ラスト・レター

「ーーお悔やみ申し上げますーー」

「ーー来てくれてありがとうございましたーー」

「ーーご愁傷様ですーー」

「ーー本当に残念だったわねーー」

「ーーどう見ても早すぎたーー」

「......」



葬式で知らない人沢山居た。



「来てくれてありがとう刹那ちゃん。大丈夫?」

「はい、おばさん。医者さんがもう大丈夫ですって......」

「そう?良かった......でも本当に凄いよね、今時の手術なんて。」



真生君の両親は良い人そうだった。

一番苦しんでいたはずなのに......私に気を使ってくれてるのを分かる。

いつの間にかパパとママとも話してたで仲が良いみたい。

真生君に見せたい。



周りに知らない人ばっかりだった。

真生君の親戚とかクラスメイトとか先生とか......

誰とも話す気無かった。



「ぼくたちまだこれからだ」



最近よくスマホをずっと見ちゃうんだ。

事故の昨晩、真生君からメールを貰った。

(最後のメール......真生君、何を言いたかったの?)

言葉の意味が分からない。

何がこれからだって、どんな気持ちで書いたって......真生君が何考えてたってー何もかもが分からなかった。

メールを送ったからの翌日に真生君がお見舞いに行く道に......トラックが......

実はその前の日にもお見舞いに来たけどちょっと気まずい空気で帰っちゃった。

だからあの日に来なかったのが変と思わなかった。

病室のそとがちょっと忙しくなったしか気づかなくて......まぁたまにあるねと思っただけ。

知ってば顔合わさせたかな?

その後真生君の両親と初めて会った。

あれから私の中の時が止まった気がする。

何も感じない。

だからあんなに悩んでたのにいきなり手術受けさせたかったかな?もう自分の死を恐れていなかったから?

若しくは......あの人に会えたくて......

どっちにして成功した。

パパとママが凄い喜んでて嬉しいーな筈なのに......

(私は......)



もう完全に治ったのになんか寝てない時にただ寝転んでてぼーっとしてる毎日を過ごしている。

まだ入院してた時、夜でいつも自分の死の事考えちゃって疲れるまで泣き続けた。

でも土日に真生君が来た。

その時間だけが助けだった。

来る前にワクワクして、一緒に居た時に心が癒やされた。

真生君が帰った後でもあの寒い病室に少しだけ彼の温もりが残ってた。

真生君がいつも心配だった事を気づいたけど私にとってかけがいのない日々だった。

でも確かに私だって彼に心配した。

居なくなった後、どうなるの?

私と似てるからまた一人になるんじゃないかなんて心配してたさ。

自分が死ぬ事に心の準備をしてた私。

そして生き続ける心の準備をしてた彼。

何もかもが間違っていた。



誰かが私の部屋にノックした。



「刹那ちゃん、ちょっと良い?」

「あ、はい。」



ママだった。



「これ、真生君のご両親から渡されてー刹那ちゃんに預かるって。」

「あ......うん。」



ダンボール渡された。



「......ありがとう。」



ママがちょっと読み難い表情で出た。

床に座って箱を開けた。

(これはー)

中身を抜き出した。

(真生君の......ノート。)

何冊もあった。

見覚えがある物だ。

塾で使ってた、そして私の病室で復習したノートだった。

少し読んでみた。

ノートの中身が書いた時に私が居たとたまに思い出した。

でも全部じゃない。

(彼も一人で勉強したね......)

真生君の知らないとこを想像して私がちょっとニヤてた。

そこで気づいた。

たまに注釈が書かれた。

真生君の独り言みたい。

(いや、これはー)

一緒に勉強してた時によく会話した。

真生君が私が隣に勉強していたみたいに私達の会話を想像してノートのページに書いた。



「あ、あれ?なんでー」



紙が濡れて来た。



「何......これ......」



泣き始めた。

彼が居なくなった以来、泣けた。

多分......彼がそこに居たと気がしたから。

(そうっか......真生君もこんな感じだったかな......いや、待って。)

スマホを開いてもうこれで百回目ぐらい真生君からの最後のメールを見返した。



「ぼくたちまだこれからだ」



その瞬間でやっと分かった。

真生君が伝えたかった事。

確かあの砂浜で私より長生きだと限らないと言ったわね。

私が死にたくないと同じぐらいの気持ちで真生君は私を失いたくなかった訳。

いや、それ以上かも。

(きっと真生君が自分の中の勇気を見つかったからあのメールを送れたんだ。)

ノートを胸に強くぎゅっとした。

(ありがとう......ありがとう......ありがとう......)

今まで抑えようとした涙をもう気にせず目が痛くなるまで思いっ切り全部流した。



(......そう言えば、受験受けなかったから私浪人になったね。)

つまらない現実で含み笑いした。

色んな意味であのノートに救われた。

(これからもよろしくね。)



ちょっと出掛けるを言っただけでパパとママが凄く喜んでた。

(本当に心配かけ過ぎたよね.....)

長い時間で病院そして部屋に閉じ込めたからかもだから外の刺激に驚いた。

(太陽ってこんなに眩しかったの?)

馴染みのあるところまで電車に乗った。

でも今回の行く先は病院じゃない。

塾でも無い、いずれまた行かなきゃ行けないけどね。

ゲームセンターとクレープ屋さんは良いけど、帰り道で行けば良い。

ここよ。

またこの場所に戻らなきゃだった。

靴を脱いで海の浅いところだけでちょっと足を浸した。

砂が思ったより熱かった。

珍しく人が居た。

(そっか......冬はもう終わったねもんね。)

知らない内に春がやってきた。

(春になったらまた来ようと約束との約束が......)

胸が締め付けた。

でも良いんだ。

私は一人じゃない......だってまだこれからでしょ、真生君?

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春になったらまたあの砂浜に 明智こたろう @akechikotaro

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