第3話
「ありがとうございました」
このコンビニもう潰れてしまうんじゃないか?
そう思うほどに客足が少ない。
勤務開始から、二時間。今店を出ていったお客さん以外入店を見ていない。
「ちょっと、裏にいるから頼むね」
「分かりました」
店長は裏で在庫の発注等の雑務を行うので、一、二時間はこのまま一人で店を回さないといけない。
「・・・あ、あの、すいません」
「はい。いらっしゃいませ」
いつの間に、店に入られたのであろうか。俺はこのお客さんが店に入って来るのに気づいていなかった。
「せ、先輩、お久しぶりです」
「えっと・・・」
まずい、目の前の女のお客さんはどうやら俺の知り合いの様で声を掛けてくれたと言うのに全く誰か分からない。
俺の事を先輩と呼んでるだから、学生時代の後輩か?だが、そこまで親しくした後輩などはいないのだが。
「だ、誰だかわからないですか?あの・・・一年前に会社でお世話になりました、
「あー!橋本さん」
思い出した。俺がまだブラック企業で働いている時に教育担当を任され俺が教育を担当した橋本さんだ。
「覚えてくれていたのですね」
俺が覚えていたのを嬉しがる橋本さん。だが、正直に言おう。分かる訳がない。
教育担当中だった頃の橋本さんは眼鏡をかけて、見るからに地味な姿だったのに。今、目の間にいるのは、テレビに出も出演してそうな美女。
「おーい。中谷さん。そういえば今週の休み・・・すいません。接客中でしたか」
裏から店長が出て、俺が接客中だと気づいて、すぐさまお客である橋本さんに謝罪をした。
「いや、あの。・・・別に大丈夫ですので・・・」
橋本さんは、嬉しそうな様子から一転して、引き気味になり、ササッと商品を出し、会計を済ませて店を出て行ってしまった。
「常連さんに悪いことしちゃったな」
「常連なんですか?」
驚く俺。
今まで、橋本さんが店に来ているなんて気づいてもいなかった。
「あぁ。今日はいつもよりおめかししている様子だったから、今からデートかな」
コンビニから少し離れた場所から
「・・・先輩と話が出来た・・・しかも、私の事を覚えてくれていた・・・」
イヤホンを付けて、さっき録音した先輩の声を聞く。
先輩の声を聞くだけで癒される。
確か、次に先輩がアルバイトに入っているのは明後日。
「・・・また、明後日に会いに行きますから先輩」
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