第37話 パーティ戦 その5

 街での補充を完了させた私達は次の獲物たるファングウルフが多く生息する南門に集合していた。


 今回はラッシュボアの時とは違い集団との戦いになるので私自身も気をつけなければいけない。ただ、MP自動回復のスキルも習得したので継続戦闘については先程よりも向上していることだろう。


「ファングウルフはラッシュボアとは違い、夜は集団行動をするからゼロに攻撃が行かないようにロードと聖で周辺の警戒を頼む」

「もちろんですとも。吾輩としてもゼロ殿の白黒の効果が途切れると困りますからな」


 戦闘中は私の護衛を二人が請け負ってくれるようだ。

 私も今回は決して油断するつもりはないが不知火たちが捌けない程のファングウルフが来たら白黒を継続させるのが難しいかもしれない。




 さて、南門から大体20分ほど離れたところまで来たが、ここに来るまでにもファングウルフと戦っているパーティがいくつかあった。しかし、殆どのパーティがファングウルフの連携の前に敗北していた。


 見ている感じだと最低でもファングウルフは2体で行動しているようで戦闘が長引くにつれてその数を増やしていた。しかも、その数には今のところ限界が見られず先程敗北していたパーティは10体程のファングウルフが集結していた。

 

 あの数のファングウルフと一度に敵対することになると私達でも勝てるか怪しい。なんとかしてファングウルフの数を抑えたまま戦いたいものだ。


「どうする? 思ったよりも厳しい戦いになりそうだよ?」

「そんなこと一回戦ってから考えようぜ!! もしファングウルフが集まってきても数集まらないうちはなんとか逃げ切れるだろ!!」


 レオの言うことも一理ある。確かにこのまま悩んでいても仕方が無い。ここは一つやってみるか。


「役割はそのままで良いとして......一刀は今回も釣りを頼む。ただ、できるだけ2体で移動しているファングウルフを釣ってきてくれ。それから不知火は全てのタゲを奪ってくれ。今回は数が多いからHPの減りが激しいと思うが一応HP回復ポーションもあるから安心して盾に集中してくれ。レオは......好きなようにしてくれ。ロードと聖は私と不知火の状態を見ながら周囲の警戒を頼む」


 それぞれの返事を聞きながら私はパーティ全員に必要なバフを掛けていく。

 スキルショップで買ったMP自動回復があるので少しは余裕を持ってアーツを使えるため最初から味方を強化しておくのは有効な手段だろう。やっはり、迷ったら実行だな。


 MP自動回復は習得したばかりでレベルが低いのでMPの回復量は雀の涙ほどしかないが育てればきっと優秀なスキルになることだろう。




 ファングウルフとの戦闘を開始してから既に30分は経過している。

 最初は一刀が連れてきた2体のファングウルフを何事もなく倒すことが出来たので、続けてやつらのモーションを覚えるために何体かと戦闘を続けた。


 そして、10体ほど倒した時には大体の攻撃パターンも掴めてきた。なので、白黒をフルに発動して戦闘することにした。

 最初は順調だった。一刀が釣ってくるファングウルフを瀕死の状態まで持ち込んでから、いつものパターンで同じように一刀が釣る追加の敵を瀕死の状態まで持ち込んでいくループを早い段階から確立させ、効率良くファングウルフを狩ることが出来たからだ。

 だが、ヤツが来てからは全員が休む暇も無くなり、あまつさえ不知火への回復が徐々に間に合わなくなってしまった。


「ヤバいな。思ってたより仲間を呼ぶのが速いぞ」

「それにこのままだと不知火のHPが削り切られてしまう。一時撤退するか?」


 ファングウルフの仲間呼びでその上位種が来るのは予想外だ。

 今や私達の周りには20体は優に超えるファングウルフとその上位種たるハイ・ファングウルフがまるで狩りを楽しむかのように攻撃を仕掛けてきている。


 どうしたものか。

 ファングウルフは1分に1回のペースで仲間を呼ぶのでこのままだと圧倒的な数の前に敗北は必然だ。

 モンスタートレインになるからできるだけしたくはないが、一旦この敵の群れから逃げてタゲを無くすのが良いかもしれない。

 

 それに戦闘の最中に不覚にもファングウルフの噛み付きでダメージを受けてしまい、白黒がリセットされてしまったのも大きな痛手だ。

 今はどうにか攻撃を避けながら白黒を発動させているがMPも枯渇し始めたし、この猛攻の中ずっと攻撃を捌くのにもなかなか無理があるというもの。

 全く、少し調子に乗っていたかもしれない。まあ、後悔はこの戦闘を切り抜けてからだ。


「いや、ちょっと待て! ここは俺にやらせてくれ! 俺のオリジナルスキルだったらなんとか凌げるかもしんねえぜ!!」


 これからの対応を考えようと思考を巡らせた時、レオがニヤリと笑った。

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