第55話 戦闘準備

 ログインからかなり時間が経過し、今は待ち合わせ場所の広場に向かっている。

 今まで何をしていたかって? もちろんアーツの検証だ。しかし、正直に言ってここら辺の魔物では検証できない程強くなってしまった。

 素で『あれ? 僕何かしちゃいました?』ができる程で力量差が顕わになっている。それでも大部分は検証できたのでよしとしよう。


 まずはリジェネーション。効果は80秒間持続して最大でHPを1割回復させるのだと思う。

 サンプルが私と言う物理攻撃で敵を倒す神官によって瀕死の状態に追い詰められた魔物なので確かだろう。


 次のシールドだが肝心の耐久力は分からなかった。ただ、VITのバフを掛ける前と後では耐えた攻撃の回数が変化したのでVITにより耐久値が算出されていると推測できる。

 

 次のブラインドは有効だがヘイトがなくなる代わりになりふり構わず暴れまくるので逆に戦いにくくなってしまった。このアーツは状況により使い分けるのがいいだろう。


 サイレントは魔物に使うアーツではなかった。逆に音がなくなり、攻撃のタイミングが分かりづらくなるだけだったからだ。

 それにもしかしたらファングウルフの仲間呼びには効果があるかもと思ったがサイレントの効果時間が短く、仲間呼びには殆ど予備動作がないので、ここでもサイレントの有用性が示せなかった。

 だが、対人では輝くと信じている。


 ドッペルゲンガー。これは死にアーツだった。以上。......確かにもう一人の私が出てきた。

 それはもう感動したさ。もしかしたらアーツを2重で使えるかもしれない、と。

 だが、期待は簡単に打ち破られましたと。

 まず動かない。そして効果時間が10秒と短すぎる。さらには攻撃されても透過する。

 もちろんアーツを発動することもなく攻撃もしないので、ただの木偶の坊だ。そのうち有効な活用法を見つけたいものだ。

 

 しかし、朗報もある。それは流水之舞が想像以上に使いやすかったことだ。

 ラッシュボアで実験したがどうやらこの称号はパリィ系の判定を少し緩くするようだ。以前に比べ攻撃を逸らすのがだいぶ楽になった。


 最後に白黒の効果だがこれは上昇値が+1された。前回と同じ上昇値なので次のレベルアップでも同じになると思われる。

 

 そんなことを考えていると直ぐに待ち合わせ場所に到着した。どうやら最後は私だったようで既に全員が集合している。




 早速レベル上げと言うことで南エリアに到着した。

 検証している時に気づいたことだが、どうやらファングウルフの群れの数が確実に増えている。最初は2,3体の群れだったが今では5~7体の群れで行動しているのをよく見かける。


「これやべぇんじゃねえか? この状況はまたハイ・ファングウルフを呼ばれちまう気がするぜ」

「確かに危険ですな。一旦引きますか? この時間帯は混んでいると思いますがラッシュボアなら危なげなく回せると思いますぞ」


 レオやロードの言う通りこの数は危険だ。

 私だけならレベル差が広いので大丈夫だろうがパーティ戦だと何が起こるかわからない。


「いや、この数でも戦っておいた方がいいぞ。俺が調べた情報によるとフィールドボスは狼系の魔物で配下にファングウルフを相当数引き連れているみたいだからな」

「そういうことなら早速始めようよ。僕はいつでも行けるよ」

「おう。俺も早く攻撃に慣れたいから釣りを頼む」


 聖と不知火はこの数と戦うことに賛成のようだ。それなら私も反論しようがないので戦いの準備をする。




「あれ? ゼロ、武器変わってない?」

「確かに変わっているな。だが、そんな武器売っていたか?」


 やっと聖が私の武器が変わっていることに気づいた。もっと早く気づいてくれても良かったのだがな。私だって自慢したかったのだ。

 武器を貰った経緯を話し、それでリーンと言う人物の弟子になったことを報告する。ついでに師匠を教えてくれたルドルフさんのことも触れておく。


「へ~、それでその武器を貰ったんだね。でも序盤から強すぎない、それ? 韋駄天の靴と言い序盤に出る装備じゃないよね」

「私もそう思うが、せっかく貰えたのだ。ありがたく使わせてもらうさ」

「それがいいだろう。俺もゼロから貰った装備を使っているからな。それにしてもレベルが7も上がったのか。戦闘に負けたのにその上昇は恐ろしいな」

「ですがそれだけ高レベルならこの戦闘も何とかなりそうですぞ。〈デュオマジック ランス赤・青〉」


〈戦闘が終了しました〉


 ダメだこれは。既に戦闘が開始して2時間は経過しているが未だにレベルが上がらない。

 格下相手だと経験値が入らないのか? アーツもずっと垂れ流しているのだがこちらもレベルが上がらないとは。

 明日までに1レベルくらいは上がっているといいのだが。

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