第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第一項 始まりの街

第2話 キャラクタークリエイトの少し前

「もうこんな時間か」


 ふと壁に掛かっている時計を見れば時刻は11時27分を指していた。今日は12時からAWOの製品版がリリースされる。私もβテスターとして参加したが思っていた以上に面白くて昔なじみの親友たちとかなりやり込んでしまった。


「おっと、私は誰に説明しているんだ。歳を取ると考え事が多くなるから困る」


 そんなことを言いながら寝室に移動して愛用のVRヘッドギアを装着する。このヘッドギアも8年近く使っていると思うと感慨深くなる。しかもこれは当時の最新版でかなり高額だった。あのときは給料の大半が飛んでいき一時期、飯がモヤシだったのは懐かしい思い出だ。


 最初は医療目的でVRギアが開発されたが技術が発展し、遂には大手ゲーム企業が最初となるVRMMORPG『First Online』を発売した。しかし、時代の流れとは速いものでそれから早50年が経とうとしている。私たちゲーマーにとっては有り難いことだが技術の進歩は凄まじく今では五感でしっかりと物を判断出来るようになった。


「さて、やりますか」


 ヘッドギアの横についている電源ボタンに手を掛けて目を閉じる。トイレも済ましたし施錠も完璧。またAWOの世界に行けると思うと楽しみで鼓動が速くなる。思う存分楽しむとしますか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る