第33話 パーティ戦 その2
「レオ殿。魔術を飛ばしますぞ。ファイヤーバレット......ウォーターバレット......サンダーバレット!!」
今度はロードが待機させていた火魔術、水魔術、雷魔術のアーツを発動させる。
すると、火、水、雷の弾丸サイズの球がラッシュボアめがけて螺旋を描きながら発射され、数秒後にはエフェクトを伴いながらラッシュボアに炸裂する。しかし、ロードもまたレベルが低いためラッシュボアのHPの減りは僅かだった。
「ふむ......使ってみた感じではβと仕様は変わっていないみたいですな」
「ロードの方も仕様は変わっていない感じかな? 僕の方も特に変わったとこはなさそうだよ。これじゃまた弓は不遇職になりそうだね。まったく、こんなに楽しい武器なのに同志が増えないじゃ無いか」
二人とも今回のモーションの確認をしているようだが残念なことに聖が使う弓は仕様がβの時から変わっていないみたいだ。
βから不遇なのにこの対応は酷いと言える。それとも弓は補助動作を入れるのが難しいのだろうか。
「ゼロ、不知火にそろそろヒール飛ばしてやれ。死ぬぞあれは」
ロードたちの話を聞いており、少し目を離していたら不知火のHPが5割を切っていた。私としたことが油断していたようだ。
「すまない、不知火。気づかなかった。直ぐに回復させる」
一刀が教えてくれなかったら危うく見殺しにするところだったな。
今の私からすればラッシュボアなどはたいした相手ではないので私以外のレベルが1であることを失念していた。
一緒に狩りに行く相手がミサキさんのような生産職だったら油断などしないが仮にもβの時に上位勢として名を馳せていた連中だ。多少、私のフォローが無くても切り抜けられるだろう。
しかし、このままだとまた同じ過ちを犯しそうなので白黒を発動させておくことにする。
「エンチャント・レッドダウン......ヒール......エンチャント・ブラウンダウン......ヒール。これでひとまずは安心だろう。」
「助かった、ゼロ。今度は目を離さないでくれよ?」
白黒が発動して私が付与した効果が上昇した。
たったこれだけの行動で全てのバフ・デバフの上昇値が+2されている。やはりこのオリジナルスキルは強力すぎるな。
〈戦闘が終了しました〉
その後も不知火がラッシュボアの攻撃を受け止め、レオと一刀が近接攻撃、ロードと聖が遠距離で攻撃をすること5分程でラッシュボアを倒すことが出来た。
思ったよりロードたちの慣らしが早く終わったのでサクッとレベル上げが出来そうだ。
「今のでレベルが3まで上昇したから後3体ほど倒してから連戦にするか」
私以外は全員レベル1だったのでラッシュボアを倒したことでレベルが上がったようだ。それもレベル差があった分一気にレベルが上がっている。
「それじゃあ一刀、次も釣り、お願いできるかな?」
聖の言葉に頷いた一刀は新しい標的になるラッシュボアを釣りに行った。
この間に私もまだ掛けていないバフを入れておくとしよう。
〈戦闘が終了しました〉
あれからラッシュボアをさらに3体倒したところで一刀たちのレベルが6になった。
残念ながら私のレベルは全く上がらなかったが経験値は溜まっていることだろうし、気にしてはいけない。
それに、ラッシュボア狩りの後にはファングウルフを狩る予定なので、そこでレベルは上がることだろう。
「次は連戦するが私のMPが少なくなってきたからメディテイションで回復させる。その間に準備を整えといてくれ」
今までの戦闘で私のMPは5割を切ろうとしていた。
MP回復手段はメディテイションがあるので大丈夫だがMP自動回復のスキルを買った方が良いかもしれないな。
光魔術と闇魔術のアーツは意外と多用するのでMP消費の効率が悪いのがネックだ。
「吾輩も少しMPを回復させてもらいますぞ。ゼロ殿とは違いまだまだMPの最大値が少ないのでもうカツカツで大変でしてね」
私がメディテイションでロードがコンセントレーションというアーツでそれぞれMPを回復させている間に一刀たちが今のステータスについて話している。
聞き耳を立てるとどうやらレオはSTRにSPを全てつぎ込んだらしい。私も人のことは言えないが少しはVITに振っても良いだろうに。
〈書術のLVが上昇しました〉
ちょうど書術のレベルが上がったようだ。
MPが回復したところで一刀が立ち上がり、ラッシュボアを探しに行った。
今の一刀のステータスではまだオリジナルスキルを発動することは出来ないがこの連戦が終わる頃には私の白黒の効果も合わさり簡単に発動させることが出来るだろう。
「不知火、一刀が戻ってくるよ。スイッチの準備!!」
「おうよ。任せな!」
一刀がラッシュボアを1体引き連れて戻ってくる。
そして、不知火が一刀とすれ違う瞬間にヘイトアップを使いラッシュボアのタゲを奪う。すると、標的を一刀から不知火に変えたラッシュボアが不知火のカイトシールドに向かって突撃する。
かなりの速さで突進してきたラッシュボアはその運動エネルギーを少しも失うこと無く全てのエネルギーを不知火にぶつけるが不知火はその場から一歩たりとも動かずに耐え抜いた。
例え、レベルが6になったからと言ってラッシュボアの突進を受けても静止したままでいられるかと聞かれたら大抵のプレイヤーは首を縦に振ることは出来ないだろう。
つまり、不知火はこの数戦の間にラッシュボアの攻撃パターンを見抜き、その攻撃を見切ると言うことをやってのけたのだ。しかし、それは決して不知火だけに当てはまることでは無かった。
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