第26話 【 最強 】

 太狼は、謎の人物からの電話を受け、

 切られた後、一夜達と共に困惑していた。





「なぁ、なんか名前違くなかったか?」

「エ、エリーさん? って言いました?」

「俺もそう聞こえた。滑舌が悪いだけか?」

「さ、さぁ……」

「はぁ、確かに『 メリーさんの来すぎ 』とは言ったけどよ」


「それにしても、不気味な声の方でしたね」

「ったく、めんどくせぇの来てねぇだろうな」


「お兄ちゃん、怖いよぉ……」

「にぃに、こわいこわい……」

「大丈夫だ。お前らは、何があっても俺が守っから」

「お兄ちゃんっ!」

「にぃにっ! かっこいいっ!」

「……太狼さん」


 太狼はそう宣言して、みんなに笑いかける。

 すると、再び太狼のスマホの着信音が鳴り響いた。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしエリーさん……』

『てめぇ、やっぱメリーさんじゃねぇな?』

『今、タバコ屋さんの角にいるの……』

『何が目的だ。てめぇもメリーと同じ類か?』

『…………』



























               ……うふふっ。



























    その微かな笑い声の後に、ブチッと通話は切れてしまった。



























            笑ってんじゃねぇよッ!!!



























 太狼がキレながら、盛大にツッコミを入れる。


「お、落ち着いて。太狼さん……」

「エリーさんって誰だ、メリーさんの友達か?」

「いや、あたしは聞いたことないですけど……」

「はぁ、得体の知れねぇもんまで来んのかよ」

「むしろ、あたし達は得体が知れてるんですか?」

「少なくとも、今のやつよりはな」


 すると、再びスマホの着信音が鳴り響いた。


『はい、もしもし……』

『うふふっ、あたしエリーさん……』

『せめて『 もしもし 』くらい言えよッ!』

『今、あなたの家の前にいるの……』

『上等だ、俺から出向いてやらぁッ!』


 そういって、太狼は通話を切ると、

 堂々と一人で、外に向かっていった。



























 太狼が家を出るも、外に人の気配はなかった。


「ったく、またどっかから出てくんのか?」

「き、気をつけてくださいね。太狼さん……」

「お前らはそこに居ろ。近づかれっと巻き込んじまう」


 すると、再び太狼のスマホの着信音が鳴り響いた。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしエリーさん……』

『…………』


 太狼が全神経を集中させて、その場に身構える。

 すると、エリーさんは思わぬ言葉を太狼に告げた。


『……今、』



























            ……あなたの目の前にいるの。



























 その瞬間、太狼の目の前に空間の裂け目が現れ、

 細い指をした白い手が二本伸び、裂け目を広げた。


「なっ、何……あれ。あんなの、もう……」

「お兄ちゃん……」

「にぃに……」


「いや、もう貞子じゃねぇかッ!!!」


 黒く長い髪を揺らしながら、空間の裂け目から出てくると、

 全身が真っ黒なドレスに包まれた、謎の女性が姿を見せた。


「うふふっ、あたしエリーさん……」

「…………」

「今、あなたの後ろをいただきに来たの……」


 そう告げると、どこからともなく黒い鎌を取りだし、

 グルングルン振り回すと、太狼の目の前に突きつける。



























       エリーさん史上……最強の実力、見せてあげる。



























       そういって、エリーさんは不敵な笑みを浮かべた。



























「基準がわかんねぇんだよッ!!!」

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