第32話 パーティ戦 その1
北の草原は私が最初に来た時よりも明らかにプレイヤーの人数が増えていた。それもパーティだけで無くソロのプレイヤーの数もだ。
つまり、他のプレイヤーもラッシュボアとタイマンで戦えるくらいにはレベルが上昇していると言うことに他ならない。
しかし、始まりの街の南門の先にいるフィールドボスはその推奨レベルが20以上だと言われているのでまだ時間の猶予がある。
何せ推奨レベル20以上と言えどそれはパーティ戦での目安であり、決してソロでの推奨レベルが20以上と言うわけではないからだ。
「まず、最初に連戦なしでレベル上げをしよう。それで不知火のVITが連戦でも耐えられるようになったら私のオリジナルスキルをフルに使ってレベル10くらいまで上げる」
「了解だ。まあ、ラッシュボアみたいな攻撃が見切り易い相手だったらそこまでVITが無くても大丈夫だがVITが高いことに越したことはない。もし調子乗ったりしてデスペナ食らったら洒落にならんしな」
「まったくその通りですな。それに我輩も魔術の仕様の確認をしたいので最初は長めに戦って貰えると助かりますぞ」
「確認が終了したら言ってくれそれまで私もラッシュボアにヒールを掛けて繋げておこう」
「その発想は鬼畜だよ。別に他のラッシュボアでも良いのにこの鬼畜神官め」
「俺は長く戦えるんだったら何でも良いぜ。早くこのストレスを発散させてくれ!!」
「全くお前ってやつは......。だが、今日はどうせ殆どインすることになるだろうし、思いっきり日頃のストレスを発散しとけ。お前は夏の休暇も少なくなるだろうしな」
一刀がレオを慰めているが全くその通りで後数週間で大多数の社会人や学生は夏休みシーズンに突入する。だが、残念ながらレオはその夏休暇の中黙々とデバッグなどをする羽目になるだろう。
「そろそろラッシュボアと戦っても良いんじゃないかな? ここら辺はまだ人数少ないし、リソースの食い合いは起こらないと思うよ」
「そうだな。必要なバフを入れるから戦闘準備をしといてくれ」
「俺はラッシュボアを釣ってくる。戻ってきたら不知火にタゲを奪ってもらってAGI上昇のバフを頼むぞ」
そう言うが早く一刀はラッシュボアがいる方向に走って行った。その身のこなしは熟練の暗殺者の如く静かでフィールドを彷徨っているラッシュボアにはまるで気づかれていない。
私は手に持っている初心者の聖書を開き、思考操作で光魔術のアーツ一覧からそれぞれのアーツを選択する。
そして、聖とレオにエンチャント・レッドアップ、ロードにはエンチャント・イエローアップ、そして不知火はエンチャント・ブラウンアップのアーツ名を宣言することで私の周りに白を基本とした赤、黄、茶の魔術陣が出現しそこから各色の光がそれぞれを祝福するかのように降り注ぐ。
魔術の発動プロセスは最初に思考操作か手動でスキル欄から自分が使用したいアーツを選択する。
ここで前にも言ったアーツを使うと同時に移動することで動いた状態でも発動できるようになるテクニックを使い、アーツの待機時間中に攻撃を避けられるようにする。
次に、選択したアーツの待機時間が終了するまで待機する。この待機時間はアーツによって時間が異なるが例外を除き殆どの場合はアーツの効力が高いほど長くなる。
そして、この待機時間が始まった瞬間から物理系スキルなら青いオーラが生まれ、魔術系スキルなら対応した属性の魔術陣が出現する。
ちなみにだが魔術陣は対抗属性の魔力を含んだ攻撃で一定以上のダメージが蓄積されると、その魔術陣は魔力暴走を起こし、辺り一面で爆破する。そのため、待機時間中は敵の攻撃を如何にして魔術陣に当たらないようにするかも注意を払わなければいけない。
最後に待機が終了したアーツ名を宣言することでアーツが発動される。もちろんだがアーツ名を宣言できない状態、例えば状態異常の麻痺などに掛かってしまった場合には状態異常が解除されるまでアーツを発動することが出来ない。これも例外は存在するがな。
「不知火、スイッチだ」
待つこと数十秒で一刀がラッシュボアを1体引き連れて帰って来た。
不知火は少し緊張した表情でカイトシールドを構える。他の3人も先程までのおちゃらけた雰囲気をどこかに吹き飛ばしそれぞれが戦闘態勢に入っている。
「よっしゃあ、来い。ヘイトアップ!!」
不知火が盾術の初期アーツ、ヘイトアップを発動して一刀からラッシュボアのタゲを奪う。それと同時に、私は一刀がこちらに来ている間に待機させておいたエンチャント・ブルーアップを発動させる。
「ナイスだ不知火!! 俺も行くぜぇ~。スラッシュ!!」
不知火がカイトシールドで防いだところをレオが剣術のアーツ、スラッシュで攻撃をする。
流石にレベル差があるから通常攻撃よりもダメージが高いアーツを使っても大してダメージを与えることが出来ていない。だが、今は気にしなくて良いだろう。
それよりも今は不知火のHPが先程のラッシュボアの突進で1割ほど削れたことだ。
盾職でしかも殆ど完璧な体勢で防御したのにこれほどのダメージを受けるのはレベル差が顕著に現れていると言える、が逆に考えればこれだけのダメージ量で済んだのが凄いのかもしれない。
もし、ダメージ量が多くて回復が間に合わないようだったら私がキャリーする予定だったがヒールを使えばHPの1割は直ぐに回復出来るのでこのまま戦闘継続だ。
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