第54話 装備依頼

 確認作業が終了したのでミサキさんの所に行って追加で装備の依頼をしてからログアウトするとしよう。

 ミサキさんは生産職ギルドで作業をしているとのことなので私がギルドに向かうことにした。


 移動すること数十分で生産職ギルドに到着する。

 教会から生産職ギルドまでが意外と遠いのが難点だ。街の中にも現代で言うタクシーと同じ役割をする馬車があるのだが、これが一度乗るだけで一万バースとかなりシャレにならない値段がする。

 魔物を倒して懐が多少は温かくなったが、この馬車に乗るくらいなら少し貯めて装備やスキルの書を買った方が絶対にマシだ。


「こっちよ、ゼロ」


 生産職ギルドに入るとロビーでくつろいでいるミサキさんから声を掛けられた。探す手間が省けるので向こうから声を掛けてくれるのは非常に助かる。

 ミサキさんの目の前に座り、さて、商談開始だ。


「今先で申し訳ありませんがフレンドメールでも記載した通り追加装備の制作をお願いします」

「本当、直ぐに素材を集めてきたのね。まあ、いいわ。それと、さっきゼロから貰ったアイテムでとりあえず腰の装備は完成したから先に渡しておくわ。金額の方はいつも通り素材払いということで済ませて貰ったわよ。そうね......貰った残りの素材の量からしてあと2つは作れるわね。どうする?」


 あと2つは装備が作れるのか。とりあえず今貰った装備を見てから決めるとしよう。


〈神官の礼服〉 一般級 ☆6

INT+3

一見動きづらそうに見えるが実は機能的


 もう安定して☆6の装備を作れるようになったのか。

 しっかり上昇値もINTに割り振ってくれているし、流石の腕前だ。

 

「そういえば前から気になっていたんですが、魔物の素材使っているのになぜ装備が毛皮にならないんですか?」


 神官の礼服はラッシュボアの毛皮を使っているのに触り心地がもはやポリエステルとかと同じだ。また、見た目も毛皮とは到底言えない。


「ああ、それね。私も最初の時は驚いたけどそれもスキルの恩恵よ。あなたが着るローブとか服系は革服だと似合わないと思ったから変えさせてもらったけどダメだったかしら?」

「いえいえ、こちらの方がしっくりくるので感謝していますよ。それで新しい装備の話ですがラッシュボアとファングウルフの素材だとどちらの方がいい装備を作れますかね?」


 素材の違いについては良く分からない。ただ、等級は同じだなので、できる装備も同じ強さなのかもしれない。


「うーん、そうね。素材の元になった魔物の習性や特性によってパラメータの振り分けが少し簡単になるのよね。でも、あなたは全部INTに振り分けた方がいいでしょうからどちらでも構わないわ」


 そうだったのか。だとするとラッシュボアはSTRやVITでファングウルフはAGIなどに振り分け易いのか。だが、ミサキさんの言う通り装備の上昇値は全部INTが良い。

 それにAGIとかを上昇させるならSPを使って振り分けたい。疾風迅雷などの称号の効果だと基本は素のパラメータで算出されているようだからな。


「そうだったのですか。とりあえず持っている素材を全部渡して置くのでそれで残りの装備をお願いします」

「分かったわ。それで完成は明日の朝までで大丈夫かしら?」

「6時位には取りに来るのでそれまでにお願いします」


 返答をしながらミサキさんにトレードでドロップアイテムを全て渡す。


「ほんと、無茶言うわ。今夜は徹夜コースじゃない。それに、またやったわね。これだけ素材があれば問題ないわ。むしろ多すぎるくらいよ。......そうね、これなら装備代を引いても大体6万バースはおつりが出るわ」


 インベントリに6万バース入金されているのを確認する。

 意外と換金値段が高いな。だが、ミサキさんのことだから素材が出回っていない今のうちに装備を量産して売り捌くのだろう。

 

「今更だけど注文の確認をするわ。今回作製するのは武器とアクセサリー以外の装備ね。それで装備の上昇値は全てINTに振り分ける。でも、最初に依頼されたアクセサリーはまだ先になるわ。今作ると等級が最低になりそうなのよね。これで大丈夫かしら?」

「それでお願いします。ところでゴルジアナさんは作業中ですかね?」


 注文内容に間違いはないので明日を待つだけだ。

 それと生産職ギルドにはもう一人のフレンドにアクセサリーの依頼をしようと思ってきたのだが、未だに連絡が来ていない。


「アナは今作業部屋に籠っているわ。でも、そろそろ作業が終わって降りてくるはずよ」


 やはり作業中だったか。

 ゴルジアナさんはβの時に細工師でアクセサリーを作ってもらっていたので今回も依頼しようと思っている。


「ほら。噂をすればなんとやら。アナが降りてきたわ」


 ミサキさんの言った通り作業部屋に続く階段から筋骨隆々の大男が降りてきた。


「あら? ゼロちゃんじゃない。先のフレンドメール見たわよ~。装備の依頼よね。私に任せてちょうだい」

「ゴルジアナさん。お久しぶりですね。早速ですがアクセサリー制作の依頼をお願いします」

「もうやだ~。アナちゃんって呼んでって言ってるでしょ」


 ゴルジアナさん、痛いのですが。

 そんなに叩かなくてもいいと思うが本人は全く自覚がないのだから困る。とりあえず苦笑を返し、今持っている素材を渡す。

 

 アクセサリーは防具とは違いピアスや指輪などの装身具が多い。

 そしてアクセサリーの特徴としてパラメータの上昇か特殊効果を付けることができる。

 要するに武器や防具と同じパラメータを上昇させる効果を付けるかMP消費を減少させるなどの特殊効果にするか選べるのだ。


 もちろん私が欲しいのはMP効率を上げる効果を持ったアクセサリーだが、狙って出来るのは相当な腕とレベルが必要になる。


「驚いたわ~。まだこのアイテムは市場に出てないじゃない。これならいいもの作れるわ。でもこれだと、他のアクセサリーが一段性能が下がっちゃうわね。それでもいいかしら?」

「大丈夫です。できれば効果の方をMP関連のものにしてもらえると助かります」

「了解よ。明日を楽しみに待ってなさいね。それにしても、今日のゼロちゃんは一段と男らしいわね~。ん~ん、男の香りがするわ」


 その後もAWOについて情報共有をし、いい時間になったので私はログアウトすることにした。

 それにしても今日のゴルジアナさんはグイグイ来たな。目つきが肉食獣のようだった。それに手つきも......。

 もしかして師匠の弟子になれてやる気が出ているからか? まさか弟子になることでこんなデメリットがあるとは思いもしなかった。

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