第15話 【 牙狼 】
太狼はメリーさん達と買い物を済ませて、
駅からの帰り道を、ゆっくりと歩いていた。
「とりあえず、これだけ買えば十分だろう」
「ですね。なんか、凄く楽しかったです」
「えへへっ、ありがとうっ! お兄ちゃんっ!」
「あぁ、どういたしましてだ……」
メリーさん(幼女)が、嬉しそうに笑う。
「子供がいるって、こんな気持ちなんだな」
「なんか良いですね。こういう生活も……」
「俺に妻と子供ねぇ……」
「つ、妻っ!?」
「さっき言ってたろ? 店員が……」
「あ、あぁ。そうですね、えへへっ……」
「傍から見れば、そういう風に見えるんだな〜ってよ」
すると、メリーさん(少女)が立ち止まった。
「あ、あの……た、たたた太狼さんっ!」
「……ん?」
「あ、ああああたあたあた、あたあた……」
「どうした? 壊れたラジカセにみたいになってんぞ?」
「あたしが、その……た、太狼さんの……その、えっと……」
「……?」
「太狼の、お……おく、おくさ……」
その瞬間、メリーさん(少女)のすぐ真横を、
二人乗りのバイクが、勢いよくすり抜けていった。
「……きゃっ!」
「お姉ちゃんっ!」
「おいっ! 大丈夫かっ!?」
メリーさん(少女)がよろけたのを、太狼が走って受け止める。
「てめぇっ! どこ走ってんやがんだっ!」
「ははっ、余所見してるのが悪いんだよっ!」
「太狼さん、大変ですっ!」
「どうした? どこか怪我したか?」
「バックを、バックを取られましたっ!」
「……バック?」
太狼がメリーさん(少女)の手元を見ると、
持っていたはずの小さなバックが、消えていた。
「アイツ、ひったくりかっ!」
「あの中に、あたしとメリーちゃんの本体がっ!」
「本体って、まさかメリーさん人形かっ!?」
「あれが近くに無いと、
それを聞いた瞬間、太狼の中で何かが外れた。
ひったくり達は、バックを持って逃げていた。
「へへっ、チョロいぜ……」
「あとは逃げ切れば、俺たちのものだな」
「ははっ、バイク相手に追いつけるやつなんか居ねぇだろ」
「まぁ、そりゃそうだなっ! ぎゃはははっ!」
すると、サイドミラーに何かが映った。
「……あ?」
「……ん? どうした?」
それに気がついて、二人が後ろを振り向いた。
逃がさねぇぞ、ゴラァァァアアッ!!
二人が後ろを振り向くと、ブチ切れた太狼が走ってきていた。
「うわっ! さっきの奴だっ!」
「あいつ、俺らのスピードに追いついて来たのかっ!?」
「返しやがれ、クソ野郎ォォォォォオオオッ!!!」
「おいっ! もっとスピード上げろっ!」
「わ、分かってるよっ!!」
ひったくりがバイクを加速させて、逃走を図る。
それに負けじと、太狼も走る速度を更に上げる。
「なんであいつ、バイクに付いてこれるんだよっ!」
「知らねぇよっ! あんな人間見たことねぇよっ!」
二人が振り向くと、太狼は鬼の形相をしていた。
「いやっ! もうあれ人間じゃねぇよっ!」
「一直線じゃダメだっ! 裏路地に逃げんぞっ!」
「急げ急げっ!! 早くしねぇと追いつかれんぞっ!!」
ひったくりが道を変えて、裏路地に入る。
それを、忍者のように屋根を走る太狼が、
人間離れした運動神経で、走って追いかける。
「クソっ! まだ追いかけてきやがるっ!」
「そんなに大金がはいってんのか、このバック……」
「そんなの、絶対返す訳にはいかねぇぞっ!」
「あぁ、絶対に逃げ切ってやるっ!」
「クッソ、ちょこまかと。ゴ〇ブリ野郎共がッ!!」
ひったくりも諦めまいと、更にウネウネと細道に入る。
細道に逃げ込んだのを見ると、太狼はルートを変えた。
ひったくり達が細道を出て、一本道を進むと、
その前には、先回りしていた太狼が待っていた。
「うわぁっ! アイツ、先回りしやがったっ!」
「チッ! だったら、このまま引いてやらぁッ!!」
「そうだっ! やっちまえッ!!」
ひったくりの運転手が、バイクを加速させ、
目の前に立ちはだかる太狼に、一直線に向かう。
それを見て、太狼は静かに武術の構えをとった。
『 太狼よ。例え、誰に嫌われようとも、
自分を信じてくれる者だけは、必ず守れ 』
『 その者の想いに、報いられるように 』
なぁ、爺ちゃん。こんな俺にも、
信じてくれる人が、出来たんだよ。
だから、少しだけ、頑張ってみるよ。
あいつらの想いに、応えれるように。
【 ❖
ひったくりのバイクと、太狼の拳がぶつかった瞬間、
鉄のバイクが、まるで、ガラスのように砕け散った。
( ……やべぇ。なんか、バトル漫画っぽくなっちゃった )
※ ただの日常系ラブコメです。
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