第42話 マグバースの地理と〈世界を求めて〉 その1
唐突だがAWOの世界〈マグバース〉における地理について説明したいと思う。と言うのもリーンさんがフィクト中央王国ではなくリジョル宗教国の住民だと気づいたからだ。
まず初めにこの世界は5つの大陸からできている。
その1つが私が今いる中央王国が存在する中央大陸だ。
中央大陸は世界の中央に存在する。そして、中央大陸の東側に精霊大陸、西側に獣大陸、南側に魔大陸、北側に旧大陸とそれぞれ存在している。
各大陸の詳細については多くは語らないが簡単に説明すると中央大陸は最初にプレイヤーが降り立つ大陸であり、中央王国、宗教国、魔術王国、技術帝国、連合国の5つの国で構成されている。
次に精霊大陸は妖精人族が多く存在しており、エルフやドワーフがそれぞれ国を作っている。
これは噂だが世界樹という世界最大級の大樹があるらしい。そして七神と呼ばれる神々が祝福した祠があるとかないとか。
獣大陸は獣人族が多く、国は獣帝国の1つしかない。しかし、各地に集落というものが存在しており、そこには犬人、猫人はもちろん兎人、狐人といったプレイヤーが種族選択の際には選べない種族もいるようだ。
もしかしたらレオが探している狼の獣人についてなにか分かるかもしれない。
魔大陸は獣大陸と同様に帝国しかない。
そして魔大陸の住民はその殆どが圧倒的な戦闘力を有している。
これは魔大陸が通称ダンジョン大陸とも呼ばれており、その名の通り大陸の各地にダンジョンが存在しているからだ。
ダンジョンは階層ごとに魔物が徘徊していて、特定の階層にはボスモンスターがその階層を守護しており、そのボスモンスターを倒すことで特別なアイテムが貰える。
また、ダンジョンは洞窟や城などの種類があり、その中でも塔のダンジョンは世界中で7つしかない少し特別なダンジョンなんだとか。
最後に旧大陸だが旧大陸はかつて人類が国家を形成しており、文明が大いに発展していたと聞くが現在では魔物に占拠されていて、旧大陸に向かった人は帰ってこないと言われるほどに危険な場所だ。
なんでも遙か昔、旧大陸に突如として異界の悪魔が出現して虐殺の限りを尽くしたのだとか。
その中でも力ある7体の悪魔が魔物を率いて当時の最大勢力だった国家を瞬く間に壊滅させたという。だが、そんなもので人類も諦めるわけもなく古の術である英雄召喚という禁術を使い悪魔を滅ぼす7人の英雄を召喚したが......。
ここから先は伝承が少なく、その後人類がどうなったのか定かではない。
ただ、旧大陸には現在人類は存在しておらず、当時旧大陸から中央大陸に逃げてきた人々の話では悪魔を4体だけ封印することはできたが召喚した英雄も何人かが亡くなり、英雄たちが旧大陸の住民たちを魔法を使い中央大陸に逃がしたという伝承がある。
そして、とある古代の冒険家、キングレイ=フォンスが世界を求めてと言う書物でこう語っている。
『我々の祖先が暮らしていた旧大陸。しかし、今では魔物が蔓延る地獄となっている。
かつて私も若い頃にとある国の旧大陸奪還作戦に参加したことがある。
当時の私は冒険者ランクがXであり、私自身、人類最強と言っても過言ではないほどに自分の力に自信を持っていた。
それに私以外にもランクXの冒険者が3名もいたのだ。逆にこれだけの人材がいて負けるはずがないと私も、そしてこの作戦に同行していた誰もがそう信じて疑わなかった。
確かに旧大陸に辿り着くまでの海路は厳しく最低でも出現する海の魔物はランクA以上。時にはランクSSに該当するような魔物が出てくることもあったが、それでも私たちは何事もなく切り抜けることができた。
そして、辿り着いたのだ。かつて、我々の祖先が暮らし、そして逃げ出さなければならなくなった旧大陸に。
辿り着いた旧大陸。それは傍から見れば何の変哲もないただの大陸だった。
最初に私たちは拠点を作ることにした。
何事にも休憩を取れる場所がなければならず、そして有事の際の防衛にも拠点はなくてはならないものだからだ。
拠点作りも順調に進み、遂には旧大陸の調査が始まることになった。
私も大陸の調査に参加したかったが残念ながら私の能力は守りに優れているため拠点の防衛に回された。
今思い返せばあの時に拠点防衛の任を任されたのは私の生涯の中で一番の幸運だったのだろう。
調査が始まって数日が経った。
調査の結果、この大陸にもゴブリンやオークといった他の大陸にも多く生息するポピュラーな魔物が生息していた。
しかし、ここの魔素濃度が高いからなのだろう。そこらへんにいるような通常種のゴブリンでも討伐ランクAには到達している。
それでも私たちの敵ではなかった。この作戦にランクA程度の魔物に苦戦するような奴は一人としていないのだから。さらに言えばランクAでもゴブリンはゴブリンだ。
そして、順調にも調査は続いた。
この大陸は決して魔物のランクだけが高くなっているわけではなく、そこらへんに生えている薬草の類までもが最高品質だ。これだけの素材があれば腕のいい薬師は秘薬を作ることも可能だろう。
他にも他大陸では見たことのない植物が生えていた。
その中でも特に私たちの目を奪ったのは黄金に輝く林檎だった。その林檎は1つ食べるだけで体中から魔力が溢れだすのだ。
これを目にした指揮官の目がギラギラと輝いていたのを覚えている。確かに指揮官の気持ちも分からないこともないのだ。
たった1つ、たった1つ食べるだけで自分の総魔力量が倍になるからだ。もはやあの果物は神々の食材だったのだろう。
大陸調査を開始してから数日が経過した時にそれは起こった。
なんと調査隊が魔物の集落を見つけたのだ。
いや、それは話を聞く限り集落と呼ぶにはふさわしくない。もしかするとかつてここに栄えていた都市だったのかもしれない。
しかし、そこにはいたのだ。強固な城壁に遠くから見える立派な城、城を囲むように栄える城下町。そして、ゴブリンやオークを奴隷のように扱う犬の魔物、コボルトの大群が......。
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