第4話

 「・・・先輩」


 「いらっしゃいませ・・・って、橋本さんまた来たの?」

 

 橋本さんと久しぶりに会った日から、一週間ほど経過した。この一週間、俺が勤務の時に毎回、橋本さんと顔を合わせている。

 おそらく、橋本さんはこの辺りの職場で働いているのであろう。


 「じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」


 俺が商品を詰めた袋をそう言いながら渡すと、橋本さんは嬉しそうに「ありがとうございます」と言いって店を出て行った。


 「常連さん帰っちゃった」


 「あっ。はい。今、会計終えて店を出て行きました」

 

 「あちゃー。そうなんだ」


 裏から店長が出てきて、頭を抱える。

 

 「どうかしたんですか?」


 「いや、実はさ。常連さん店に落とし物したみたいでさ」


 「えっ。そうなんですか」

 

 「うん」


 「「・・・・・・」」


 ・・・何?この間。

 

 店長から無言の圧を読み取った俺は言う。


 「今店、出てた所なんで、走れば追いつけると思います。僕、行ってきましょか

?」


 「あっ。本当に。それじゃあお願いするね。今日はそれ届けたら、そのまま帰っていいから、急いで帰りの支度して」


 「いや、一度戻ってきま―」


 「戻らなくていいから」


 「・・・はい」


 店長の様子がどうもおかしいが、俺は急いで帰宅の準備をし、橋本さんの落とし物が入った封筒を右手に店を出た。



 俺が出て行った後のコンビニで


 「もしもし。はい。はい。お願いされた通りに。後は頑張って下さい」


 そう言って、電話を切った。

 電話の相手は常連さん。

 私、店長は気づいていた。あの常連さんがアルバイトの中谷さんに片思いしていることに。その証拠ににしか、常連さんは店に来ないのだ。

 

 「お手伝いしましょうか?」


 常連さんに声を掛けた。

 二人の仲を取り持ってあげたいとそう思って。

 だが、この時、私は一つ見落としいた。どうやってこの常連さんは毎回、中谷さんが勤務しているシフトの時間を完璧に把握してあるのかを。

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