第27話 【 太陽をも喰らう影狼 】

 自称【 エリーさん史上最強 】の称号を持つ、

 貞子と死神をハイブリッドしたの様な姿をした女を前に、


 子供たちは言葉を失っていた。





「うふふっ、あなたの後ろはあたしのものよ」

「なら、なんで後ろから出てこなかった?」

「そんなの、決まってるじゃない」

「……あ?」


「この【 魂を喰らう死鎌 デス・サイズ】なら、前からでも後ろが取れるもの……」

「いや、背中を攻撃できりゃなんでもいいのかよッ!」


 エリーさんが、素敵な笑みを浮かべながら、

 鎌を見せつけるように、太狼の前で振り回す。


「その鎌は、冗談じゃなさそうだな」

「もちろん。確実に相手の魂を狩り取るわよ」

「メリーさんって、殺すことはしねぇんじゃ無かったのか?」

「だってあたし、エリーだもの……」

「マジでテメェ誰なんだよッ!」


 微笑むエリーさんに、太狼が全力のツッコミを入れていく。


「太狼さんが、太狼さんが……」

「お兄ちゃん……」

「にぃに……」


 三人が心配そうに見つめていると、

 太狼は指を鳴らして、笑みを浮かべた。


「しかたねぇ、来ちまったもんはやるしかねぇか」

「……あなた、あたしが怖くないの?」

「怖い? 見くびるなよ、俺は【 太陽をも喰らう影狼 】だぞ?」


 そういって、太狼が戦闘態勢に入る。


「うふふっ。素敵、素敵だわッ!」

「先に言っとくが、俺やメリーたちを襲うなら、手加減はしねぇぞ?」

「当然よ、こんなところで『 女だから 』なんて言い出したら、興醒めだもの」

「そうか。なら、喰われる覚悟でこい。全力で相手してやっからッ!」


 何故か、高揚感に包まれるような二人に、

 影から見ていた三人は、目を見開いていた。


「にぃに、かっこいい……」

「お兄ちゃん、笑ってる」

「……太狼さん」


 エリーさんは、鎌を大きく振りながら、

 死神が魂を狩り取るような構えに入った。


「それじゃ、存分に楽しませてもらうわよ?」

「どっからでもこい。俺の命はそんなに安くねぇぞ」

「うふふっ、素敵。狩り取り甲斐がありそうだわッ!」


 その瞬間、二人が一瞬で消え、同時に攻撃をぶつけあう。

 家の前で起こる人間離れした闘いに、三人は目を丸くしていた。


「お兄ちゃん、戦ってる」

「にぃに、見えない……」

「太狼さんって、何者なの?」


 あまりの想像を絶する光景に、三人は驚いたまま固まる。

 すると、戦いの中からは、二人の楽しそうな声が聞こえてきた。


「うふふっ。いい、いいわっ! とても張合いがあるわねッ!」

「最強を名乗るなら、まだまだこんなもんじゃねぇだろッ!!」


 二人は喜びの声を上げながら、さらに加速し、

 十分以上もの間、その場で技をぶつけ合っていた。



 その結果……



























            ──太狼が見事に勝利した。



























 エリーさんは地面に倒れ、太狼は拳を天に掲げていた。


「す、凄い。素手で勝った……」

「お兄ちゃん、かっこいい……」

「にぃに、すっごくつよ〜いっ!」


「ふぅ〜、少し熱くなりすぎちまったな」

「うふふっ、あたしの負けね。あなたは、本物よ……」

「ったく。触れたら死ぬ鎌とか、シャレになんねぇな」

「まさか、このあたしが一撃も当てられないなんてね」


 そういって、エリーさんは夜空を見上げていた。


「さぁ、煮るなり焼くなり好きになさい」

「…………」

「あたしは負けた。あたしの魂は、あなたのモノよ」

「……そうか、わかった」


 太狼はエリーさんの目の前に歩み寄ると、

 笑みを浮かべて、そっと自分の手を伸ばした。


「なら、俺の家族になれ……」

「……え?」

「そのエリーさん史上最強の力を、俺の家族を守る為に使え」

「あなた、何を言って……」



























 最近、俺の周りには、不可解なことが多くてな、

 これから先は、正直、何が起こるかわからないんだ。


 だが俺は、メリーたちを守ると約束した。

 何があっても、その約束だけは果たさなくてはいけない。


 だから、お前の魂を俺にくれるのなら、

 お前の力を、俺の家族を守るために使ってほしい。



























          俺の大切な、家族の一人として……



























 その言葉に、エリーさんは笑みを浮かべた。


「全く、おかしな人ね。あなた……」

「よく言われる。俺が主人じゃ、不満か?」

「いいえ。むしろ、少しあなたに興味が湧いたわ」


 そういって、エリーさんは太狼の手を取った。


「よくここまできたな。エリー……」

「うふふっ、これからよろしくね。ご主人様……」

「あぁ、よろしく頼む」


 そういって、二人は熱い握手を交わした。



























 あたしエリーさん。今、あなたの想いに応えたくなったの……

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