第2話 【 温もり 】
太狼は、メリーさん家の前でと出会った後、
寒いからという理由で、家の中へと上げていた。
( えっと、あたしはどうしてシャワーを浴びてるんだっけ? )
メリーさんは、当たり前のように困惑していた。
家は古い一軒家で、一人暮らしには広いくらいだった。
そして何故か、メリーさんはシャワーを浴びていた。
シャワーを浴び終えたメリーさんは、そっと脱衣場の扉を開けた。
「あ、あのぉ……」
「……あ?」
「この格好は、流石に……」
メリーさんは、ワイシャツ一着羽織って出てきた。
「バカヤロウ、それは俺のワイシャツだっ!」
「……えっ? これを着させようとしたんじゃ……」
「それは乾かしてんだよっ! お前のは洗濯機の上のジャージだっ!」
「ごっ、ごめんなさいっ! いいいま、着替えてきますっ!」
そして、扉が閉じると、再びゆっくり扉が開いた。
「あ、あのぉ……」
「……あ?」
「し、下着とかって、ありませんか?」
「……は?」
「……えっと、その……下着が、無くて……」
「てめぇ、俺が女性もんの下着を持ってる変態だと思ってんのか?」
「……ひぇっ!? いや、その。違くて……」
「お前の履いてきたやつ洗って、乾いたら履けよ」
「……そ、そのぉ……」
「……あ?」
「あたし、最初っから履いてなくて……」
……は?
「じゃあお前、ここまでノーパンで来たのかっ!?」
「しょうがないじゃないですかっ! 元からなかったんですからっ!」
「元ってなんだよっ! 家を出る時に履いてこいよッ!」
「【
「【
「あたしの家族は……」
その言葉は続かず、メリーさんはそっと俯いた。
「あっ、そうだ……」
「……え?」
そういうと、太狼は物置部屋に入って、
何かを探して手に入れると、再び戻ってきた。
「ほら、これならどうだ?」
「……な、なんですか? これ……」
「大人用の紙オムツだ、爺ちゃんが昔使ってたヤツの残りだ」
「こ、これを履けと?」
「何もねぇよりマシだろ。これ以上のもんはねぇよ」
「わ、分かりました……」
メリーさんはそれを履き、ジャージを着て、
全ての装備を整えてから、リビングに戻ってきた。
「あ、あの……」
「……ん?」
「あたしのこと、怖くないんですか?」
「……なんでだ?」
「あっ、いや……普通、怖がるものかと……」
「そうなのか? 俺は別に……」
「あ、そうですか……」
「お前こそ、俺のこと怖くないのか?」
「……え?」
「いや、俺の顔を見ても逃げなかったからよ」
「……えっ!? あ、いや。その、別に……」
「……そうか」
( どうしよう、怖すぎて体が動かなかったなんて言えない )
冷や汗をダラダラとかきながらも、
メリーさんは、じーっと座っていた。
「えっと、お兄さんは……」
「俺は
「じゃあその。太狼さんは、あたしをどうするつもりですか?」
「いや、むしろ俺が聞きたいんだけど……」
「……え?」
「お前、何しに俺に会いに来たんだ?」
「……えっ!? それはその、後ろを取ろうと……」
「後ろをとって、どうすんだよ……」
「それは、そのぉ……」
じーっと見つめる太郎の鋭い眼差しに、
メリーさんは、ナイフを隠して固まった。
「俺が家に居なかったら、どうする気だったんだ?」
「そしたら、中で待ってると思いますけど……」
「普通に不法侵入だろ、それ……」
「……え? だって、外寒いですし……」
「それで許されんなら、警察は要らねぇんだよ」
そういって、太狼がワンタンスープの蓋を開けた。
「おっ、いい具合だ。ほら……」
「……え?」
そういって、太狼はメリーさんにワンタンスープを渡した。
「あたし、これ食べていいんですか?」
「要らねぇなら、俺が食うが?」
「あっ、いや。その、いただきます……」
そういって、メリーさんはワンタンスープを一口飲んだ。
( ……凄く、暖かい )
それを見て、太狼は静かに笑みを浮かべると、
自分のワンタンスープを開けて、ゆっくり啜った。
「はぁ〜、暖まるな……」
「はい、ですねぇ……」
二人はワンタンスープをゆっくり飲みながら、
ホッと息を着くと、芯から温もりを味わっていた。
メリーさんは困惑しながらも、太狼の優しさに触れ、
悪い人じゃないことを知り、静かに笑みを浮かべていた。
( ……ふふっ、おかしな人だなぁ )
そんな温もりの時間が、しばらく続いていた。
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