第9話 外への道筋
適性属性や耐性のことを教えた日は、三人とも俺のことを聞いて少し気まずそうにして過ごしていたようだったが、それも数日の時間が経つにつれ薄れていき今では普通に接してくれるようになった。
そんなある時ふと思ったのか、リョウタがあることを聞いてきた。
「適性属性があるのに、俺たちって使えない属性ってないんだよな。それなら適性って何なんだ?」
リョウタの言いたいことはわかる。それは俺も魔法を学び始めた時に思ったことだから。
だからこそ、その勘違いを指摘しようと俺が口を開きかけた時に、リサコがもう検証していたのかリョウタに教えてくれた。
「その考えは間違いよ。私もリョウタくんと同じことをこの前考えて、セイジくんの言ってた光や闇なんかの属性もできるか試してみたけれど全然できなかったもの。きっと基礎属性の適性の持ち主は、そういうある意味特殊な属性は扱えないんじゃないかしら?」
その説明は今俺が言おうと思っていたことだし、実際に自分たちで試してもらおうと思っていたことを既にやっていると言ったリサコには勝てないなと思った。
「リサコの言っていることは正しい。基礎属性の適性者は、俺の適性の闇属性やその対になる光属性は基本的には使えない。ただし、前に少し言ったと思うが、リサコの適性である火属性であれば、炎の性質を少し弄って消えにくい黒い炎を生み出したりすることができる。それにはイメージと魔力操作が大事になってくるけどな」
適性属性の強みはそういうところだ。
リョウタの水ならば、少し弄るだけで氷属性が使えたりする。これは適性ではない俺にもできないことだ。
それと一つ付け加えるとしたら闇と光は他の基礎属性と比べると少ないというだけで、リサコの言う特殊な分類ではない。他に特殊な属性が存在するが今は言わなくてもいいだろう。
「もしかして、ボクの風の適性って雷属性の魔法を使うこともできたりする?」
レナのこういうところはさすがとしか言えない。本人曰く、ラノベを好んで読んでいたと言うし、そういう発想はできて当たり前かとも思うけど。
「レナの問いの答えは、イエスだ。そして、この四人の適性ではない土属性は、土をさらに細かくした砂属性を使うことができる」
こうやって聞くと、基礎属性の内火属性だけ〇属性って変化をしてなくて、何にもないように思えるが、実際の火力面で火属性の特化したものは、他の基礎属性よりも強力だったりする。
それも全て、爺ちゃんの残してくれてた軍事記録の中の情報だけれど。
このついでに、俺は属性合成魔法のことも一緒に教えることにした。
属性合成魔法は文字通りの魔法で、基本的には適性属性を基軸にして使ったりする。
例えば、リサコであれば適性である火属性に土属性を合わせて使うことによって、マグマに昇格させたりすることも可能だ。
「ちょっと待て。そうなると俺の水って合成魔法的には微妙じゃないか?」
「そうでもないぞ」
基礎属性を考えると組み合わせ的に、リョウタがそう思ってしまうのは仕方がないと思う。俺も最初はそうだったから。
だけど、それも爺ちゃんとの手合わせをした時に、間違いだったんだということを思い知らされた。
「何事も使い方と組み合わせ方次第だよ。さっきリサコに言ったように、リョウタも水の性質を変えてからそれを火で熱したりした時に変化を起こしたりとか。水だけでなく氷も組み合わせてみたりとか。色々考えられることはあると思うぞ」
爺ちゃんと対決した時は、その水の性質変化で俺はやられてしまったが、それこそ化学分野なそれは俺には理解できないことなので、詳しく説明するなんてことはできなかった。
代わりにリサコ先生がいるので、そこら辺聞いて学んでくれ。
「そういう時は私に丸投げなのね」
「すいません」
リサコに呆れられながら言われてしまったので、俺は素直に謝っておいた。
実際俺よりリサコの方がそういうことは詳しそうなので、仕方のないことだ。
色々と情報を与えたから各々にやりたいことができてしまい、俺以外の三人は探索ではなく拠点に籠ることになった。
正直俺としては探索を手伝ってもらいたいのだけれども。
本日向かうのは砂地部屋。そこの天井付近にあった穴が前から気になっていたので、一人ではあるが少し確認してくるつもりだ。
道中は相変わらず数匹のはぐれのコウモリに遭遇したぐらいで、今回はゴブリンには遭遇しなかった。
リサコとレナが襲われた一回以外未だに遭遇しないのだが、あれ以外にはいなかったのか、それともあの通路の先からこちらに来ることは稀だったのか、まだ先には行ってないのでわからないことだ。
砂地部屋の天井の高さは、マンションの五階ぐらいの高さがある。普通ならそんな高さの場所に何も道具もなしに登るのは不可能だ。しかし、俺には魔法がある。
というわけで、魔法で身体強化をして万が一落ちても大丈夫なようにして、闇魔法の影を使って壁に突起を作り出し、そこを足場に登り始めた。
もう完全に見た目がロッククライミングのそれな気がするけど。
本来これをやるのであれば土魔法が最適ではあるのだが、俺の適性属性は闇なので土魔法を使うと強度が足りなくて俺の体重を支えるのに適さない。
とは言え、闇魔法も適性ではあるが強度という面では、俺が使う土魔法より少しマシ程度なものだ。
現に今も俺が登った時に使用した足場は足が離れたと同時に消えていっている。
そんな落ちるかもという恐怖に駆られながらも俺は何とかその穴の付近に辿り着くことができた。
ただ問題はここからだ。
天井にある穴は壁沿いの天井にあるのではなく、少し離れた位置に空いていたりする。もちろん考えなしでここまで来たわけじゃないので、すぐに俺はその考えを実行に移した。
闇魔法と他の魔法の組み合わせは、基本的にその属性のデバフを強化することが多い。それは闇魔法が攻撃的であるが故。
しかし、闇魔法には影というのもあり、今も俺はそれによってここまで辿り着くことができている。
そんな影というものは、どんな存在にもありもう一つの存在とも言える。まさに表裏一体というものかもしれない。そんな影を実際に表裏一体化させた場合どうなるのか。
まず土魔法で天井に手で掴めてぶら下がることができるものを作り出しそれを影で覆う。そうすることにより、先程までは俺の体重を少し支えた後に崩れていたものがすぐには崩れなくなり移動が可能になる。
それでもすぐに崩れなくなるだけで、ずっとぶら下がっていればさすがに崩れ落ちてしまう。
そうしてそれを使って俺はやっと天井にあった穴を通ることができた。その穴の先は思っていた通りで、まだ洞窟内のようである。
それでも俺たちがいる下とは違い、通路が少し狭く下よりも風の流れがあるように思えた。
これはもしかしたらもしかするのかもしれない。
俺は期待をしながらも慎重に前へと進んだ。
無駄に深入りしては戻る時に大変だったので、ある程度進んだ後に戻ってきたのだが、上はそこまで広い部屋が多くはないようで、少し狭い通路が迷路のように入り組んでいる様子だった。
そして、その通路のあちこちに生物がいる反応があって試しに一ヶ所覗いて見たのだが、そこにいたのが俺の予想通りのゴブリンであった。
たぶん、上の階はゴブリンの住処になっていて、この洞窟から出るにはそのゴブリン共を相手にしないといけないんだと思う。
ただ、何匹いるのかはさすがにわからないので、結局他の三人の成長次第では当分外に出るのは諦めるしかないのかもしれない。
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