第69話 鉱山
街に戻ったはいいがそろそろ24時を回りそうだ。なぜかって? 街に戻っている最中にロックタートルが私の目の前にリポップするのだ。こんなの討伐するしかないじゃないか。目の前に経験値が落ちているのだぞ。
そのおかげでこんな時間になってしまったわけだが......。まあ、過ぎてしまったものはしょうがないよな。RPGでもフィールドにいるエネミーを全て倒してから次のエリアに行くような性分なのだ。もちろんフィールドも完全探索してマップを100%にしないと次に進みたくないと思っている側の人種だ。なので、私の視界に入ったものはみな等しく経験値に変換してやらんとな。
そんなこんなで東門をくぐり冒険者ギルドに向かっているわけだが、プレイヤーの姿をちょこちょこ見かけるようになってきた。プレイヤーが増えて街が活発になるのはいいことだが狩場の独占ができなくなるのは厳しいな。明日は鉱山に潜り、潜りモグラとスケルトンを狩ろうと考えているから他のプレイヤーと狩場がかぶることになりそうだ。スケルトンはこの街周辺では一番弱い魔物だから肩慣らしに鉱山に来るプレイヤーは多いだろうしな。
あわよくば、ギルドの受付嬢が鉱山以外の狩場に誘導してくれることを祈ろう。私も最初に提案されたようにパーティーを組んでいればゴーレム系の討伐を依頼されるだろうし狩場がかぶるのはソロのプレイヤーとだけになればいいのだが。そんなことを言っても結局は、ゴーレムの魔石も集めなければならないから狩場の取り合いはいずれ必ず起きるだろうがな。
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依頼の報告をしたので今日はこれでログアウトする予定だ。報酬金は1体にかけられている金額がラッシュボアより低く700バースだったが、その分、討伐した数が多いからそれなりの金額になった。
それに、報酬金だけでなくドロップアイテムも相当数入手した。魔石はぴったり10個しか手に入れることはできなかった。しかし、〈ロックタートルの涙〉という錬金術に使えるアイテムがかなりドロップした。これは他のアイテムのドロップ数と比較すると魔石の次に少ないのでレア枠だろう。
β版では世話になった錬金術師のゾルというプレイヤーがいるのであいつに何かアイテムを作ってもらうか。あいつもまとまった素材があればアイテムを作りやすいだろうしな。
生産職といえばだがミサキさんからフレンドメールが来ていたんだった。内容は生産職仲間を鉱山の街までキャリーして欲しいという内容だ。生産職だけではイーコスウルフを倒すのは難しいだろうし、彼らがこの街にこなければ不知火の装備は更新できないから、手伝うのは当然だ。問題はいつにするのかだが私はいつでも暇なのでミサキさんたちの都合がいい日で大丈夫だと返信しておいた。都合が合えばレオやロードたちも手伝ってくれるだろう。私一人では同時に連れて行けるのは2人くらいが限界なので是非ともレオたちにも来て欲しいところだ。
さて、話も一段落したことだし落ちるとしますか。明日も元気に魔石集めに精を出しましょうっと。
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〈ログインしました〉
少し冷たい風が私の肌をなでる。かなり早くログインしてしまったようだ。今の時間は4時前。露店も開いておらず店主が店の準備をしている光景が目に映る。
昨日のうちに冒険者ギルドで潜りモグラの討伐依頼を受けておいたので早速鉱山に向かう。鉱山に狩りに行くのでもう一つの依頼もスケルトンの討伐依頼を受けたかったのだが一度受けた依頼は達成されるまで続くので新しく依頼を受けることができなかったのだ。
違約金を払えば依頼を解除できる制度にしてくれれば楽なのだが、仕様なら仕方がない。それに、スケルトンを1体倒したときの報酬金も100バースとかなり少ないのも依頼を受けなかったのも理由だ。塵も積もれば......とは言うが他にも依頼を受ける予定が山積みなので多少は目を瞑ろうではないか。
鉱山の街から歩くこと1時間、やっと鉱山に着くことができた。ここに来るまでに魔物と出会うことはなかったが徒歩で1時間は長い。魔物がいれば息抜きに戯れることができるのだが何もない場所をただひたすらに歩くのはつらすぎる。鉱夫を運ぶための馬車も出ているようだが私が乗り場に着く少し前に出発してしまったようだ。なんとも運が悪い。
「すまねえ、もしかしてお前さんは神官か?」
鉱山に入ろうとしたところでつるはしを持ったドワーフが話しかけてきた。かっこからして鉱夫だろうがなにかあったのだろうか。一緒に鉱石掘りませんか? とかだったら即答で断らせてもらうぞ。
「そうですが、どうかしましたか?」
「それが護衛に雇っていた冒険者が急遽これなくなってしまってな。流石のオレたちでも魔物を相手しながら鉱石を掘るなんてことはできねえから今日は仕事がなくなっちまうんだよ。そこでお前さんが来たってわけだ。お前さんに護衛してもらえればオレたちも採掘ができるってことだなんだが......」
「そうだったんですね。ですが私は一人なので皆さんを護衛することはできませんよ。なので私ではなく他の方に頼む方がいいと思います」
どう見てもあちらの人数は10名は超えている。この数を護衛するのは無理がある。私の手は2本しかないのだから他を当たってもらおう。
「そこを何とか頼めないか? オレたちが掘る箇所は比較的難易度の低い場所だし出てくる魔物もそこまで数が多くないんだよ。それにお前さんは神官だからスケルトンなんて相手にならないだろ?」
確かにスケルトンを簡単に倒せそうなアーツはあるがさすがに瞬殺はできないだろう。それに私の目的は潜りモグラの魔石だから鉱石採取には興味がないんだ。すまぬな鉱夫よ。
「よし!! 分かった。それじゃあ、護衛の報酬は今日取れるミスリルの半分でどうだ? いつもインゴットを作れる量は採取できているから悪くねえ条件じゃないか? なあ?」
「ミスリルですか?」
ミスリルとはあれか? ファンタジーには定番の魔力が通りやすいとか言われる鉱石のことか?
「そう。ミスリルだ。魔力伝導性が極めて高く高位魔術士も使っている魔術溶媒として希少な金属だ。いつも護衛を受け持っている奴らには護衛料として採掘したミスリルの4分の1を渡しているがお前さんが護衛をしてくれるならその倍を報酬金にするんだ。これなら好条件だろ?」
「はぁ、仕方ないですね。こういうのは今回だけですからね。まったく、護衛するからにはたくさんミスリルを採掘してくださいよ」
か、勘違いしないでよね。べ、別にミスリルに惹かれたわけじゃないんだから!!
......くそきもいな。最悪な脳内再生をしてしまった。ツン要素などは私にはいらんからミスリルをくれ。目的が変わってるって? いいんだよ。予定は未定ってよく言うだろ。
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