第21話 魔法改革
まさか爺ちゃんとの組手以来久しぶりで楽しく張り切ってしまったせいで、このようになってしまうなんて思いもよらなかった。
まぁ他人に教えるのは、自分にとって悪いことではないので別に構わないけど、もう少し魔力を使わずに純粋に体を動かしたかった。
「それで指導をするとは言いますが、俺は何をすれば?」
「そうだね。まずはセイジくんの知っている魔法に関しての知識を披露してほしいな」
さっきまで様付けだったのがくん付けになってるのは、俺がやめてくれと頼んだからだ。
とりあえず、この世界に来て三回目となる俺の知ってる魔法の知識を、実践踏まえてこの国の魔法師団の人たちに披露することになった。
魔法師団の人たちは、今までの常識が崩れさっていくようで驚いていたが、それでも知らないことを知れることが嬉しいのか、みんな喜んで俺の話を素直に聞いてくれた。
その日は、俺が魔法師団の人たちの適性属性を見てあげて終わった。
次の日になり、昨日と同じように今日も魔法師団の面倒を見てあげているのだが、何故か昨日の今日だというのにその人数は増えていた。
「レイモンドさん……これは?」
「昨日聞いたことを騎士団の連中にも教えたら、ぜひ自分たちにもという声が上がってね」
ちょっとよくわからなかったので、詳しく話を聞いてみると。
昨日あの後で、レイモンドさんはリカルドさんに問い詰められたらしく、仕方なしに自分の見聞きしたことを全て教えたらしい。
その話を聞いたリカルドさんは、初めは信じられなかったそうだが、その話が本当ならといきなり行動を起こしたらしい。急遽騎士団の人たちを集めて簡潔にわかり易く話して、魔法師団と一緒に訓練を受けたい人を募ったということだった。
元々騎士団の人たちも魔法師団が準備するまでの存在っていうのに思うところがあったのだろうが、それでもリカルドさんの話を聞いてまさか魔法の訓練を受けたいと思うなどとは…。
「ま、そういうわけだから。よろしくお願いね、セイジくん」
「はぁ〜。わかりましたよ。とりあえず、魔法師団の人たちは昨日言ったように魔法の訓練でもお願いします。自分は騎士団の人たちの適性属性でも見てきますんで」
「了解。それじゃあ、今セイジくんが言ってたように、魔法師団のみんなは向こうで各自やっていこうか」
レイモンドさんが魔法師団の人たちを連れてこの訓練場の真ん中辺りへと移動したのを見てから、俺は改めて今日参加した騎士団の人たちに向き合うことに。
「それではよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。セイジ様。今回訓練に参加する騎士団を取り纏める役を担ってます。副団長のライネルです」
「あ、これはご丁寧にありがとうございます。早速ですが、まずは魔法に関してお話していきますね。それから先程レイモンドさんに言ってたように皆さんの適性属性を見ていこうと思います」
その後の流れは今までと同じで、魔法に関しての知識を話して、魔力の知覚、魔法の初使用、その中で一番相性のいい適性属性の割り出しをしていった。
騎士団の人たちからは感謝され悪い気はしないのだが、俺は訓練をしなくてもいいのだろうかと疑問に思ってしまう。
「大丈夫ですよ。リカルド団長、それにレイモンド師団長のお二人から、セイジ様は他の三人よりも基礎がしっかりできていてむしろアレなら教えることがないと言われてましたから」
「えっと……リカルドさんとは一度だけしか手合わせしてませんけど」
「あぁ、団長あれでもこの国で一番強い剣士でもありますから。一回手合わせすればなんとなく相手の実力がわかるんですよ。それと、今朝一番に組合からもセイジ様のことが報告されたので、国王様たちからもセイジ様から教えを乞えとの厳命がなされましたので」
「あ、そうですか…」
何故か俺の知らぬ間に、俺はこの国の人たちの教師役にされていたらしい。
まぁ騎士団や魔法師団の人たちに教える分には別にいいかとは思うのだが、話はこれで終わりではなかった。
「それと午後からなのですが、セイジ様には国王様や王妃様、そのお子様である王子様や王女様方の指導をお願いすることになっておりますので」
「えっ……。あの、それは聞いてないのですが…?」
「今朝、王命としてリカルド団長が言われたらしいので、すみませんがよろしくお願いします」
まさかのこの国のトップの人たちへも指導することが決まっていたらしい。
それから騎士団の人たちの適性属性がわかってからは、魔法師団の人たちと合流してお互いに魔法や近接戦での心得などを教え合い助け合いながら時間が過ぎていった。
そして、昼食を摂って午後。俺はこの国の王様たちの目の前にいる。
「聞いているとは思うが、我々にも指導をお願いします」
「え、あの王様がそんな低姿勢で……」
「何を言っておる。我々はセイジ様に教えを乞う側。そこに王だとか平民だとかは関係ない」
ここ数日間この王城で生活するようになって知ったことだが、国王様のこの気さくな感じなように王族の人々は割とフレンドリーで、この王城で働くものやあまり関わりを持たない国民の大半から尊敬されている。
「…わかりました。ですが、一つだけお願いがあります」
「何だ?」
「できれば皆さん、自分のことを様付けで呼ぶのをやめてもらえると助かります」
ここ最近色んな人にお願いしていることを王族の皆さんにもして、そしてこれまた同じような流れで魔法を見ていった。
この数日の間で色々な人を見てきたが、その中で珍しい属性持ちは数人いた。
それが、第三王女のメリッサ様、第五王子のラモン様、第三王妃のララリット様、騎士団長のリカルドさん、騎士団所属のトーマさんとテルスさん、魔法師団所属のタミアさんの7人だ。
珍しい属性持ちだとはわかっても、それがどんなものなのかというのはすぐには判明しないので、これから気長に検証とかしていかなければならないのだが。
それに国王様は、これから誰でも魔法が使えるという事実を国中に知らせていき、俺の教育法を施していこうとしているらしいので、そっちの面でも色々と大変になりそうな予感がしてきていた。
幸い俺はこの王城にいる人たちだけで済みそうだけれど、それでも結構人がいるので苦労しそうだ。
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