第20話 【 おふとん 】

 三凪が来た次の日、太狼は三人のメリーさんと共に、

 三凪の服を買うついでに、他の日用品を見て回っていた。





「太狼さん、何を買うんですか?」

「今日のターゲットは、デカい布団だ……」

「……布団?」

「さすがに、この人数で一つの布団は厳しいからな」

「あぁ、なるほど……」


「みんなで寝られるサイズがあればいいんだけどなぁ……」

「でも太狼さん、ちゃんとあたし達を抱いて寝てくれますけどね」

「そりゃ、後ろを取られたら俺が殺られかねないからな」


 太狼の後ろ姿を、一夜がじーっと見つめる。


「あの、太狼さん……」

「……ん?」

「それだけ、ですか……?」

「……え?」

「いえっ! なんでもないです、えへへっ……いきましょう!」

「……?」


 そういって、太狼たちは布団コーナーに向かった。


「ダブルベットサイズか、これぐらいなら……」

「太狼さんっ! これどうですかっ!? 凄く大きいですよっ!」


 一夜が、キングサイズのマットレスの上に寝転がる。


「それでもいいが、さすがにデカ過ぎないか?」

「なんかこう、また増えた時の為に……」

「やめろ、フラグを立てるなフラグを……」


 すると、太狼が違和感に気がつく。


「おい、三凪はどうした?」

「あれ? さっきまでここに……」

「お兄ちゃん、あっち……」

「……ん?」


 そう言われて、二葉の指さす方を太狼が見ると、

 巨大なクマのぬいぐるみに抱かれて、眠る三凪がいた。


「凄く大きなぬいぐるみですね」

「すごく気持ちよさそうだね、お兄ちゃん……」

「あぁ、まぁ。それはそうなんだが……」


( こうやって見てると、ぬいぐるみが三凪を抱いてるみたいだな )


「うわぁ〜っ! フワフワですよっ! 太狼さんっ!」

「あたしも、触りたい……」


 三人のメリーさんが、嬉しそうにクッションに抱きつく。


( これはあれか、か )


「にぃに、このおふとん、欲しい……」

「布団じゃねぇし、デカすぎだろ」

「……ダメ?」

「まぁ、ダメだな……」

「そっかぁ……」


 そういって、少し悲しそうに三凪が離れていく。


「というか、これってそもそも売ってるのか?」

「えっとぉ、【 シェリーちゃん 】。十二、万円……だそう、です……」

「バカ高ぇし、名前だろ。どこのマスコットだよ」

「……マスコット?」

「著作権の塊みたいな遊園地にも、似たようなのがいるんだよ」

「なんか怖いですね、その遊園地……」

「背後から『 ハハッ 』って聞こえたら、終わりだと思え……」

「やめてくださいよ、怖くなるじゃないですかっ!」

「いや、お前らと大差ねぇだろ」


「でも、太狼さんのお家だったら、これも置けそうですけどね」

「そりゃ、一人暮らしには有り余った家だが、それにしてもよぉ……」

「……なんですか?」

「俺がこれを買っていくって、どう思うよ……」


 そういって、強面の太狼がぬいぐるみの横に並んだ。


「…………」

「…………」


「いいと思いますよ。ギャップ萌え部分が増えて……」

「おい、今の間はなんだ。あと、目を逸らすな」


 じーっと睨む太狼から、一夜が必死に目を逸らす。


「まぁいい、とりあえず布団を買ってくるから、チビ達を見ててくれ……」

「はい、わかりました……」





 そういって、太狼は一人、レジへと向かっていった。

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