第30話 【 心の裏側 】

 太狼はメリーさん(メスガキ)に振り回されながらも、

 連れてきたメリーさん達と共に、駅中を遊び尽くしていた。





「はぁ〜っ! 面白かったぁっ! お兄、ありがとねっ!」

「あぁ、どういたしましてだよ。ったく……」


「そんじゃ、あたし帰るからっ!」

「……は? これで終わりなの?」

「そうだよ? だって別に用ないし……」

「それじゃあ、俺は何しに呼び出されたんだよ」

「そんなの、決まってるじゃんっ!」

「……あ?」



























           あたしのサ・イ・フ。



























          ぶっ殺すぞ、テメェッ!



























 メリーさん(メスガキ)は笑顔でそう告げると、

 みんなに手を振りながら、一人で道を歩いていった。


「そんじゃ、まったね〜っ!」

「二度と来んじゃねぇッ!」


 メリーさん(メスガキ)は、そのまま一人で帰っていった。


「なんか、変わったメリーさんでしたね」

「マジでなんなんだよ、アイツ……」

「ご主人様、返してよかったの?」

「別にいいんじゃねぇか、アイツがそうしてぇなら」


「まぁ、寂しそうな素振りは見せませんでしたからね」

「あれはまた、他の男を振り回して遊んでんだろ」

「そうですね、そんな気がします」


「そんじゃ、俺らも帰るか」

「にぃに、かえろっ!」

「お兄ちゃん、手、繋ごっ!」

「あぁ、ほら……」


 太狼は二葉、三凪と手を繋ぎ、みんなで家へと帰っていった。



























 家に帰ると、一夜が二葉、三凪をお風呂に入れていた。


「にぃに、見つけたぁ〜っ!」

「おい、お前。まだ体拭けてねぇだろ」

「三凪ちゃん、どこに……ひゃっ!? 太狼さんっ!」

「お前もそんな格好で出てくんなよっ!」

「だって、三凪ちゃんが出ていっちゃったんですもんっ!」

「うふふっ、平和ねぇ……」


 みんなでバタバタとやっていると、

 突然、太狼のスマホの着信音が鳴った。


「……あ?」


 太狼それに気がついた瞬間、

 着信は一瞬で切れてしまった。


「……な、なんでしょうか」

「……?」


 太狼がスマホを見ると、非通知からの着信が来ていた。


「勝手に切れるなんて、初めてだな」

「……メリーさんですか?」

「非通知って書いてあるから、そうだと思うんだが」

「なら、またかかってくるのでは?」

「……かもな」


 太狼は気にすることなく、そのままお風呂に入った。



























   ──結局、その後も電話が来ることもなく、


         その日は何も起こらぬまま、深夜を迎えた。



























 みんなが寝静まった後に、太狼が一人、天井を見上る。

 すると、そんな太狼を見つめるエリーが、小さな声で呟いた。


「ご主人様、眠れないの?」

「あぁ、少しな……」

「あの子のこと、気になってるの?」

「…………」


 太狼は、メリーさん(メスガキ)と過ごした、

 短い時間の思い出を、何となく思い返していた。


「アイツさ、何回かこっそり俺に刃物向けてたんだよ」

「あら、気がついてたのね」

「まぁな。でも、刺しては来なかった……」

「……そうね」


「アイツ、何考えてたんだと思う?」

「メリーさんなら、やっぱり覚えておいて欲しいんじゃないかしら」

「なら、なんで何もせずに帰ったんだ?」

「……ごめんなさい、それはあたしにも分からないわ」

「……そうだよな」


「…………」

「…………」


 太狼は少し考えると、おもむろに立ち上がった。


「ご主人様、お出かけかしら?」

「あぁ、少し散歩にな」

「そう、行ってらっしゃい。気をつけてね」

「みんなを頼むな、エリー……」

「えぇ、任せてちょうだい」

「そんじゃ、行ってくる……」





 エリーさんに見送られながら、太狼は一人で出かけていった。

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