第5話 【 共に過ごす時間 】
太狼はメリーさんを迎え入れた後、
メリーさんの作った手料理を食べていた。
「……うん、美味いな」
「本当ですかっ!? やったっ!」
「あぁ。味噌汁なんか飲んだの、いつ以来だろう」
「えへへっ。これからは、毎日三食作ってあげますね」
「そう言われると、なんだか新婚生活みたいだな」
「……ふぇ?」
メリーさんは、冷静に自分の発言を思い出し、
今、自分が割と大胆な発言をしたことを理解した。
「……あっ!? いや、その。違くて……」
「……ん?」
「えっと、その……えへへっ、お節介……だったら、ごめんなさい」
「まぁ、さすがに毎日ってのはな」
「で、ですよね。すいません……調子に、乗りました……」
「ここに住むからって、変に責任感じなくてもいいんだぞ?」
「あっ。いえ、そういう訳では無いんですが。その……」
太狼は料理を全て平らげて、そっと箸を置くと、
大きく息を吐いて、メリーさんの目を見つめた。
「せっかく一緒に住むんだからよ」
「……?」
「どうせなら、俺にも料理を教えてくれないか?」
「……え?」
二人でやれば、一緒に過ごす時間も増えるだろ?
そういって、太狼はメリーさんに笑いかけた。
「……太狼さん」
「その方が、お前の負担も軽減できるだろうしな」
そう告げる太狼の目を見て、
メリーさんの胸は高まっていた。
「俺が一緒に居たら、邪魔か?」
「い、いえっ! 是非、お願いしますっ!」
「そうか。なら、良かった……」
そう答えると、太狼は自分のお茶碗を持った。
「悪ぃんだが、オカワリ貰っていいか?」
「あっ、はい。任せてくださいっ! えへへっ……」
メリーさんは横にあったお釜から、
ウキウキしながらご飯をよそっていた。
そんな楽しそうなメリーさんを見て、
太狼も静かに、小さな笑みを浮かべていた。
ご飯を食べ終わると、二人で食器を洗っていた。
「なんかいいですね、こういう風に誰かと一緒にやるって……」
「そうだな。なんか、俺も止まった時間が動き出した気がするよ」
「そう言って貰えると、あたしも凄く嬉しいです」
「こういう何気ない時間に、『 幸せ 』があるんだな」
「『 幸せ 』かぁ、そんなの考えたこともなかったなぁ……」
「心は一人だと、ほとんど動かないからな」
「あたしなんて、誰かの心にトラウマを刻むだけの幽霊ですし……」
「それはさすがに物騒が過ぎんだろ。別れを告げられたメンヘラ彼女か」
「しょうがないじゃないですか、そういう幽霊なんですもん」
「なら、これからは『 トラウマ 』より、『 思い出 』を増やそうな」
「……思い出ですか?」
「誰かを幸せに出来るやつは、幸せを貰う資格があるんだってよ」
「……そうなんですか?」
「前に婆ちゃんが、よく俺に言ってた」
「でもそれ、トラウマを刻む幽霊は、普通にダメじゃないですか?」
「何言ってんだ。お前はもう、俺に幸せをくれたじゃねぇか」
「……え?」
真っ直ぐ見つめる太狼の目は、優しい目をしていた。
手料理、美味かったぞ。
ありがとな、メリー。
太狼の言葉に、メリーさんは目を見開くと、
満面の笑みを浮かべて、太狼に言葉を返した。
「……はいっ! どういたしましてです。えへへっ!」
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