❀ 後ろが取れないメリーさん ❀

大神 刄月

第1話 【 メリーさん 】

 ※ この物語は、一行40文字幅を基準に制作しております。


   スマホの縦読み、または画面回転で横画面、

   PC、タブレット等、一行幅を広くしてご覧ください。










 太狼はある冬の日、コンビニで晩御飯を買うと、

 そのまま一人で夜道を歩き、自分の家へと向かっていた。





 その時、突然、スマホの着信音が鳴った。


( ……非通知、誰だ? )


 太狼は、何食わぬ顔でスマホを見つめて、

 そのまま通話ボタンを押すと、耳に当てた。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしメリーさん』

『……メリーさん?』

『今、ゴミ捨て場にいるの……』

『……は?』


 すると、ブチッと電話は切れてしまった。


( なんだ今の、間違い電話か? )


 一方的な会話で切れた謎の通話に、

 太狼は、その場に立ち止まっていた。


( ……というか、自分を『さん』付けってどうなんだ? )


 だが、特に深く気にすることなく、

 太狼は自分の家へと、再び歩き出した。


 すると、再びスマホの着信音が鳴った。


( ……また非通知だ、今のやつか? )


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしメリーさん』

『またお前か、俺に何か用か?』

『今、タバコ屋さんの角にいるの……』

『……タバコ屋? どこのだ?』


 すると、またブチッと通話が切れてしまった。


( おい、情報量少なすぎんだろッ! )


 太狼は情報の少なさから、考えることを諦めて、

 何も気にすることなく、再び家に向かって歩き出した。


 すると、再びスマホの着信音が鳴った。


( …………………… )


 さすがに面倒くさすぎてやめようとしたが、

 念の為、最後にもう一度だけ出ることにした。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしメリーさん』

『…………』

『今、あなたの家の前にいるの……』

『何で勝手に来てんだよ、まだ帰ってねぇよ』


『え、家にいないんですか?』

『今、帰ってんだよ。あと三分で着くから、待ってろ』

『……え? 待ってていいの?』

『別に帰ってもいいが、来た意味なくなんだろ』

『う、うん……』

『なら待ってろ、すぐ帰っから……』

『わ、分かりました……』


 そういって、太狼は通話を切った。






 太狼が家の前に着くと、周囲に人の気配は無かった。


( チッ。待ってろっつったのに、いねぇじゃねぇか )


 舌打ちをして、じーっと見渡していると、

 突然、太狼のスマホの着信音が鳴り響いた。


『はい、もしもし……』

『もしもし、あたしメリー。今……』

『……ッ!?』


 その瞬間、太狼が背後に迫った何かに気が付き、

 目にも止まらぬスピードで、その場から姿を消した。


「あなたの後ろに……あれ?」



























           誰の、後ろだって?



























 背後を取ったつもりの少女の後ろから、

 電話越しに聞いていた、男の低い声が響いた。


 少女が振り向くと、背の高い強面の、

 イカつい青年が、じーっと見下ろしていた。


「あ、あの。えっと……」

「てめぇか、メリーってのは……」


 少女が涙目になりながら、後ろに後ずさる。

 そこに、ジリジリと怖い顔の青年が迫っていた。


「あた、あた……あたし、その……メ、メリーさんで、えっと……」

「俺にイタズラ電話とは、いい度胸じゃねぇか」


 ゴゴゴゴッと言う音が目に見えそうな圧力で、

 青年は、涙目の少女にゆっくりと忍び寄って行った。


「ご、ごめんなさい。あたし、その。えっと……」

「俺の後ろを取ろうだなんて、百万年はえぇぞ。小娘……」

「……ご、ごめん……ごめん、なさい。あたし……」

「…………なぁ、お前」


 少女は壁にぶつかって、逃げ場を失うと、

 慌てて目を瞑って、心から自分の死を覚悟した。



























       その時、ポンッと頭に手が置かれた。



























        お前、そんな格好で寒くねぇのか?



























      その言葉に、少女はゆっくりと目を開けた。



























              ……へ?



























 こうして、太狼はメリーさんと出会った。

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