第22話
ご飯を食べて、順番にお風呂に入った。
「・・・・・・鈴木専務・・・」
お風呂から出てきた鈴木専務が、ピンクでふわふわのウサギの耳フード付きパジャマを着ているのに目を奪われた。
「これはだな。ママ―じゃなくて、母さんが・・・」
あたふたと訳を述べる鈴木専務。
正直、いつもスーツでしか会わない鈴木専務が、こんなパジャマを着ているとは思っていなかった。
「・・・やっぱり、私にはこういうのは似合わないか」
「いえ、鈴木専務。とても、可愛いですよ」
普段、ここまで動揺している鈴木専務を見たことがなかったので、新鮮であった。
だから、俺は更に鈴木専務が慌てるようにいじわるのつもりでそう言った。
もちろん、可愛いと思った気持ちは本当である。
「うぅぅぅ!!」
鈴木専務はフードを深く被って、わめいている。
「鈴木専務」
「?」
「ウサギ耳、似合ってますよ」
「うぁぁぁぁ!!!」
反応、おもしろ。
とりあえず、写真撮っておくか・・・。
帰ってからもこれで弄ってやろうと思って、スマホを向けると。
「おい、写真撮ったら、どうなる分かるよな」
「はい。すいませんでした」
流石に怒られてしまった。
「それと!」
「はい。何でしょうか」
「私と二人の時は、敬語はなしでいいし、今は職務中じゃないんだから、専務を付けなくてもいいから」
「・・・分かりました」
「それじゃ。ふ、二人で寝る?」
「そうですね。明日も早いですし、もう寝ましょう」
「・・・そう。明日に備えて」
「鈴木さん、おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
鈴木専務がどこか、寂しいにおやすみと言っているのに俺は気づいていないフリをした。
ベットの中にて
どこまで、鈍いんだよ。
せっかく、私が二人で寝ようって誘ったのに。
初めは、虚しさ、その次に怒りが湧いてくる。
(「可愛いですよ」)
「うぅぅぅ!!」
さっき言われた言葉を思い出して、ベットの中でジタバタしてしまった。
私は、いつの間にか、好きになっていた。
けど、その好きの伝え方が、分からない。
夢の為にひたすら努力を重ねていた。
だから、恋愛なんて二の次。片思いなどしたことがなかった。
そこでどうすれば、相手を落とせるかをママに尋ねてみた。
「二人で寝たらいいのよ」
衝撃的だった。
それが、親が言うセリフか。
先輩が泊まっている部屋の扉の目の前で。
聴診器を部屋の扉に押し付け部屋での会話を聞いていた。
先輩が「可愛い」と言った時はこの扉を破って乗り込んでやろうと思ったが、その後に、鈴木が殺気を放って怒っていたので、これは大丈夫かと安心して、入るのをやめた。だが、違った。
先輩は気づいていなかったようだが、誘っていたので、鈴木は確実に先輩を狙っている。
早急に対策を練らければ。
今日の所は、明日、仕事がある先輩の邪魔をしないように引くことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます