第28話 【 能力 】

 エリーさん(死神)を迎え入れた太狼は、

 超次元レベルの力をについて、一夜に聞いていた。





「つまり、それぞれの特有の能力があるってことか?」

「そうですね。メリーさんは、遠くからもくるので……」

「なら、お前は何の能力を使えるんだ?」

「あたしは、影にも潜ることが出来ますよ」

「……影に潜る?」

「それで移動したり、背後を取る事が出来るんです」

「あぁ、なるほど。だから、不法侵入を平然としようとしてたのか」

「幽霊に、不法侵入も何もありませんよ」

「お前をどれだけ囲っても、気が付いたら横で寝てる理由が分かったよ」

「それは、その……寝ぼけてて、すいません……」


 すると、エリーさんが【 魂を喰らう死鎌 デス・サイズ】を取り出した。


「あたしの次元を切り裂く力も、似たようなものよ」

「似たようなものの割には、迫力がエラい違うけどな」

「まぁ、元々こういうお人形だったから、仕方ないわよ」

「どんな趣味してたんだよ。お前の元の持ち主……」


 すると、二葉が折り紙を持ってきた。


「お兄ちゃん、見て見てっ! お花作ったの」

「おぉ、凄いな。よく出来てるじゃねぇか」

「えへへっ。あたしね、頑張ったのっ!」

「そっか、偉いな……」


「二葉にも、何か特有の能力はあるのか?」

「あたしはね、お花さんとお話ができるの」

「おぉ、なんかいいな。そういうの……」


「あたしね、ここに来るとき迷っちゃったの」

「そうなのか? その割には、ちゃんと来たけどな

「その時に、お花さんに聞いたら、道を教えてくれたんだよ」

「おぉ、なんか可愛くていいな。そういうの……」

「えへへっ……」


「というか、花が俺の事なんか知ってるのか?」

「顔の怖いお兄さんって言ったら、『 あそこだ 』って……」

「あぁ、なんか台無しだわ」

「……?」


「子供は霊力が少ないから、テレパシーで見つけられないのね」

「それを補う能力というのも、あるんですね」


 それを聞いて、太狼は三凪をじーっと見つめた。


「……にぃに?」

「お前は辿り着かなかったけど、能力あるのか?」

「……?」

「あぁ、なんか無さそうだな。悪ぃ、なんでもねぇわ」

「えへへっ。にぃに、大好き……」

「へいへい。ありがとな、三凪……」


 太狼は子供を膝の上に乗せて、遊ばせていた。


「ご主人様は、意外と子供好きなのね」

「まぁ、嫌いじゃねぇよ。普段は逃げられっけど……」

「メリーさんは、むしろ求めてやってきますからね」

「確かに、怖がられる素振りは今のところないな」



( あっ、どうしよう。あたし、最初めっちゃ怖かった…… )



 一夜は、自分が初めて太狼と出会った時のことは、

 自分の中に一生封印しておこうと、一人で誓っていた。


 すると、太狼のスマホが着信音を鳴らす。


「おいおい、エリーが来たばっかだぞ。さすがに早すぎんだろ」

「……ま、また……メリーさんなん、ですかね……」

「俺に電話かけてくるのなんか、もう他にいねぇだろ」

「それはそれで、悲しくないかしら? ご主人様……」


 もう半分諦めた感じで、太狼はスマホを見る。

 すると、案の定、非通知からの着信が来ていた。


「はぁ……もうなんか、溜まり場だな。俺の家……」

「次は、どんな子なんでしょうね」

「さぁな、エリーを見たら、マリーさんでもケリーさん驚かねぇな」


 そういって、太狼はスマホの通話ボタンを押す。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしメリーさん……』

『おっ、今回はメリーさんか……』

『……なに? どういうこと?』


『いや、普通に喋るんかいッ!』

『そりゃそうでしょ、電話なんだから……』

『はぁ。まぁ、いいや。早いところ来いよ』

『……なに、そんなにあたしに会いたいの?』

『いや、メリーさんなんだから、嫌でも来るんだろ?』

『べ、別に。あたしは会いたいとか思ってないし……』


『あっそ、んじゃ来なくていいよ。またな……』

『でも、あなたが会いたいなら、しょうがないから行ってあげるよ』

『来なくていいっつってんだろッ! 聞けよッ!』

『今、ゴミ捨て場だから。じゃ……』


 ブチッと、通話はそこで切れてしまった。


「くっそムカつく。なんだ、このクソガキ……」

「今回もまた、個性的なメリーさんが来そうですね」

「はぁ、めんどくせぇなぁ……」

「まぁまぁ。会ってみるまで、性格は分かりませんよ」


 一夜に慰められながら、太狼が着信を待つ。

 すると、再び太狼のスマホの着信音が鳴り響いた。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしメリーさん……』

『…………』

『今、映画館の前にいるの……』

『……は? 映画館?』


 ブチッと、そこで通話は切れてしまった。


「いきなり脱線してんじゃねぇか。タバコ屋はどこいった」

「そうですね。なかなか珍しいタイプなのでしょうか」

「会ってみるまでは、なんとも言えねぇか」

「はい、とりあえず待ちましょう」


 すると、再びスマホの着信音が鳴った。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしメリーさん……』

『おう、今度はどこにいんだ?』

『今、映画館の前にいるの……』

『……は? お前、動いてねぇの?』


 ブチッとそこで通話が切れ、不信感だけが残る。


「なぁ、移動してなかったぞ。あいつ……」

「本当に変わったタイプですね、どういう行動なのでしょうか」

「個性強すぎんだろ、最近のメリー共……」


「あたしはメリーじゃなくて、エリーだけどね」

「それが一番訳わかんねぇよ、イレギュラー過ぎんだろッ!」


 すると、再びスマホの着信音が鳴った。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしメリーさん……』

『…………』

『今、映画館の前にいるの……』

『テメェっ! いつまでそこにいんだよ、とっとと来いよッ!』


 ブチッと通話が切れ、五人が沈黙に包まれる。


「なぁ、スマホの電源、落としていいか?」

「それでも、通話は無理やりかかってきますよ」

「なら、バッテリー取ったらどうなる?」

「まぁ、それはさすがに動かなくなりますけど……」

「……よし」


 それを聞いて、太狼はスマホのバッテリーを抜いた。


「この家、普通の電話がないですよね」

「前に壊れてからは、新しいのは買ってない」

「……あっ、そうなんですか?」

「まぁ、今どきは携帯だけでも何とかなるからな」

「それもそうですね。なら、あとは……」


 その瞬間、お風呂の沸いたメロディーが流れ始めた。


「……は? 今は風呂なんか沸かしてねぇぞ?」

「……あぁ、そういえばアレって、声が出ましたね」

「……声?」


『テンテロレンッ! もしもし、あたしメリーさん……』

「いや、そこ通信機器じゃねぇだろッ!」

『今、映画館の前にいるの……』

「テメェ、どんだけ映画見てぇんだよッ!!」


 その後、お釜や洗濯機の知らせ、パソコン、

 テレビ、ゲームと、あらゆる所から呼び出しが来た。


『もしもし、あたしメリーさん……』

( イライライライラ…… )

『今、映画館の前にいるの……』

「わぁかったよッ! 行きゃいいんだろ行きゃッ!」


 ブチ切れながら太狼は立ち上がり、出かける準備を始めた。


「ご主人様、最後にはちゃんと行くのね」

「太狼さん、あんな見た目でもいい人ですからね」





 太狼は支度を終えると、全員を連れて駅へと向かった。

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