を倒すってことだ。」
ぶっつけ本番になるがガロンさんたちに対してスケルトンがダメージを与えられないなら大丈夫だろう。問題はどのくらいの数の魔物がくるかだが、そこはなるようになるか。
・・・
・・
・
坑道を進むこと数時間が経過した。移動時間はやはり長かったが何度もスケルトンに襲撃を受けたので意外と忙しく体感ではそこまで時間が経っていないように感じる。
ガロンさんたちは毎日この距離を移動してると考えると尊敬する。私は早々に歩くのに飽きたぞ。まあ、飽きたからといって進まなければいけないのだから普通にガロンさんたちについていくわけだがな。
「よっし、到着だ! お前ら掘るぞ!! いいか、ひとかけらも残すんじゃねえぞ!!」
「「 分かってますぜ、親方!! 」」
「お前たちの筋肉は何のためにある!」
「「 鉱石を掘るために!! 」」
「お前たちの生きがいはなんだ!」
「「 ツルハシを振ることだ!! 」」
「そうだ! オレたちの人生はツルハシを振ることから始まりツルハシを振るって終わる! 行くぞおぉぉ 掘れえぇぇ!!」
戦争でも始まるのかな? すごい熱量だよ。ほんと、採掘に命かけてるのが伝わってくる。これはミスリルも期待していいかもしれないな。
「そういうことだからオレたちは採掘を始めるぜ。その間はオレたちの背中は任せたぞ、兄弟!!」
「ああ、守りは任せるんだな。兄弟たちには一切触れさせないさ」
さて、私もやるか。なんでガロンさんのことを兄弟と呼んでいるかだって? そんなの漢の友情というものさ。突っ込むのは野暮ってもんよ。
兄弟たちが鉱石を掘っている場所は広場のようになっておりそれなりに広い空間だ。しかし、この空間は他の採掘場所とつながる坑道が数多くありそこからスケルトンの集団がやってくる。上層までは3体ほどの集団で行動していたスケルトンもここでは10体ほどの群れで行動している。スケルトンは生者に寄って来るアンデット特有の性質があるためこの人数でも一か所に留まっていればそれはもう数えるのが億劫になる数のスケルトンがやってくるわけだ。
「ターンアンデット」
そして、まんまとここに来たスケルトンを私が消滅させていくというループが完成している。こんなに簡単でいいのかと思うほどスケルトンのHPバーが削れていくので笑いが止まらない。
私が使っているターンアンデットは不死属性に対して特攻力のあるアーツなので効果はバツグン。それにターンアンデットは範囲攻撃アーツなので装備スキルの効果でさらに範囲が拡大され一度で5体は範囲内に入ってくれる。
残念な点を挙げるとするならスケルトンをいくら倒してもレベルが上がる気がしないということだろう。上位種のスケルトンを除けばどのスケルトンがLV10だ。ついでに兄弟たちが掘り起こす潜りモグラもLV14と他の魔物よりは高いが私の今のレベルからするともらえる経験値は少ない方だからな。
まあ、いい。これも塵積も、塵積もっと。
すみません。スケルトンのおかわりください!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます