第3話 【 嫌われ者 】
先にワンタンスープを飲み終えると、
太狼はスマホを使って、何かしていた。
「……何してるんですか?」
「スマホのゲームだ。今、イベント期間中でな」
「……ゲーム?」
「……あぁ」
「それって、面白いんですか?」
「お前、ゲームやったことないのか?」
「……はい」
「……そうか」
すると、太狼は立ち上がって、一台のゲーム機を用意した。
「……これは?」
「ニンテンドゥスイッチだ、やってみないか?」
「これ、面白いんですか?」
「息抜きには、なかなかいいと思うぞ」
「な、なるほど……」
「飯にはまだ少し早い、暇つぶしにどうだ?」
「なら、あたしに教えてくれますか?」
「あぁ、いいよ。ほら……」
そういって、太狼はコントローラーを渡した。
「おぉ、凄い。私の操作で動いてます」
「このボタンを押すと攻撃で、ここで移動……」
「なるほどなるほど。なら、このボタンは?」
「ここはガードだ。相手の攻撃を防ぐ時に使う」
「なるほど、分かりました。やってみますね」
「チーム戦にしとくから、自分なりにやってみろ」
「……チーム戦?」
「俺はお前の仲間だから、攻撃が当たらねぇんだよ」
「あぁ、なるほど。なんだろう、物凄く心強いですね」
そこから二人は二時間ほど、ゲームに没頭していた。
ゲームを終えると、メリーさんは満足気に笑っていた。
「はぁ、楽しかったぁ〜っ!」
「そうか。そりゃ何よりだ……」
「太狼さん、強いですね。流石でした……」
「まぁ、俺はこれで食ってるからな」
「……え?」
「自分の戦いをネットに流すことで、収入を得てるんだよ」
「な、なるほど。そんな仕事があるんですね」
「まぁ、現代はネットワーク社会だからな」
そういって、太狼はゲームを片付けていた。
「太狼さん、優しいですね」
「なんだよ、急に……」
「普通、見ず知らずの相手にこんなおもてなししませんよ」
「まぁ、普段は人とあまり話さないからな。俺は……」
「……そうなんですか?」
「何故か怖がられるせいで、人が寄り付かなくてな」
「太狼さん、めちゃくちゃ強そうですもんね」
「学校時代は、色んな不良とよく喧嘩もしてたし……」
( えぇっ!? やっぱり、太狼さんって…… )
「それはまた、なんでですか?」
「さぁ、なんか歩いてるだけで来るんだよ」
「……え?」
「俺は普通に過ごしたいんだが、勝手に悪い噂が流れててな」
「な、なるほど。それはまた……」
「そんなのを返り討ちにし続けてたから、友達の一人もいない」
「返り討ちにしてたんですか!?」
「しょうがないだろ、歩いてるだけで襲ってくるんだから」
「ま、まぁ。そりゃそうですけど……」
「そしたら、【 太陽をも喰らう影狼 】なんて呼ばれて始めてな」
「なんですか、その無茶苦茶強そうな異名は……」
「その噂がさらに不良を呼んで、最後にはみんな離れて行った」
「……太狼さん」
「だから、急に背後に何かが迫ると、過剰に反応しちまうんだよ」
(だから、あたしが近づいた時に、あんなに速く……)
「親は昔から居ねぇし、爺ちゃんたちも死んで、今は一人だ」
「なんかもう、人生の理不尽が極まってますね」
「まぁな。だから、俺も今日は楽しかったよ。ありがとな……」
「……ふふっ。いえっ! こちらこそですっ!」
太狼の言葉に、メリーさんとを満面の笑みを返した。
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