第48話 後継者候補
「......聖魔典管理神官ですか? それに長い付き合いになると言うことは何か光魔術について教えていただけるのでしょうか?」
これは思ったより凄いことになった。
聖魔典管理神官は名称からして聖魔典なる物を管理する神官のことを言うのだろうが、その中でも第三席と言うのだから相当な実力者なのは間違いない。
それにリーンさんは長い付き合いになると言ったのだ。もしかすると私に何かスキルかアーツを伝授してくれるのかもしれない。
「そんなに連続で質問されても困りますが、まあ、いいでしょう。さて、最初の質問ですが、聖魔典管理神官とは何かでしたね?」
リーンさんの言葉に頷きを返し続きを待つ。
「それはその名の通り聖典と魔典を管理する神官のことを言います。聖典、魔典とはかつて大神ストリュート様を信仰していた神官が、その御業を体現しようとして作ったとされるこの世界に10冊しかない書物のことを言います。ところでゼロさん、この世界にある光魔術、闇魔術とは神々とその眷属が行使する魔法の真似ごとなのですが知っていましたか? ああ、もちろん他の魔術についても同様です。まあ、それはさておき、光魔術、闇魔術は系統が分けられているのはご存じですか?」
「系統ですか? すみませんが私には光なら回復と強化、闇なら状態異常と弱体化くらいしか分かりません。しかし、聖典と魔典が全部で10冊あると言うことはそれぞれ5つずつ系統に分かれているのではないでしょうか」
「ルドルフが見込んだだけはありますね。ゼロさんが言った通りそれぞれ光と闇は5つの系統に分かれています。光魔術は強属・治癒・守護・強化・再生。闇魔術は弱属・吸収・呪い・弱化・死。そしてこれらに該当する聖典と魔典を管理するのが我々なのです。ここまでは大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。続きをお願いします」
なるほどな。今私が使えるアーツは光魔術では強化、治癒、強属。闇魔術では弱化、呪い、弱属になるのだろう。
そう言えば光魔術のアーツにマナコンバージョンがあったが、あれは治癒には分類されそうにないので守護か再生に分類されるのか。
とりあえずマナコンバージョンの話は置いておくとして残りの守護、再生、吸収、死はまだ出てきていない。特に再生と死は如何にも後半で覚えることになりそうなアーツだ。
「それでは次の長い付き合いになるのかと言う質問についてですが......今は何とも言えませんね。順当にいけばゼロさんを私の弟子にしたいと思っています。と言うのも私たち聖魔典管理神官は聖典と魔典を管理していますが、第一席と第七席の聖典を管理しているくそじじい共がーー」
「リーン様、あの御仁たちをそのような言い方をしてはいけませんぞ」
「......大先輩が高齢なためその地位を降りることになったのです。そのため、その聖典を管理する者が必要になり、こうして私がその後継者を探しているわけですよ」
「聖典の後継者ですか。それは興味深いですね。それにリーンさんに師事してもらえるなら是非とも立候補したいですが、私は訪問者なので毎日この世界にいるわけではありません。それにリーンさんの弟子になるにも何か試練があるのですよね?」
聖典の管理者。名称からして私の琴線にバリバリ触れる。
それに私のゲーム脳がこのイベントは逃してはならないと訴えている。ここでリーンさんの弟子になれれば特殊なスキルとかユニークジョブが解放するに違いない。
「まず、訪問者であることはなにも問題ありません。聖魔典管理神官は飽くまでも聖典と魔典を管理する神官のことを言うだけなので特に任務はありませんから。ただし、拠点は宗教国にしてもらうことと毎月行われる定例会議に参加することが条件ですね。稀に私のように後継者探しを頼まれることもありますが、そうそうないでしょう。そして私の弟子になる条件ですが......ここではなんですから修練場に行きましょうか」
修練場。そこは武道場のような場所だった。
入った瞬間に男の熱気に包まれ、さらに汗の臭いが鼻孔を刺激する。そして目に映る景色は神官服を着た男たちが、体に色鮮やかなオーラを纏い互いに殴り合っている場所だった。......神官ってなんだっけ?
「さて、ゼロさんもやってみましょうか」
「いやいや、ちょっと待ってください! なんで神官同士で殴り合ってるんですか!!」
「はて? ゼロさんこそ何を言っているのですか? 戦闘において神官という支援職を最初に狙わない愚か者など知性のない魔物くらいしかいませんよ」
確かにその通りだが何か納得がいかない。
私が想像している神官は後方支援しかしないはずなのだけど......。
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