第25話 【 穏やかな日々 】

 三凪みなが来てから数週間、太狼は穏やかな日常を送り、

 その日は一夜とゲームをしながら、楽しく過ごしていた。





「一夜お姉ちゃん、頑張ってっ!」

「にぃに、ふぁいとっ!」


「一夜、あと少しだ。行くぞっ!」

「はいっ! 太狼さんっ!」


 二人は協力プレイで、敵チームに勝った。


「やったぁっ! いやぁ、危なかったですね」

「お前、なかなか強くなったな」

「いやいや、太狼さんには敵いませんよ」

「こういう風に人とやるのも、楽しいもんだな」

「えへへっ。そう言って貰えると、嬉しいですっ!」


 すると、三凪がクイクイっと太狼の裾を引っ張った。


「……ん? どうした? 三凪……」

「にぃに、おなかすいた……」

「あぁ、もうこんな時間か。そろそろ飯にするか」

「……うんっ!」


「でしたら、今から何か作りますね」

「俺も手伝うよ、お前ら少し待ってな」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、いつもありがとう」

「にぃに、ねぇね、ありがとう」

「あぁ、いいってことよ」

「すぐに出来るので、少し待っててくださいね」


 そういって、二人は台所に立った。


「なんだか、こうしてると本当に家族みたいだな」

「えへへっ、あたしと夫婦ですか? 太狼さん……」

「お前が高校生くらいの見た目じゃなきゃ、そう見えたかもな」

「見た目はこれでも、幽霊ですから。法律は引っかかりませんよ」

「法律どころか、書類上に存在しねぇだろ。お前ら……」

「まぁ、そうなんですけど……」


 くだらない冗談を言いながら、太狼が食材を切り、

 言葉の要らないコンビネーションで、一夜が調理を進める。


 その姿は、まるで本当に理想の夫婦のようになっていた。


「ほら、出来たぞ。待たせたな……」

「うわぁっ! ハンバーグだぁっ!」

「はんばーぐっ! はんばーぐっ!」

「それじゃ、食べましょうか」


「ほら、お前らも手を合わせて……」

「は〜いっ!」

「おててをあわせて……」

「はい、いただきま〜す」


「「「 いただきま〜すっ! 」」」


 まるで家族のような風景を醸し出しながら、

 四人は、平穏な日々を送って過ごしていた。


「うん、なかなかの出来だな」

「美味しくできてますね、さすが太狼さんですっ!」

「一夜が俺に、色々と教えてくれたおかげだよ」

「えへへっ。これぐらい、恩返しにもなりませんよ」


「全く、俺には勿体ないくらいの嫁だな」

「……よ、嫁っ!?」

「こうやって見ると、傍からはそう見えんのかなってよ」

「そ、そうかもしれませんね。えへへっ……」


 一夜は顔を赤くしながら、ニヤニヤしてご飯を食べていた。

 そんな平穏な日々の中、久しぶりに太狼の着信音が鳴った。


「……ん? 誰だ?」

「ゲームのフレンドさんか誰かでしょうか?」

「いや、電話番号を知ってるやつはいないと思うが」


 そういってスマホの画面を見た瞬間、太狼が固まった。


「……ど、どうしました?」


 一夜が恐る恐る声をかけると、太狼はゆっくり目を合わせ、

 自分の持っているスマホ画面を、そーっと一夜に見せてきた。



 ──すると、そこには『 非通知 』と書いてあった。



「キングサイズのお布団、役に立ちそうですね」

「冗談だろ。まだ増えるのか? メリーさん……」

「あたしも冗談のつもりでしたが、事実かかってきてますし……」

「今ぐらいならまだしも、5人10人と増えられたら、俺でもさすがに困るぞ」

「むしろ、何をしたらそんなにメリーさんが集まるんですか」

「いや、俺が知りてぇよ。そんなの……」


「なら、次に来たらどうするんですか?」

「正直、相手によるだろ。初めはどの道、俺を刺しに来るんだろ?」

「ま、まぁ……そう、ですね……」

「俺だって、出来れば怪我はしたくないしな」


 太狼は呆れた顔をして、通話ボタンを押すと、

 スマホの通話音声を、スピーカーに切り替えた。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしエリーさん……』

『はぁ、やっぱりそうな……ん? 誰だって?』

『今、ゴミ捨て場に居るの……』

『ちょっと待てっ! お前、今、名前なんていっ……』


 ブチッと通話は切れ、四人を沈黙が包み込んだ。



























「いや、マジで誰なんだよッ!!」

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