第3話 キャラクタークリエイト その1
閉じていた目を開けると見渡す限りに星々が輝いて見える。
それはまるで天体観測で見た星雲のように綺麗で神秘的だ。
しかし、不思議なことに足場はしっかりとあって空中に私は立っている。
「ようこそAWOの世界へ。私は大神様の御使いである天使のサエルと申します。まずはプレイヤーネームを入力してください」
サエルと名乗った銀世界を想像させる白髪に何事をも見通す碧い瞳の女性がそう言った。
すると目の前に馴染みのある半透明のウィンドウが現れた。
そこには〈プレイヤーネームを入力してください〉と表示されている。
私は慣れた手つきでウィンドウに【ゼロ】と打ち込む。
このキャラクターネームは私の名前の読みを変えたものだ。何時も変わらずこの名前で、他のゲームをしているので今回もこのままにしようと思う。
「プレイヤーネーム【ゼロ】でよろしいですか?」
「大丈夫です。そのままでお願いします」
他に思いつく名前もないし、このままで良いだろう。自分で言うのも何だがこの名前は結構気にいっている。
「次は種族〈RACE〉の選択を行います。ヒューマン、デミヒューマン、セリアンス・ドッグ、セリアンス・キャット、エルフ、ドワーフのどの種族にするか選択してください。また、種族によって初期ステータスが異なりますのでご注意ください」
種族選択だがβテストの時は所謂ヒューマンしか選択出来なかったが、製品版では全部で6種族の内から選択可能になったようだ。
「各種族の詳細について教えて貰えますか?」
なんとなくは想像がつくがここは素直に聞いておいた方が良い。
公式サイトには製品版とβ版の違いについては大して発表がされていなかったからだ。
「承知しました。それでは各種族について説明いたします。最初にヒューマンですが、全ての種族の中でも最も平均的なステータスになっています。そのため、特に強い点もない代わりに弱点もありません。プレイスタイルが決まっていない方はヒューマンを選択することを推奨いたします。
続きましてデミヒューマンは全種族の中で最もINTが高いと言う特徴があります。そのため、プレイヤーの皆様が降り立つ世界〈マグバース〉において魔術を行使させたら右に出る者はいないと言われる程の魔術適性を有しております。魔術を使ったプレイをしたい方に推奨いたします。このまま進めてよろしいでしょうか?」
流石ヒューマンだ。The一般人と言う感じがすごいな。
だが候補としてはありだ。万能系目指すなら良いかもしれない。
しかし、デミヒューマンも捨てがたい。
私はβテストの時には神官職に就いていたので魔術を使うのは得意だ。
それに魔術はロマンだしな。
「ええ、大丈夫です。続けてください」
「続いてのセリアンス・ドッグは全種族の中でも最もSTRが高い種族です。その反面INTが極めて低く殆どの魔術に適性がありません。しかし、戦場に出ればその強靱な肉体で活躍することでしょう。前戦で武器や己の肉体を使い敵をなぎ倒すプレイがしたい方に推奨いたします。
次はセリアンス・キャットですが、これはSTRとAGIが高いことが特徴です。また、獣人系の種族の中でも魔術に多少の適性があり、魔術の行使が一定以上可能な種族でもあります。戦闘だけでなくダンジョン探索などではその身のこなしで斥候として重要な役割を果たすでしょう。スピードとパワーで相手を翻弄するプレイに興味がある方に推奨いたします」
魔術が使えないのは面白くない。それに己の肉体で戦闘など
昔はかなり動けていたのだが最近は鍛錬を怠っているので全盛期ほど動ける自信がない。
「次にエルフはSTRとINTが高く魔術または物理アタッカーとして優秀な種族です。しかしながら全体的にVITとMNDが低く接近戦は苦手な傾向があります。エルフはこの特性から遠距離攻撃を得意としており、遠くから強力な攻撃で敵を撃破するプレイがしたい方に推奨いたします。
最後にドワーフです。ドワーフはDEXが全種族の中で最も高く、VITも高い特徴があります。そのため生産が得意であり、その中でも特に金属や魔物由来の素材に関する加工が他種族よりも優れています。さらには高いVITを生かして敵の攻撃を引きつける守りの要として活躍するでしょう。鍛冶などの生産をしたい方やタンクをやりたい方に推奨します。これで種族説明は以上です。何か質問はございますか?」
特に生産がしたいと言うことはないのでドワーフは選択肢から外すとしてエルフはありだ。遠距離から弓で敵を狙撃するのは憧れる。
「いえ、大丈夫です。しかし、どの種族にするか迷いますね。魔術が使えることは大前提なのですが......」
候補としてはヒューマン、デミヒューマン、エルフのどれかだ。まあ、各種族のステータスを見てから決めるとしよう。
RACE:ヒューマン
HP:60
MP:60
STR:10
VIT:10
INT:10
MND:10
AGI:10
DEX:10
まずはヒューマンだが想定通りのステータスだ。オール10は逆にすごい。しかし、これは特徴がなさすぎる。
RACE:デミヒューマン
HP:40
MP:80
STR:9
VIT:4
INT:19
MND:12
AGI:7
DEX:9
INTがかなり高いので魔術をメインに使うならこれ一択かもしれない。だが接近戦があることを踏まえるとVITが予想より低いのがネックだな。
RACE:セリアンス・ドッグ
HP:88
MP:32
STR:18
VIT:15
INT:2
MND:7
AGI:11
DEX:7
犬人はダメだ。物理戦闘は強そうだが魔術が使えない。
RACE:セリアンス・キャット
HP:80
MP:40
STR:17
VIT:8
INT:5
MND:3
AGI:15
DEX:12
やはり獣人族は魔術適性が低いな。
RACE:エルフ
HP:58
MP:62
STR:14
VIT:6
INT:15
MND:7
AGI:9
DEX:9
エルフは魔術適性が高い。これはかなり迷うな。特にSTRが高いのが二刀流みたくて良い。
しかし、よく考えたらエルフにすると遠距離攻撃として弓を使うことになる。そうするとパーティメンバーの
RACE:ドワーフ
HP:62
MP:58
STR:14
VIT:13
INT:5
MND:6
AGI:4
DEX:18
ドワーフだと魔術なんて使えないに決まっている。それに生産は苦手だからここは魔術適性が一番高いデミヒューマンに決まりだ。
「ところで種族によって体の特徴などは変わりますか?」
例えば、ドワーフは低身長でエルフは耳が長いなどのイメージがある。
個人的には身長が変わるのはキャラクターの操作がしづらくなるから遠慮したい。
「その通りでございます。デミヒューマンは瞳が紫色になり、獣人族はセリアンス・ドッグなら犬の耳と尻尾、セリアンス・キャットならば猫の耳と尻尾が生えます。また、エルフですが耳が少し尖り長くなり、ドワーフは肌の色が少し褐色になります。それに対しヒューマンは他種族のような特徴はありません」
なるほど。ドワーフは肌の色が変わるのか。後はかねがね予想通りだ。
「決めました」
結局、種族はデミヒューマンにした。
魔術を使うにもデミヒューマンが一番適しているし、身長が変わるなどのキャラクターの操作性に不備が生じないからだ。
「承知いたしました。ではアバターの作成を行います」
サエルさんがそう言うと私の前にイケメンが出現した。
いや、私のことなのだがな。少しだけ盛ってしまったよ。
身長は170cm後半くらいで意外とがっしりとした体型だ。昔は武術を嗜んでいたので体つきは良い。
最近は軽くしか動いていないし、勘が鈍らないようにたまには動くのも良いかもしれない。
「こちらは現実のゼロ様の身体データを元にして作られたアバターでございます。身元バレ防止のため髪型等の変更をすることを推奨いたします。身長に関しては操作性の観点により変更は最大で上下10センチメートルまでとさせていただきます。また、ゼロ様はデミヒューマンを選択したため瞳の色は紫色から変更することは出来ません。ご了承ください」
お決まりの台詞だ。この問題はいつの時代になっても変わらない。
さて、瞳の色はしょうがないとして髪の色は薄い紫色にするか。ウィンドウでアバターの外見をちゃちゃっと変えて完了っと。
「こんな感じで大丈夫ですかね?」
「はい。よろしいかと思います」
サエルさんからもお墨付きを貰ったので次に行こう。
「続いては職業〈JOB〉の選択を行います。職業はウィンドウから選択してください。分からないことがありましたらご質問ください」
サエルさんがそう言うと私の前にあるウィンドウにJOBが表示された。
戦闘職
・戦士(剣術・槍術・体術・盾術・斧術・槌術に補正)
・盗賊(剣術・体術に補正)
・射手(弓術に補正)
・魔術士(基本属性魔術【火魔術・風魔術・土魔術・雷魔術・水魔術・無魔術】・杖術に補正)
・神官(双極属性魔術【光魔術・闇魔術】・無魔術・書術に補正)
・召喚士(召喚魔術・杖術に補正)
生産職
・鍛治師(鍛冶に補正)
・薬師(調薬に補正)
・錬金術師(錬金に補正)
・裁縫師(裁縫に補正)
・木工師(木工に補正)
・細工師(細工に補正)
・調理師(調理に補正)
生産職には興味ないので選ぶとしたら戦闘職の神官か魔術士の二択だ。
ソロなら召喚士でも良いが召喚士だと召喚獣にパーティ枠を取られてしまうからなしだ。たまにはパーティで動くこともあるからな。
「ところでこの補正と言うのはなんですか?」
まあ、なんとなくは分かる。スキルの効果が上昇するとかだろう。
製品版からの新要素ぽいから聞いてみたが、βテストではマスクデータだったのではないだろうか。
「はい。この補正というのは該当するスキルの効果を上昇させるものです。また、補正の掛かるスキルが多いほど上昇値は低くなります」
「それだと魔術士などは少し不利ではないですか?」
この仕様だと魔術士は神官よりも補正を受けるスキルが多いので効果が余り実感出来なさそうだ。
「はい、補正の掛かるスキルの数が多いため少なからず補正の上昇値は減少いたします。しかしながら最初に選択していただく職業は一次職と呼ばれるものであり、その上昇値は現状ではプレイに影響を与える程ではありません。また、職業は一定のレベルになると転職が可能になり、その際に選択した職業によって補正の掛かるスキルが変動いたします」
それなら心配は無用か。
βテストの時に神官を選択したから今回は魔術士でもいいが、前回と同じように神官にするとしよう。
「JOBは神官にしますね」
そう言って私はウィンドウに表示されている神官を選択した。
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