第7話 保育園児のけいちゃん、ぷーるの時間

 プールとか初めてなんだけど。

 入ったことないんだよな。川ならあるけど。あれは泳げないとか関係なかったし。

 保育園内に作られた小さな園児用のプール。着替えも小さいから男女で分ける意味もない。

 

「あははー!」

「待ちなさい! ちゃんと水着を着てから!」

 

 素っ裸で走り回る保育園児を横目に俺も着替え始める。

 

「京ちゃん? 大丈夫?」

「せんせい」

「うん、ちゃんと着れてるよ」

 

 確認をしていたのだろう。

 先生が背中を向けた瞬間に俺の前に肌色が広がった。

 

「へ?」

「けいちゃん!」

「……ともや」

 

 何で水着を履いてないんだよ。

 いや、だからといって別に気にしないけどさ。

 

「みずぎ」

「わすれてた!」

 

 いそいそと履き始めるけど、俺はバッチリ見てしまったんだけど。まあ、可愛らしいもんだ。

 

「皆んな、着替え終わったー?」

 

 少しだけ歳をとっている、ベテランといった雰囲気のおばさん先生が確認を取れば元気一杯な子供達の返事が響く。

 

「準備運動するよ」

 

 軽い屈伸運動、腕を回したりだとか。それでも真面目に準備運動をする子供がいるか、どうか。ダラダラとしている訳ではない。

 

「……よし終わり。じゃ、プールに入ろっか」

 

 今回は先生は二人だ。

 注意事項はプールの中に深く潜ったりしないこと。先生たちのいる側からいなくならないこと。つまりは勝手にプールから出ないということだ。

 まあ、俺が破ることなんてないだろう。

 

「ほら、けいちゃんっ!」

「ひゃっ」

 

 冷たい。

 というかいきなり水をかけてくるんじゃない。びっくりするだろ。

 

「あはは、へんなこえー!」

「…………ふんっ」

「わばばばっ」

 

 全力で腕を使って智也に水をかけてやる。少しだけ、こんな遊びをしているとおかしな気分になる。勢いでやったけど……。

 

「どうしたの?」

 

 俺が腕を見ていた事を疑問に思ったのだろう。

 

「すきあり」

 

 誤魔化す様に俺はまた水をかけた。

 何でもない。

 腕には何もないのだから。

 

「やったなー、けいちゃん!」

 

 後はもう、水の掛け合いだ。

 痛みなんてないんだから、それでいいはずだ。俺が気にしすぎてるだけだろう。

 

「……ははっ!」

 

 俺も釣られて笑っていた。

 うん、いつぶりだろうかこうして笑うのは。純粋に楽しくて笑える事なんて滅多にある事じゃない。

 余計な事なんて考えなくていい。

 

「京ちゃん、楽しい?」

「あ、せんせい!」

「せんせー! それー!」

「わわっ、ちょ、智也くん!?」

 

 先生の格好は上は長袖で、下はショートパンツ。動きやすい格好だと思う。

 

「せんせーも!」

「……ふふっ、やったなー!」

 

 先生も水を掛ける。

 と言っても、流石に大人だから優しく掛けるくらいだ。

 

「京ちゃんも、そーれ!」

「わっ、わっ……!」

 

 冷たい。

 けど、心地いい。暑い日だからこそだろう、こう言うのは。

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