第8話 冒険者ギルド

 眩い光が収束するとそこは噴水がある広場だった。ここが始まりの街なのだろう。


 私が少しメニュー画面を操作して考え事をしていると続々と天空から光の柱が降り注ぎ、そこからプレイヤーらしき人が出てきた。

 このままだと混みそうだ。人混みが出来る前に早めに移動するのが良いかもしれない。


 広場から大通りに出てみたが案外町並みは綺麗なもので、私が歩いている商店街のような場所も多くの人で賑わっている。


「すみませんが冒険者ギルドがどこにあるか教えていただけますか」


 少し探してみたが冒険者ギルドが見当たらなかったので、広場から離れた商店街で屋台を開いているナイスガイな店主に尋ねることにした。

 ちなみにNPCのことを住民と言い、私たちプレイヤーのことを訪問者と言うのもこの世界の設定だ。


「おう、いらっしゃい。冒険者ギルドならこの道をまっすぐ行ったところにあるよ。ついでに串焼きでも買っていったらどうだ」


 冒険者ギルドは意外と近場にあったみたいだ。

 ここは感謝の意味を込めて串焼きを買っていくとするか。


「そうですね。では、1ついただきます」


 串焼きは100バースだったが懐には余裕がある。何故なら、ここに着いた時にインベントリを見たがその中には一万バースとギフトがあったからだ。

 ギフトは後で開けようと思う。何が貰えるか楽しみだ。


「はいよ、まいどあり」


 串焼きを食べながら歩いていると冒険者ギルドに着いた。

 え? 冒険者ギルドまでの道のり? そんなものカットだよ。ああ、串焼きは結構おいしかった。

 AWOには空腹度システムがないため実際は食事をしなくても良いのだが、味もしっかり再現されているし、高級料理とかだとバフが付くので買う人は意外といる。


 辿り着いた冒険者ギルドは思っていたよりも小さいが、ギルドの隣では運ばれてきた魔物が職員によって解体されている。

 しかし、魔物は倒したらドロップアイテムを落として光の粒子となって消えるのではなかっただろうか。住民が倒すと消滅しない設定なのか?

 その設定がプレイヤーにも反映されていればよかったのだがこれもグロ対策とかの一環なのだろう。

 後でリアル表現に設定を直しておくのも悪くはないか。


 解体現場を横目に冒険者ギルドの中に入ってみたが、ギルドの中は酒場などがあるファンタジーの感じではなく役所みたいになっている。

 受付には少し人が並んでいるが登録を済ましてしまう。


 これは余談だが受け付けには何人か人がいたが、迷わずに猫耳受付嬢のところに並んだ神官がいた。


「冒険者登録をしたいのですが」

「冒険者登録には千バース必要ですがよろしいですか?」


 金を取るのかい。まあ、気にするほどではないか。


「かまいません。こちらでお願いします」

「確認いたしました。それでは登録をしますのでこちらの水晶に手を翳してください」


 出た。ファンタジー定番の謎に高技術の水晶。これで登録できるって凄いな。ファンタジー万歳だ。


「......はい。ありがとうございました。ゼロ様ですね。こちらが冒険者カードになります。冒険者カードとインベントリとの同期が完了しましたので、トレードや会計の際は冒険者カードを翳すだけで出来るようになります」


 冒険者カードは便利だ。

 現実世界にもその機能が欲しい。しかし、現実ではインベントリがないから結局は無理な話か。


「それでは、冒険者ギルドについて説明いたしますがよろしいですか?」

「ええ、お願いします」

「冒険者ギルドとは魔物を倒したり薬草の採取をしたりと様々な依頼を冒険者の皆様に斡旋する場所です。依頼は大きく分けて討伐、納品、護衛、その他に分類されます。また、冒険者にはランク制度が導入されており一番下からF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSに分類されます。

 ランクが高くなるごとに複数の依頼、高難易度の依頼を受けられるようになるのでぜひ高ランク冒険者を目指してみてはいかがでしょうか。これで説明は終わりですが質問はございますか?」


 説明が短いが特に分からないこともないので依頼でも受けるとしよう。


「いえ、大丈夫です。早速ですが依頼を受けたいのですが」

「承知しました。ゼロ様は冒険者登録をしたばかりなのでFランクかEランクの依頼を受けることができます。どのような依頼がよろしいでしょうか?」


 受けられる依頼は自分と同ランクと一つ上のランクなのか。いきなり知らないこと出てきたな。

 だが、これもやっていく内に分かるようになるはずなので気にすることではない。


「できれば討伐依頼がいいですね」

「討伐依頼ですとFランク依頼のホーンラビット、ファングウルフ、ラッシュボアの討伐依頼がありますがどれにいたしますか?」


 ラッシュボアは少し難易度が高いのでソロで行くのは後回しだ。ヤツはもう少しレベルを上げてから安全に狩った方が効率が良い。


「では、ホーンラビットとファングウルフの討伐でお願いします」

「申し訳ありませんがゼロ様の冒険者ランクでは同時に一つしか依頼を受けることができません」


 なんてことだ。すっごい恥ずかしいのだが。

 決め顔で『ホーンラビットとファングウルフの討伐でお願いします』って言ってしまったじゃないか。

 穴があったら入りたいとはこう言うことを言うのか。


「そうですか。では、ホーンラビットの討伐にしますね」

「承知しました。依頼内容はホーンラビットの討伐でよろしいですか?」


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ホーンラビットの討伐 推奨LV1以上


報酬 

ホーンラビット1体につき100バース


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 受付の猫耳女性がそう言うと私の前に依頼内容が表示された。


「ええ、大丈夫です」

「それではホーンラビットの討伐依頼を受理します。報酬はホーンラビット1体の討伐につき100バースです。また、ホーンラビットのドロップ品は隣の買取所にて買取しております」

「分かりました。ありがとうございます」


 ちょっとしたトラブルもあったがホーンラビットを狩りに行くとするか。受付のお嬢さんに聞いた話だとホーンラビットは東門を抜けた草原にいるらしい。

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