第23話 【 贈り物 】
メリーさんたちと買い物に行って数日後、
太狼たちはいつも通りの日常を過ごしていた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、見てっ!」
「うわぁ、とても綺麗なお花の絵ですね」
「本当だな、良く描けてる」
「えへへっ、お絵描きって楽しいね」
「あたしにも、これぐらいの画力があれば……」
「お前の画力も、他の奴には真似出来ないぞ?」
「それは、どういう意味ですか? 太狼さん……」
「あんな個性的なイラスト、俺は見たことないからな」
「いじわるを言う太狼さんは、晩御飯抜きですっ!」
「悪かったって、そう怒るなよ」
「ふ〜んだっ! ぷいっ!」
一夜が不貞腐れながら、頬を膨らませそっぽを向く。
「それにしても、クレヨンでここまでかけるのも、もはや才能の域だな」
「太狼さん、なんで色鉛筆は買わなかったんですか?」
「お前らに色鉛筆なんか渡したら、次の日には全て赤一色に染まっちまうだろ」
「そんなことしませんよっ! 寝てる時ぐらいしか……」
「はぁ、説得力の欠片もねぇな」
すると、ピンポーンッと、家のインターホンが鳴った。
「おや、誰か来ましたね」
「多分、配送業者だな。この間の布団だ」
「あぁ、なるほど……」
「ちょっと待ってな」
そういって、太狼は玄関へと向かい、
戻ってくると、大きな箱を二つ抱えていた。
「おおっ! 思ったより大きいですね。これ……」
「アイス食った後に、もう一回布団屋に寄っただろ?」
「あぁ、そういえば寄ってましたね。変更したいことがあるって……」
「あの時、一夜の意見も含めて、キングサイズにしたんだよ」
「そうなんですかっ!? やったぁ〜っ!」
「これだけでかけりゃ、多少、転がっても外には出ないからな」
「これで、新しいメリーさんが来ても大丈夫ですねっ!」
「だから、そういうことを口にするなよ。本当に来るから……」
そして、もう一つの箱をメリーさん達が見つめる。
「太狼さん、こっちは?」
「にぃに、おふとん二つ?」
「こっちは布団じゃない、お前らへのプレゼントだ」
「……プレゼント?」
「あぁ、開けてみな……」
メリーさん達が箱を開けると、箱の中から、
店にあった、巨大なクマのぬいぐるみが出てきた。
「シェ、シェリーちゃん?」
「にぃに、これ……」
「お兄ちゃん、買ってくれたの?」
「あぁ。アイスの時の礼だ、大事にしてやってくれな」
そういって、太狼がメリーさん達を見つめながら、小さく微笑んだ。
「えへへっ。にいに、大好きっ!」
「やったぁ〜っ! お兄ちゃん、ありがとうっ!」
「おう、どういたしまして……」
二葉と三凪は、嬉しそうに巨大なぬいぐるみにに抱きついていた。
「よく買う勇気が出ましたね。太狼さん……」
「あぁ、まぁ、店員にはスゲェ目で見られたがな」
「やっぱり、見られたんですね」
「『 お前、こんなの趣味あるの? 』みたいな冷たい視線が、とても痛かった」
「生々しい感想はやめてくださいよ」
「それでも、こいつらがこうして笑ってくれるなら、それだけの価値はあるさ」
喜ぶ二人を、太狼が嬉しそうに見つめる。
「嬉しそうですね、二人とも……」
「あぁ、そうだな」
「お布団、ありがとうございます。太狼さん……」
「おう、どういたしまして……」
「なんかもう今から、寝るのが楽しみです」
「結局は固まって寝ないと、また背中を狙われるんだけどな」
「えへへっ、そこは愛情表現だと思ってくださいっ!」
「表現の仕方が重いんだよ。お前ら……」
「こんなにスリルと興奮を味わえる愛情表現は、他にありませんよ?」
「愛情表現に、スリルは要らないと思うけどな」
太狼は呆れながらも、一夜に笑顔を返していた。
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