かいぞく姫と魔法のティアラ

仲間入り

「ほれ！　そこ座（すわ）れ！　一列（いちれつ）になって座（すわ）れ！」

「……何（なん）で俺（おれ）ら怒（おこ）られてんの？」

「疑問（ぎもん）」

「そこ！　静（しず）かに！」

「は、はいっ！」

「沈黙（ちんもく）」

　怒（おこ）られて急（きゅう）に小（ちい）さくなる海賊（かいぞく）ども。さっきの勢（いきお）いはかき消（け）してやったわ、全（まった）く。

　冗談（じょうだん）じゃないのよ。

「誰（だれ）ッスかぁ、この人（ひと）連（つ）れこんだのぉ」

「そこ！」

「ヒィエェッ！　はいッス！」

「この縄（なわ）を外（はず）して」

「えぇ？」

「良（い）いから外（はず）しなさい！」

「はいッスゥ！」

　こうしてきっちり立場（たちば）逆転（ぎゃくてん）した四人（よにん）が向（む）かい合（あ）った。その様（さま）はまるで先生（せんせい）とやんちゃ生徒（せいと）三人組（さんにんぐみ）。

「良（い）いこと？　そこの……」

「ジャックさんです」

「ドンク」

「ディーディーッス」

「なるほど、船長（せんちょう）がジャックで大（おお）きいのがドンクで小（ち）っこいのがディーディーね」

「ちっ……！？」

「何（なに）？」

「い、いえっ、何（なん）でもありませんッス」

「それじゃあ仕切（しき）り直（なお）すけど。良（い）い事（こと）？　ジャックにドンクにディーディー。あなた達（たち）は何（なん）のために海賊（かいぞく）やってるの？　まさか私（わたし）を閉（と）じ込（こ）めておくためじゃないでしょ？　どうなのよ、そこんとこ」

「や、それは必要（ひつよう）に応（おう）じてって言（い）うか、その……」

「じゃあ閉（と）じ込（こ）めておいて良（い）いんだ」

「や！　それは、その……何（なん）といいましょうか、深（ふか）いような浅（あさ）いような重（おも）いような軽（かる）いような言（い）い訳（わけ）が」

「もごもご禁止（きんし）！」

「ひゃいっ！」

「オヤブン、怖（こわ）いッスね、この人（ひと）……」

「私語（しご）禁止（きんし）！」

「ひゃいッス！」

　まったくもう。

「それじゃあ言（い）い方（かた）を変（か）えるけど、あなた達（たち）は海賊（かいぞく）になって何（なに）をしたいの？」

「何（なに）って、どういう事（こと）ッスか？」

「私（わたし）、こんな小（ちい）さい時（とき）から色（いろ）んな物語（ものがたり）を読（よ）んできたの。そこでは海（うみ）は自由（じゆう）とロマンのある場所（ばしょ）って書（か）いてあったわ！　沈没船（ちんぼつせん）に人魚達（にんぎょたち）、エルフ、ドワーフ、呪（のろ）いの遺産（いさん）！　宝物（たからもの）は海（うみ）の底（そこ）で怪（あや）しく輝（かがや）き、無人島（むじんとう）の奥（おく）深（ふか）くには危険（きけん）な罠（わな）がいっぱいの遺跡（いせき）が眠（ねむ）っているの！　どう！？　わくわくするわよね！」

「……」

「……」

「……する！」

「ドンク！？」

「アニキ！？」

　ぱっと立（た）ち上（あ）がったドンクに他（ほか）二人（ふたり）が目（め）を丸（まる）くする。

「私（わたし）、その中（なか）でも七（なな）つの海（うみ）を冒険（ぼうけん）し、支配（しはい）したサングイスの話（はなし）が特（とく）に好（す）きだった！　果敢（かかん）に船（ふね）を襲（おそ）っては連戦（れんせん）連勝（れんしょう）！　たばこをふかして大酒（おおざけ）飲（の）み。でもね？　凶暴（きょうぼう）そうに見（み）えて時（とき）には紳士的（しんしてき）。仲間（なかま）想（おも）いの立派（りっぱ）なリーダーよ！　そしてその最後（さいご）は恋（こい）した女性（じょせい）のために尽（つ）くし、果（は）てるの……！」

「感動（かんどう）！」

「でしょ！？」

　互（たが）いに手（て）を取（と）り合（あ）い二人（ふたり）で踊（おど）った。何（なに）、ドンクったら、とってもロマンティストじゃない！　気（き）に入（い）ったわ、好（す）き！

　白（しろ）い目（め）で見（み）られてるとかそういうの、気（き）にしないんだから！

「あなたは？　あなたはどう？　ドンク！」

「おれは世界中（せかいじゅう）の宝石（ほうせき）をこの船（ふね）に集（あつ）めてみたい。サファイア、ダイアにトパーズ、オニキス……でも一番（いちばん）はエメラルド。おれの母（かあ）ちゃんの瞳（ひとみ）の色（いろ）」

「何（なん）てロマンティック！」

「そうしてきれいな布（ぬの）でドレスをこさえて、そこにとりどりの宝石（ほうせき）で作（つく）ったアクセサリーをこうやって飾（かざ）る。いつか美（うつく）しい乙女（おとめ）が気（き）に入（い）って着（き）てくれる日（ひ）を秘（ひそ）かに夢（ゆめ）見（み）ながら……」

「最高（さいこう）ね！」

「だろ？」

「いつか叶（かな）えましょう！」

「嬉（うれ）しい」

「お、おいおい」

「ねえ！　ディーディーはどう？」

「ちょい！」

　ジャックの戸惑（とまど）った声（こえ）なんて聞（き）こえないのよ！

「お、オレッスかぁ？　は、恥（は）ずかしいッスよぉ」

「何（なに）？　私（わたし）がバカにするとでも思（おも）う？　大丈夫（だいじょうぶ）よ、私（わたし）最近（さいきん）まで逆立（さかだ）ちが世界（せかい）で一番（いちばん）好（す）きだったんだから！」

「そうッスか？　じゃあ……、……オレ、実（じつ）は遺跡（いせき）に眠（ねむ）るオーパーツとか古文書（こもんじょ）とかが欲（ほ）しいんス」

「オーパーツって、クリスタルスカルとかの、あの？」

「そ、そうッスそうッス！　そういうのッス！　オレはそういう神秘的（しんぴてき）な謎（なぞ）を解（と）き明（あ）かしたいんス！」

「大興奮（だいこうふん）ね！」

「分（わ）かってくれるッスか！」

「分（わ）かるも何（なに）も大好物（だいこうぶつ）よ！　私（わたし）も古代文字（こだいもじ）とかそういうの大好（だいす）き！　それにクリスタルスカルなんて憧（あこが）れ中（ちゅう）の憧（あこが）れじゃない！　後（あと）はアレでしょ！？　ミイラとか文明（ぶんめい）の遺産（いさん）とか見（み）つけたいタイプでしょ！」

「あああ分（わ）かるッス、分（わ）かりまくりッス！」

「私（わたし）も同（おな）じよおおお！　それもぜひ見（み）つけましょう！」

「マジッスか！！　一生（いっしょう）ついていくッス、アネキ！」

「そんなぁ、大（おお）げさよォ。だって『好（す）き』に良（い）いも悪（わる）いもないじゃない！　私（わたし）も自分（じぶん）の『好（す）き』が共有（きょうゆう）できる仲間（なかま）に会（あ）えて嬉（うれ）しいわ！」

「仲間（なかま）……！」

「仲間（なかま）、ッスか！？　何（なん）だろう、きれいな女（おんな）の子（こ）に言（い）われると照（て）れるッスねぇ！」

「きれい！？　や、ほめすぎよぉ！」

「ほめすぎじゃないッス！　アネキ！」

「姉貴（あねき）！」

「やっだぁ！　お上手（じょうず）！　――よし、良（い）いわよ！　私（わたし）の事（こと）は“アネキ”とお呼（よ）び！」

「やったッスー！」

「そういう姉貴（あねき）は？　夢（ゆめ）、何（なに）？」

「私（わたし）の夢（ゆめ）！？　もっちろん海（うみ）の向（む）こうを見（み）に行（い）くことよ！　そして古代文明（こだいぶんめい）のお宝（たから）とか見（み）つけるの！　はい、拍手（はくしゅ）ー！」

「いぇーい！！」

「ぱちぱち」

　わいわい、がやがや。

「――ちょ」

　きゃっきゃうふふ。

「ちょ」

　ぎゃいぎゃい、ぎゃあぎゃあ。

「ちょ、ちょ、ちょ！　ちょっと待（ま）てえええ！」

「「「ん？」」」

「あ、オヤブン」

「あ、オヤブン。――じゃねぇ！　こっ、ここは俺（おれ）の船（ふね）なんだぞ！　お前（まえ）らいつの間（ま）に乗（の）っ取（と）られてんじゃ――」

　させるか！

「そういうジャックは何（なに）を求（もと）めて海賊（かいぞく）になったの？」

　いきなりつめ寄（よ）られると真（ま）っ赤（か）に照（て）れて後（あと）ずさりしだす。可愛（かわい）いぞ、コイツ。

「へ？　や、俺（おれ）は」

「何（なに）照（て）れてんの？」

「テッ、照（て）れてなんか！」

「一人（ひとり）だけ言（い）わないなんてなしッスからね！　ちゃんと言（い）うッスよ！」

「期待（きたい）」

「お前達（まえたち）まで！」

「ジャックー？」

「いや、俺（おれ）は！！」

　そこまで叫（さけ）んだところで私達（わたしたち）の合体技（がったいわざ）、通称（つうしょう）「エクストリームぴえん」に目（め）を白黒（しろくろ）。

「……何（なん）だその目（め）は」

「私達（わたしたち）三人（さんにん）の連携技（れんけいわざ）、『エクストリームぴえん』よっ！」

「い、いつの間（ま）に示（しめ）し合（あ）わせたんだ――」

「良（い）いから言（い）うッス！」

「言（い）う」

　そして遂（つい）に折（お）れた。

「ああもう分（わ）かった！　じいちゃんが教（おし）えてくれた色（いろ）んな不思議（ふしぎ）なおとぎ話（ばなし）と自由（じゆう）に憧（あこが）れて海賊（かいぞく）になりました！　以上（いじょう）！」

「何（なん）だ、私（わたし）と同（おな）じじゃない！」

　思（おも）わず手（て）を取（と）ると耳（みみ）まで真（ま）っ赤（か）になった。

「さ、触（さわ）んな！！」

　そう手（て）を払（はら）いのけてそっぽを向（む）く。

　やっぱり可愛（かわい）いわ。

「よく言（い）ったッス！　オヤブン！」

「これで船長（せんちょう）も仲間（なかま）」

「いや、さっきから思（おも）ってたんだけどお前（まえ）らどっちの味方（みかた）なんだよ」

「もちろんどっちの味方（みかた）でもあるッスよ？」

「何（なん）だそりゃ！」

　――！　押（お）しこむチャンス！

「そうなの！　ここには敵（てき）も味方（みかた）も関係（かんけい）ない、皆（みんな）同（おな）じ船（ふね）の仲間（なかま）なの！」

「確（たし）かに！」

「いえいいえい！　アネキばんざいッス！」

「お、お前（まえ）ら！」

「どう？　これでも私（わたし）は邪魔（じゃま）かしら？　おりに入（い）れとかなくちゃいけない奴（やつ）かしら？」

　もう一度（いちど）つめ寄（よ）ってみると後（うし）ろにドンクとディーディーがついた。

「オヤブン……」

「船長（せんちょう）……」

「だからそのうるうるした目（め）は何（なん）だよ」

「ね？　ジャックお願（ねが）い。私（わたし）を仲間（なかま）に入（い）れて！　そして閉（と）じ込（こ）めるとか殺（ころ）すとかいうのはやらないで？　ね？　お願（ねが）ぁい」

「……」

　かなり悔（くや）しそうな目（め）をしているぞ。もう一押（ひとお）し！

「ジャック……」

　私（わたし）も必殺（ひっさつ）うるうるおめめ「エクストリームぴえん」をごり押（お）した。

　さあどうだ！！

「ったーく分（わ）かったよ！　お前（まえ）も今日（きょう）からこの海賊団（かいぞくだん）の一員（いちいん）だ！　これで良（い）いんだろう！！」

「わぁぁ……！　良（い）いの！？　ジャック！」

「嫌（いや）ならいつでも船（ふね）から降（お）りて良（い）」

「わーいジャック大好（だいす）きー！！」

「さ、触（さわ）んな、抱（だ）き着（つ）くな！！」

　ぃよっしゃあああ！

「やったわよ、二人（ふたり）ともー！」

「アネキ！　オレともハグッスー！」

「おれも！」

「いくわよー！　わーっ！！」

「「わーっ！！」」

　きゃっきゃ！

「はぁ……かんべんしてくれ……」

　こうして私（わたし）はなんとか一命（いちめい）をとりとめ、同時（どうじ）に海（うみ）の向（む）こうに行（い）くという夢（ゆめ）への切符（きっぷ）も手（て）に入（い）れたのでした！　ちゃんちゃん！

　ほーっほっほっほ！　これくらい楽勝（らくしょう）ザマス！

　＊　＊　＊

「まず船員（せんいん）として活発（かっぱつ）に活動（かつどう）するならその邪魔（じゃま）なドレスと重（おも）たい髪（かみ）の毛（け）をどかすんだ」

「え！？　この髪（かみ）切（き）っちゃうの！？」

　それに一瞬（いっしゅん）たじたじするジャック。

「え、あ、無理（むり）にとは言（い）わないけど……なら最低限（さいていげん）ポニーテールとかに――待（ま）て、アンタ何（なに）してんだ？」

「鏡（かがみ）見（み）てる」

「見（み）りゃ分（わ）かる」

　そのまま沈黙（ちんもく）が走（はし）ること数分（すうふん）。

「よっし、見納（みおさ）め完了（かんりょう）！　ドンク！　思（おも）い切（き）ってジャァキィッ！　っと切（き）っちゃってー！」

「アイサー」

　ジャキッ！！

　ばさばさ！

「い、良（い）いのか！？　せっかくのばしてたのに！？」

「あら？　おかしなこと言（い）うのね？　やれって言（い）ったのはジャックじゃない」

「そりゃそうだけど」

「良（い）いの良（い）いの！　重（おも）かったし、結婚式（けっこんしき）のためにのばしてたし。むしろさっぱりした！」

「可愛（かわい）くして良（い）い？」

「なぁに？　ドンク、どうするの？」

「ボブヘアーにする」

「できるの！？　すごい！」

「……えへん。姉貴（あねき）ならきっと似合（にあ）う」

「お願（ねが）いするわ！　わーっ！　楽（たの）しみ！」

　そのままノリノリでヘアーセットし出（だ）した私達（わたしたち）二人（ふたり）にジャックは「女子（じょし）分（わ）からん」とぼやいていた。

　ふふふ、女子（じょし）という生（い）き物（もの）がそんな簡単（かんたん）に分（わ）かっちゃ困（こま）るのよ。

　その後（あと）はディーディーから船（ふね）に乗（の）る上（うえ）でのキホンと雑学（ざつがく）をたっぷり教（おそ）わった。へえ、その昔（むかし）、海賊（かいぞく）は神様（かみさま）に守（まも）られた英雄（えいゆう）みたいな存在（そんざい）とされていたなんて！　面白（おもしろ）い！

「アネキは全部（ぜんぶ）楽（たの）しそうに聞（き）いてくれるから教（おし）えがいがあるッスよ！」

「だって憧（あこが）れの海（うみ）の知識（ちしき）なんですもの！　それに先生（せんせい）の教（おし）え方（かた）が上手（じょうず）だしね！」

「て、照（て）れるッスよー」

「ああ、こうしてみるとやっぱり私（わたし）の生（い）きる場所（ばしょ）はここだったんだって思（おも）えるわ……！　ああ、お城（しろ）に帰（かえ）りたくないなー」

「オレはアネキのこと、大歓迎（だいかんげい）ッスよ！」

「そうねー、ずっとここにいようかなー」

「それが良（い）いッス！　――あ、あと、その髪（かみ）可愛（かわい）いッス！」

「本当（ほんとう）？　ありがとう！　ドンクがやってくれたのよ！　彼（かれ）、これだけで稼（かせ）げる才能（さいのう）持（も）ってるわ」

「さすがアニキッス！」

「ね！」

「姉貴（あねき）、この服（ふく）、どう？」

　その時（とき）。ひょこっと顔（かお）を出（だ）して差（さ）し出（だ）してきたのは水色（みずいろ）と白（しろ）のストライプの半（はん）そでシャツにベージュ色（いろ）のショートパンツ、そして頭（あたま）に巻（ま）くための白（しろ）いバンダナ。

「最高（さいこう）！　可愛（かわい）い！　さすがドンクね！」

「さすがアニキッス！」

「よーし、そうと決（き）まったらすぐ着替（きが）えなくっちゃ！　……のぞかないでね。のぞいたらぶっ飛（と）ばすわよ」

「の、ののののの、のぞかないッス！」

「恥（は）ずかしい」

　――、――。

「どう？　似合（にあ）ってる？」

「めっちゃめちゃ可愛（かわい）いッス！　アネキ最高（さいこう）ッス！！」

「もうー、ディーディーったらさっきからほめすぎよぉ！　ありがとう」

　ディーディーのほめ言葉（ことば）に照（て）れまくってると上（うえ）から声（こえ）が聞（き）こえた。

「おーい、お前達（まえたち）！　そろそろ行（い）くぞ！」

「ん？　隠（かく）れ家（が）ッスか？」

　甲板（かんぱん）に向（む）かう二人（ふたり）の後（うし）ろを付（つ）いて行（い）く。そのままつたないながら帆（ほ）を張（は）るのを手伝（てつだ）った。疲（つか）れるけど、こういうの大好（だいす）き！

「違（ちが）う。路線（ろせん）変更（へんこう）、とある国（くに）だ」

「国（くに）？」

　首（くび）を捻（ひね）ったディーディーの質問（しつもん）には敢（あ）えて答（こた）えない。

　何（なん）だろう、逆（ぎゃく）にわくわくする。

「おい新入（しんい）り。アンタ名前（なまえ）は？」

　きれいな緑（みどり）の瞳（ひとみ）が突然（とつぜん）きらりとこちらを向（む）く。

「はっ！　ソフィアであります！」

「よしソフィア。お前（まえ）に海賊（かいぞく）の暮（く）らしを見（み）せてやる」

「お宝（たから）探（さが）しッスね！」

「その通（とお）り」

「やったッスー！　アネキ！　これ、めっちゃわくわくするッスよ！」

「本当（ほんとう）は海賊（かいぞく）らしく『略奪（りゃくだつ）』とかしたいところだけどな。少（すく）なすぎてできないから、その代（か）わり頭（あたま）を使（つか）った、いわゆる『頭脳戦（ずのうせん）』だ」

「すごい……！」

「ちなみにほとんど失敗（しっぱい）してるんスけどね」

　小声（こごえ）でささやかれた内容（ないよう）に思（おも）わず吹（ふ）き出（だ）す。

「それが終（お）わったら次（つぎ）はいよいよ本番（ほんばん）だ」

「え？　“本番（ほんばん）”？」

「俺（おれ）らは誰（だれ）にも盗（ぬす）めないとある二（ふた）つのお宝（たから）を盗（ぬす）むことができる唯一（ゆいいつ）の海賊団（かいぞくだん）なんだ。そういうわけだから、そのお宝（たから）を探（さが）す手伝（てつだ）いをお前（まえ）にもしてもらう」

　逆光（ぎゃっこう）の中（なか）ぐるりと振（ふ）り返（かえ）り言（い）った内容（ないよう）に、そしてそのオーラにちょっとどきりとした。

「よーしお前（まえ）ら面舵（おもかじ）一杯（いっぱい）！！」

「「イエッサー！！」」

「い、いえっさー！」

「出航（しゅっこう）だ！！」

　船（ふね）が大波（おおなみ）をかき分（わ）けて進路（しんろ）を大（おお）きく変（か）えた。

　良（い）い日（ひ）になりそう！