第14話 特殊属性
魔法がようやく学べる高校生になり初めての魔法授業を受けていた俺たちは、突然起きた異世界転移によって異世界のあちこちにバラバラに飛ばされた。
そんな中、偶然にも同じ洞窟内に飛ばされていたリサコとレナ、そしてリョウタと合流することができ、元々魔法が使えた俺が、三人に魔法の使い方などを数日かけて教えることになる。
それもある程度落ち着いた頃、二人一組に分かれて再度この洞窟からの脱出を試みたのだが、その時にリサコとレナによって助けられた、俺たちを保護しに来たという冒険者パーティー『赤鉄の絆』のメンバーによって俺たち四人はなぜこの世界に呼ばれたのかを知ることとなる。
それらの情報もある程度わかったところで、さぁいざ外に!というタイミングでなぜか、俺たちは足止めをくらうことになった。
そう、その足止めから今は一週間が過ぎて、未だに俺たちは洞窟内にいる。
「ちょっとセイジ、早くゴブリン討伐に行くわよ」
全ては彼女、ネリファラさんが原因である。
彼女の「私にも魔法を教えなさい」という発言のせいだ。
「今行きますよ。てか、行くならパーティー仲間のラッズさんとかを誘えばいいんじゃないですか?」
「もうラッズはリョウタと二人で出かけたわよ。ついでにアルヴィンとレディアは二人で出かけてるからね。それに、リサコとレナもね」
俺が次に言ってきそうなことは先に全て回答を言うことによって潰されてしまい、もう俺しかいないと言外に言われてしまった。
ここに留まることになった次の日、俺はネリファラさんだけではなく、他の『赤鉄の絆』のメンバーの魔法適性も見てみることになって、今では四人とも出会った時とは比べられないくらいに強くなっている。
そのため、今では二人一組に分かれての行動が普通になっていて、恋人同士であるアルヴィンさんとレディアさん、それに仲良しコンビのリサコとレナは当然組むとしても、まさかのリョウタがラッズさんと仲良くなっていて行動を共にすることになっていた。そのせいで余った俺は、ここに留まる原因となった彼女、ネリファラさんと組むことになったのだった。あの裏切り者が…許さん。
ちなみに四人の適性属性だが、アルヴィンさんは火、レディアさんは風、ラッズさんは土、ネリファラさんは光と綺麗に分かれていた。
「でも、異世界の魔法がこんなにも進んでいるとはね。これなら【深淵の大穴】の大氾濫も何とかなりそうね」
「どうでしょうね。俺たちは、その【深淵の大穴】と呼ばれているダンジョンの中の魔物を知らないので何とも言えませんが」
「そんなん言ったら、私たちだってあの大陸にいる魔物の強さすら知らないわよ。生まれてから一回も行ったことなんてないし」
今出てきた【深淵の大穴】と呼ばれるものが、俺たちが呼び出されることになった元凶のダンジョンである。
過去の文献によるとそこは大陸のど真ん中にぽっかりと開いた穴だそうで、その穴の先は真っ暗で何にも見えないんだそうだ。
そんな穴からどうやって魔物が出てくるのか?そんな疑問が浮かんだのだが、それも過去の文献には記されているようで、その大穴の外縁部にはその穴に降りるための足場が螺旋状にぐるりとあり、そこを上って出てくるんだということだ。
当然降りる場合は、そこを使って降りていくということでもある。
結局そのダンジョンも大陸に棲むという魔物も過去の文献でしか強さはわからないので、どうにかなるかは結局わからないままである。
ただし、一つ付け加えるとしたら、過去の呼んだとされる異世界人だが、その大氾濫でそれなりの活躍はしていたそうなのだが、チート級というほどに強かったわけでもないらしい。
「そんな過去の話なんて今はいいじゃない。それよりも今が大事でしょ」
「ギヴェッ」
訓練した甲斐があるのか、ネリファラさんは余裕でゴブリンを倒していた。
彼女が今使っているのは、適性である光属性の魔法だ。しかも彼女の場合普通に消失させるのではなく、討伐部位確保のために過剰治癒による肉体の崩壊を促す使い方をしている。
ある意味こちらの使い方の方が、すぐに消え失せる本来の攻撃的な使い方よりも恐ろしく感じる。
元々適性ではなく威力があまり出なかった他属性を使っていたストレスもあるのかもしれないけど、それにしても彼女は今生き生きしている気がする。
「魔法の属性に適性なんてあるなんて知らなかったわ。しかもこの私が、神に選ばれしものしか使えないはずの光属性が適性だったなんて」
「神に選ばれしものって…。なんか大袈裟ですね。なんかそれ、どこかの宗教国家とかが言い出しそうな決まり文句ですよね」
「あら、よくわかったわね。光属性が神に選ばれしものって発言をしているのは、今この世界で大きな影響力がある国の一つ、マージェス神聖国よ」
「うわ~。もしかしてですけど、その過去に異世界から人を呼ぶってことを最初に発案したのって…」
「セイジってほんと頭いいわね。セイジが思っている通りマージェス神聖国が発端らしいわ。ただ、どうやってその召喚の儀の行い方を知ったのかは、分かっていないのだけどね」
『絶対それ最初は他国を攻めるためのものだったでしょ』なんて思ったとしても、口には出さない方がいいということだけはわかった。
多分それだけじゃなく、光属性の適性者はきっとその国が保護とかそんな理由で囲ってるに違いない。
「それも間違いではないわね。だから、世の中には光属性が使えるのを隠して生活している人もいるらしいわよ。私も今後は隠していくつもりだし」
「でも正直な話、光も闇もそこまで珍しい属性じゃないと思うんですが?それよりも、地属性とか時属性とかのが滅多にいないので珍しい気がしますよ」
「ちょっと何よそれ!?そんな属性聞いたことないわよ!」
以前俺が特殊な属性と言っていたのは、こういう属性とかのことを指す。
光や闇の適性者が一万人に一人の確率と言われている中で、この特殊な属性の適性者は一億人に一人というとんでもない確率なのである。
実際、元の世界でも一つの国で一人見つかっていれば御の字って感じだったはずだし。
「その地属性って何よ!土属性とは何が違うの?!しかも時って時間操れちゃうの?!」
俺が新たな魔法の知識を与えてしまったばかりに、ネリファラさんは興奮して俺に問いつめてきていた。
「落ち着いてください。今から説明しますので。とは言っても、わかっているのはほんの少しだけですけどね」
「もうそんなのいいから早く!」
魔法使いを名乗っているからなのか、そういった新しい魔法関連の知識についてネリファラさんは待てないようだ。
「地属性ですけど、これは地とついてますが、土とかとは違って主に重力とかに作用します。一番最初に地属性の適性者を見つけた時に、その力で地割れや地震などを起こしたことによって地属性ってついてしまったらしいです」
「なるほどね。ちなみに重力って何?」
「え、そこからですか…」
ぶっちゃけ俺も重力が何かを詳しくなんて説明できない。それも全てリサコが担当だろう。なので、俺のわかる範囲で簡単に重力に関しては説明しておいた。
「それで、時属性ってのは?こっちもなんか最初に発見時の勘違いでとかあるの?」
「時属性は勘違いとかはなくて、こっちは正真正銘の時間などに作用できます。ただし、魔力消費量が激しい上に干渉できるのが物質一つとか二つ、それに干渉時間もそんなに長くないという感じらしいです」
「ふーん。てことは、世界の時を止めたり早めたりなんてことはできないのね」
「そうなりますね。それでも物であれば壊れた瞬間とかならすぐに戻すことはできると思うので、ようは使い方ではないですかね」
「それもそうね。ちなみに他には何かないの?」
「今見つかっているのはそれぐらいらしいですよ。まぁそれも四十年も前の資料になりますんで、今はどうなのかわかりませんけど。それにもうこっちの世界に来てしまったので、もし他にも見つかってたとしても、もう俺にはそれを確かめる手段がないですし」
その俺の言葉にちょっと落胆の表情を見せたが、すぐにネリファラさんは気持ちを切り替えたらしく、ゴブリン狩りを再開し始めた。
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