第18話 【 迷子 】
太狼は、メリーさん(迷子)がいるコンビニを知ると、
急いで立ち上がり、靴を履いて、ドアを蹴り開けた。
「太狼さん、まさかメリーさんを探しに行くんですかっ!?」
「ガキが泣いて助け求めてんだぞ、行かねぇバカがいるかッ!」
「わ、分かりましたから、通話切ってください、通話っ!」
「なんでだよっ! 居場所が分からなくなっちまうだろっ!」
「霊力が減っちゃうんですっ! その子の霊力がっ!」
『……あぁ、クッソ……必ず迎えに行くから、そこで待ってろッ!』
スマホに大声で叫ぶと、太狼は目にも止まらぬ速度で走った。
太狼は街中を駆け回り、全てのファミリィマァトを探した。
すると、とあるファミリィマァトの中で、
人形をもって泣いている、一人の幼女を発見した。
「おいっ! お前、メリーかっ!?」
「……にぃい、助けて……」
「はぁ、よかった。見つけた……」
「お客さん、この子はお宅のお子さんですか?」
「……え? いや、子供っつぅか……その、えっと……」
困った様子の店員が、不機嫌そうに太狼に語り掛ける。
その店員のネームカードには、《 店長 》と書かれていた。
そして、うるうるした瞳で見つめる幼女の目を見て、
太狼は深呼吸をすると、息と頭の中を整理して、一言告げた。
はい、うちの子です。
すると、泣いていた幼女の瞳が、大きく見開いた。
「この子、スイーツ勝手に食べちゃったんですけど……」
「すいません。俺が金を払いますんで、ここはどうかっ!」
「そう言われましても、こういうのは……」
「お願いしますっ! なんなら、ここのスイーツ全部買ってくんでっ!」
「…………」
「どうか、お願いしますっ!!!」
太狼が店長に頭を下げて、深々と謝罪する。
すると、それを見た幼女も、一緒に頭を下げた。
「ごめん、なさい……」
「…………」
「すいませんでしたッ!!」
「……はぁ。分かりました、今回だけですよ?」
「ありがとうございますッ!」
「あり、がとう……」
何度もお礼を言いながら、太狼は店長に深々と頭を下げ、
最後には店長の遠慮を押し切って、全てのスイーツを買って帰った。
二人は帰り道、肩車をしながらスイーツを食べていた。
「……美味いか?」
「……うんっ!」
「そうか、そりゃよかった……」
「にぃに、きてくれた……」
「ったく、肝が冷えたぞ……」
「えへへっ。にぃに、大好きっ!」
「お前、なんで勝手に食ったんだ?」
「メリーね、お腹すいたの」
「いや、それだけで食っちゃダメだろ」
「いっぱいお電話したらね、お腹すいたの」
「待て、霊力って空腹のこと言ってんのか?」
「……?」
キョトンと顔を見下げるメリーを見て、太狼はため息をついた。
……はぁ、やっぱ通信制限は痛てぇなぁ。
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