第38話 獣化の力
「俺の獣化ならファングウルフを簡単に蹴散らすことが出来ると思うぜ! だが、ハイ・ファングウルフを相手にするのは厳しい。だから不知火たちに頑張ってもらうしかないけどな!!」
「確かにゼロのオリジナルスキルを見てるとこの状況を打開できるのも同じくオリジナルスキルになるだろう。しかし、レオはまだスキルの詳細については使ったことが無いから分からないんじゃないか? その辺は大丈夫か?」
「さあ? どうだろうな。さっぱり分かんねぇよ。だが今はそんなこと言ってる場合じゃ無いだろ!!」
レオがファングウルフを切り飛ばしながら答えた。
ここで考えても埒が明かないし、ここはレオの案に乗るしか無いな。なんだかんだ騒がしいのは私達らしいか。
「私はレオの作戦に賛成だ。しかし、レオのオリジナルスキルは発動中に回復が無効化されるから援護をロードと聖に頼もう。不知火はハイ・ファングウルフのタゲを固定、一刀は不知火のサポート、私は状況判断をする。問題は無いな?」
私はレオにヒールを飛ばしながら問い掛ける。
レオ自身もHP回復ポーションを使ってHPを満タンにしたようだ。スキルの効果からしてHPは多いに越したことはない。
今一度レオのオリジナルスキルである獣化について考える。
スキル発動時に特定のパラメータが倍になり、時間経過でHPが減少、さらに特定のパラメータが上昇する。しかし、今までの戦いでこのオリジナルスキルを使ってこなかったのでHPの減少速度やパラメータの上昇値も不明だ。
正直言って不安が残る状態だがそれをサポートするのが私の役目だ。支援職としては楽しみで仕方が無い。
「ああ、問題ないが俺にもヒールを忘れないでくれよ。今の状況的に一人でハイ・ファングウルフを抑えるのは厳しいぜ」
「あはは、不知火にも言われちゃったね、ゼロ」
「もちろんだとも。こんな状況では馬鹿な真似は出来ないからな」
きっと緊張を和らげるために言ってくれたのだろう。そうに違いない。
「そんじゃあ、いくぜ! 獣化!!」
オリジナルスキル名を唱えるとレオの体が光に覆われる。直後光が弾けそこからゆらゆらと闘気を立ち上らせたレオがファングウルフに向かって飛び出していった。
「おりゃぁああ! 力が漲って来るぜ!! クロススラッシュ!!」
「おお!! 流石オリジナルスキルだね。ファングウルフが一撃で沈んだよ」
「全くですな。こうも威力のあるオリジナルスキルを見せられると吾輩のオリジナルスキルが霞んで見えてしまいますぞ」
「気にすることは無い。何事も適材適所だ」
......何だあれ。あれがレオのオリジナルスキルなのだろう。
レオを鑑定で覗いているがパラメータの上昇率がとんでもないぞ。私の白黒を比較に出すのが悲しくなるレベルだ。
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HP:167/186
MP:14/32
STR:[110]〈+12〉(+34)
VIT:[63]〈+12〉(+26)
INT:2(+14)
MND:7(+14)
AGI:[42](+22)
DEX:7(+14)
[]内の数値は現在適用されている基礎パラメータ
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「レオ、お前のオリジナルスキルは多分だが1秒ごとにHPを1%削るみたいだ。だから最大でも99秒が限界だろう。しかし、余裕を見てHPが1割を切った時点で戻ってこい。ついでに朗報だが10秒くらいの間隔でパラメータが上昇するみたいだぞ」
「分かった!! じゃあ、直ぐに終わらせっぜ!!」
レオが剣を思いっきり振り払う。
アーツでもないただの横振りの一撃だったが飛び掛かろうとしていたファングウルフ3体が瞬時に光の粒子になって弾け飛んだ。
「これなら何とかなるかもしれないな。っぐ......やっぱし上位種になると一気に攻撃力が高くなるぞ」
「ウルフ種は防御力が低いのが唯一の救いだな。俺はゼロから貰った装備のおかげで付いて行けているが他のやつらじゃ厳しいかもしれん。ゼロの援護があってもこれだけ手間が掛かるとは思いもしなかったぞ」
レオがファングウルフを殲滅している間、不知火と一刀は二人でハイ・ファングウルフの足止めをしてくれている。
私も不知火にヒールを飛ばしてHPを常に回復させているが闇魔術も使わないと白黒を発動できないのは困ったものだ。
今のところは残念ながら高火力アタッカーの二人がファングウルフの処理を担当しているためハイ・ファングウルフに対してなかなかダメージを与えられていない。
「ふむ、やはり上位種には状態異常が掛かりにくいな。ファングウルフに対してはレオたちで足りるだろうし、これ以上仲間呼びされないように動きを封じておくか......パラライズ」
右手をたった今ロードに向かって飛びつこうとしていたファングウルフに翳す。するとファングウルフは痙攣してその場に崩れ落ちる。
その直後、レオの剣術のアーツ、スラッシュによって斬られ、光となって消えていった。......南無。
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